反イスラエル、親パレスチナのデモが広がる米国
12月16日、ニューヨーク・マンハッタンで行われる、パレスチナ支持のデモ(REUTERS/AFLO)
米国では国連でのイスラエルへの早期停戦勧告決議案に米国が拒否権を発動して以来、大掛かりな反イスラエル、親パレスチナのデモが広がっている。彼らが掲げるプラカードには「Genocide Joe, Netan-Nazi」(ジョーは虐殺者、ネタニヤフはナチス)などの文字が踊っている。 ナチスによる虐殺を経験したユダヤ人の子孫であるネタニヤフ首相がナチスのような虐殺を繰り広げ、米のジョー・バイデン大統領がそれに加担している、という何とも皮肉な批判だが、問題はこうしたデモの中心にいるのがユダヤ系米国人である、という点だ。
イスラエル建国を支えたユダヤ系米国人
伝統的にユダヤ系米国人はイスラエルを建国時代から支え続けてきた。それは資金援助のみならず、ロビー活動などを通して米政府に親イスラエル的な政策を取らせる、反イスラエルのアラブ人団体への弾圧を強化するなど、さまざまな方法が取られてきた。ユダヤ系米国人は、欧州のユダヤ系のような差別を歴史的に受けていないが、それだけにホロコーストに対し手を差し伸べられなかった、という気持ちも強い。
ユダヤ系米国人家庭では、十代後半以降に子どもをイスラエルに送り、キブツ(イスラエルの集団農場)などで働かせ、イスラエルへの理解を深める、ということも習慣として行われてきた。つまり彼らにとって国籍は米国だが、気持ち、アイデンティティの面ではユダヤ人であり、イスラエルを精神的母国、と考える側面があったのだ。 例えば、大統領選挙に出馬して若者から絶大な支持を得たバーニー・サンダース上院議員も若い頃にイスラエルに渡りキブツで働いた経験を繰り返し語っていた。サンダース氏はユダヤ系米国人のひとつの典型であり、高学歴でリベラル、キブツのような社会民主主義を信奉する、という特徴がある。
しかし時代は変わり、今では子どもをキブツに送って集団生活をさせる家庭も減少してきた。多くのユダヤ系米国人は自らをユダヤ人である前に米国人、と考えるようになりつつある。そして民主主義を信奉する彼らにとって、イスラエルの行動は容認し難いものであり、イスラエルを支えるバイデン政権は今ガザ地区で行われている虐殺に手を貸しているもの、と受け取られるのだ。