7時半、起床。今日から9月だ。大学はまだ夏休みなのだが(秋学期の授業は9月25日から)、8月と9月では気分的に違う。「秋学期へ向けて始動せよ」という声が、空の上から(地の底からかもしれない)聞こえて来る。夕べの残りの鰹の刺身、若布の味噌汁、ご飯、冷麦茶の朝食。
森絵都『カラフル』の感想を書いておく。読み応えのある作品だった。ジャンルとしては児童文学に入るのかもしれないが、たとえばアニメ『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!大人帝国の逆襲』が大人の鑑賞に耐える作品であるのと同じように、『カラフル』も大人が読んで味わいのある作品である。森絵都の直木賞受賞作『風に舞い上がるビニールシート』(2006年)よりも、私には『カラフル』の方が面白く読めた。なぜだろうと考えて、思ったのは、森絵都の小説のピュアで人生に肯定的な登場人物たちは、児童文学という枠組みの中だからこそ、読者が抵抗なく受け入れることができるからではないかということだ。それはちょうど藤沢周平の時代小説のピュアで一途な主人公を読者が抵抗なく受けれるのと同じである。現代の大人の社会を描いてそうした人物を設定すれば、リアリティがなくなって、間違いなく浮いてしまう。しかし、時代をずらすことによって(時代小説)、あるいは主人公の年齢をずらすことによって(児童文学)、読者はピュアな主人公を受け入れることができるのである。非日常的な状況においては非現実的なキャラクターもそれほど非現実的には見えないのである。
午前中は原稿書き。昼食はハンバーグ、ハム、レタス、トースト(2枚)、アイスティー。録画しておいたNHKの「追跡AtoZ “はやぶさ”快挙はなぜ実現したか」を観る。「艱難辛苦を乗り越えて」という表現がまさにピッタリのはやぶさの地球への帰還。大気圏に突入して燃え尽きる前にはやぶさが最後の力を振り絞って撮った地球の写真。これには泣けた。ピュアで一途な主人公がここにもいた。
夕方からジムへ。筋トレ2セットと有酸素運動35分。今日は調子がよくて、すべてのタスクをきっちりこなせた。好調の理由は定かではない。もしかしたら“カラフル”効果や“はやぶさ”効果なのかもしれない。「緑のコーヒー豆」で一服。マダムから「お帰りなさい」と挨拶される。いつも6時半前後に来る客なので、勤め先からの帰宅の途中に立ち寄っていると思われているようである。それにしてはラフな格好だと思うけれども。備え付けの日経新聞夕刊を読む。森絵都のキューバ紀行、来日中のサンデル教授へのインタビューなど興味をそそられる記事が多い。
帰宅して、ゼミ合宿の課題図書の一冊、鷲田清一『「待つ」ということ』(角川選書)に目を通す。読みやすい本である。ただし、体系的な記述ではないので、臨床哲学的な断章から触発された思考を読者が自分で育てていくことが大切になる。