7時半、起床。ウィンナーとキャベツの炒め、トースト、冷麦茶の朝食。
昼から大学へ。やっぱり早稲田は蒲田よりも暑い。今日は2つ会合の予定が入っている。1時から最初の会合。1時間ほどで終り、「maruharu」へ昼食を食べに行く。6人の先客(全員女性)がいて、席は1つも空いていないので(こんなの初めて)、本日のサンドウィッチとアイスカフェオレを持ち帰りで注文したが、待っている間に、席が一つ空いたので、やはり店内で食べることにした。ハムとチーズと野菜のサンドウィッチなのだが、とても美味しい。店を出るとき、「とても美味しかったです」と言うのを忘れてしまったほど美味しかった。
次の会合まで少し時間があったので、生協戸山店でガリガリ君の姉妹品である「ガツンとミカン」を買って、ベンチで頬張る。冷凍状態がよく、ちゃんとガリガリ感がある。コンビニのガリガリ君は、ガリガリ君というよりも、シャリシャリ君のことが多く、ひどいときは少し溶けかかってジャリジャリ君だったりする。私の授業をとっている学生が目の前を通って挨拶をされる。アカデミックな雰囲気は微塵もない。
表面についた霜がいい
3時から『社会学年誌』の編集委員会。8月末締め切りの投稿論文は4本(6月末のエントリーは7件だった)。投稿規定、執筆要項に違反していないかをチェックした後、4本とも受理とし、査読者(候補)を1本につき2名(予備を含めて3、4名)割り当てていく。これがいつも一苦労の作業である。それほど会員が多いわけではないので、ちょっと論文のテーマが特殊だと査読者の選定は難航する。5時までかかる。
帰りにあゆみ書房で以下の本を購入。電車の中で読む。
数土直紀『日本人の階層意識』(講談社)
加藤典洋『さようなら、ゴジラたち』(岩波書店)
丸谷才一『あいさつは一仕事』(朝日新聞出版)
『あいさつは一仕事』は丸谷のスピーチ実例集。慶事から弔事まで。「大勢の聴衆を前にして挨拶するのはむずかしいことですが、一番の難物は婚礼のお祝いの言葉ですね。」とのこと。私も卒業生(たいてい女性)の結婚披露宴のときのスピーチをときどき頼まれるが、挨拶の名手丸谷才一をして「一番の難物」とは意外だった。丸谷はそれをうまくやるコツについてこんなふうに述べている。
「第一に、原稿を書くことです。まあこれは挨拶一般について言へる心得なんですけれど。何も用意しないで話をしてうまくゆくなんてのは、吉田茂とか古今亭志ん生まとか、さういふ偉い人のすることで、われわれ普通の人間は真似をしてはいけない。いや、吉田ワンマンだつて志ん生だつて多少は準備してると思ひますよ。ましてわれわれごときが手ぶらで行つて、思案しながらしやべつてはいけません。その下準備に当つては新郎新婦の写真(なるべくなら二人いつしよの普段着のもの)を手に入れて、よし、この若い二人のためにがんばろうと自分を励まして下さい。この気持ちが大事ですよ。義理で、気のないことをしゃべつてはいけません。二人のしあわせさうな写真を見てゐると、言ひたいことが何か心に浮かんで来ます。それを、話の順序を工夫して、短くまとめればいいのです。長いのはいけませんよ。原稿なしで考へ考へ話をすると、だらだらと長くなつて、みんなをげんなりさせますよ。」
あらかじめ原稿を用意するというのは基本中の基本で、私も必ず下準備はする。ただし、本番では原稿は見ない。もちろん暗唱しているような野暮な話し方もしない。いかにも即興で話しているように―吉田茂とか古今亭志ん生みたいに―話す。しかし、新郎新婦の写真を見ながらというのはやったことがない。たいてい新郎は当日初めてお目にかかることになる。もし二人の写真を見ながら書いたら、冷静な気分ではいられないのではないだろうか。それはたぶん丸谷の場合、親戚の娘さんとか、知人の息子さんとか、日頃、それほど親しい関係にはない人の婚礼のスピーチだから、写真によって関係性のリアリティを補おうとしているのに対して、私の場合は、新婦は教え子であるわけで、教え「子」というくらいだから、私は花嫁の「父」のポジションに近いわけである。だから新郎と新婦が普段着で仲よく一緒に写っている写真を見たら、新郎に対して「コノヤロー」という感情がわきあがってくるのではないかと思われる。スピーチの依頼で新婦(まだ新婦になっていないが)が私の研究室に訪ねてくるときに、「彼も一緒に連れて行きます」と言われることがあるのだが、「それには及ばないから」と冷たく断っている。