フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

9月19日(水) 曇り

2007-09-20 03:32:16 | Weblog
  穏やかな曇り日。それほど暑くもない。散歩日和である。銀行で4ヶ月ぶりに記帳をする(私のポケットマネー用の口座)。そろそろやっておかないと、一括処理をされて、個々の出入りがわからなくなってしまう。あれこれ出入りはあったものの、残額にほとんど変動はない。これが人生というものだ(という感想はちょっと大袈裟であろう)。一件、振り込まれていてしかるべきものが振り込まれていないことに気づく。明日、文部科学省に問い合わせの電話をかけなくては(!)。お役所相手だとつい意気込んでしまう。
  東急プラザ4Fの喫茶店シビタスでホットケーキと珈琲。以前にも書いたが、ホットケーキは幸福のイメージと結びついている。だからたまに食べたくなる。実際に口にしてみると、そんなに感激するほどの味ではない。むしろ素朴な味である。それはわかっている。わかってはいるが、食べたくなるのである。

           

  大井町に行ってみる。昨日のフィールドノートに書いた万年筆専門店に行ってみようかと思う。しかし、地図はないし、店名もうら覚えである。昨夜、インターネットでその店のホームページを見たときの記憶だけが便りである。駅前の品川区民会館の裏手を少しばかり行ったあたりという実に漠然として記憶である。日本一のペン職人なのだから、きっとその辺りで聞けばわかるだろう。
  大学3年のとき、簡略な鉄道路線図一枚と「6ヶ国語日常会話手帳」だけを頼りにローマから列車を乗り継いで、ドイツのチュービンゲン大学を訪ねたことがある。車掌の話す言葉がイタリア語、フランス語、ドイツ語の順序で変っていった。「切符を拝見」と言われて(たぶんそう言われているのだろうと直感的に理解し)、首をすくめながら(このジェスチャーはどこでも通じた)、「乗り越しです。チュービンゲンまで行きたいのですが、どこで乗り換えたらいいでしょう?」とイタリア語、フランス語、ドイツ語で尋ね、ああだこうだと言われながら(ほとんどわからない)、おまけに途中で気づいたのだが、唯一頼りにしていた鉄道路線図は、実は鉄道路線図ではなくて道路地図だったりして(!)、その日のうちにたどり着けると思っていたのはまったくの誤算で、チューリッヒで一泊しなければならなくなり、もちろん予約なんてしていないから、宿を探すのがまた一苦労で、それでも何とか翌日にはチュービンゲン大学に無事たどり着けた。
  こういう経験をしたせいで、あるいはたんに生来の楽観的な性格なのか、日本語が通じる場所ならば不案内でもなんとかなる、という思い込みが私にはある。でも、しばしば、なんとかならないのである。おかげで私の人生は挫折の連続だった・・・ということはなくて、思わぬ展開というのを楽しむ術みたいなものを私は自然と身に付けた。たとえば、注文したのと違うメニューが出てきても、違うじゃないかと立腹しないで、これでいいやと食べてしまう。それが結構美味しかった、みたいな。女の子をデートに誘おうと電話をかけたら、間違って同じクラスの他の女の子の家にかかってしまい、行きがかり上、映画に誘ったら、OKといわれ、それが交際の始まりでやがて結婚に至った(作り話です)、みたいな。古人いわく、人間万事塞翁が馬。
  今日もそうだった。地元の人と思しき方や新聞配達の青年に「この辺りに小さな万年筆専門店はありませんか」と尋ねたのだが、みなさん知らないと言う。結局、わからなかった(自宅に戻ってからインターネットで確認したら、見当違いの場所を歩いていたことが判明)。でも、初めて歩く商店街や住宅街は面白かった。友人・知人がいるわけではない普通の町の商店街や住宅街など、こんなことでもなければ一生歩かなかったであろう。探索の途中、コンビニでガリガリ君を買い求めて、頬張る。映画『砂の器』で丹波哲郎が演じた刑事のような気分がした。

           

           

           

  夕方になり、小腹が減ったので、「丸八」というとんかつ屋に入る。今夜は大田区男女平等推進区民会議の集まりがあるので、少し早めだが夕食を済ませておこうというわけだ。950円の並かつ定食を注文。カウンターだけの店だが、大きなカウンターで15人は収容可能と思われる。カウンターの中には4人ほどの人がいて、調理場という雰囲気をかもし出している。並カツは薄くて柔らかい。衣はきつね色でしっかりと揚げられている。とんかつソースと芥子でいただく(カウンターの上にはとんかつソースしかなく、醤油は言えば出てきそうだったが、店の方針に従うことにした)。「鈴文」とは違う路線だが、これはこれでいける。メニューにカツサンド(1000円)というのがあったが、うん、確かに、これはカツサンドにしたら美味しいだろうなと思った。