8時、起床。
トースト、サラダ、紅茶、麦茶の朝食。
お昼に家を出て、大学へ。午後に学会の編集委員会があるのだ。
久しぶりの研究室。卓上カレンダーをめるく。「パン日和あをや」に行けというお告げだろうか。
会議は始まる前に腹ごしらえ。コンビニおにぎり3個。本当は「神戸屋キッチン」で黒毛和牛のコロッケサンドを買ったのだが、地下鉄の中に忘れてしまったのである。食べ物なので諦めることにした。「青森べりブリッジの奇跡」では財布と手帳を失くしかけて事なきを得たが、東京に帰ってきた途端にこれである。やれやれ。後で妻にこのことを話したら、「何でかんでも紐を付けて鞄にくくりつけておいたら」と言われた。しかし、鞄そのものをどこかに置き忘れることだってないとはいえないからな。
1時半から編集委員会。
その後は夕方まで研究室で雑用。
6時半ごろ研究室を出る。
神楽坂で途中下車。
8時過ぎに「トンボロ」で人と会う約束があるのだが、その前にお隣の「SKIPA」に顔を出す。
定食を注文。
今日の主菜は鶏肉と大根のあっさりスープ煮。
食後にアイスチャイ。
「SKIPA」は8時閉店なので、内扉から、「トンボロ」に移動する。 週の前半は波鈴(ハレイ)さんが一人でやっている。
リンゴジュースを注文。
常連さんの愛犬ヴェルデ。飼い主さんはいま食事に出ている。
蝶が羽を広げたような形の耳をしていることから「パピヨン」と呼ばれる品種である。どこかのブリーダーが元の飼い主だったが、子犬をたくさん産まされ、体がぼろぼろになり(カルシウム不足から歯が全部抜けた)、捨てられた。引き取り手がいなければ殺処分になるところをいまの飼い主に引き取られたのである。
人懐っこい犬で、抱っこしてやると喜ぶ。私がヴェルデを抱っこしているところをのんちゃんが見て、「お似合いですよ」と言った。なんだ、「お似合」って?
8時を少し回った頃、仕事終わりの卒業生のAさんが店に入ってきた。
Aさんはメニューを見て、タラコのクリープスープスパゲッティ、チーズ盛り合わせ、ポテトサラダ、そしてビールを注文した。私もスパゲッティを注文した。「SKIPA」の定食は夕食としては軽いので、スパゲッティなら十分入る。
食後のコーヒーを飲みながら、ビールを飲みながら話すAさんの話に耳を傾ける。
私の知っている卒業生の中で、Aさんはもっとも自己開示の程度の大きな人である。ぶっちゃけ感いっぱのトークである。職場の不満、家庭の不満、身体の不調、その他のあれこれ、よくこんなストレスフルな毎日を送っていてメンタルをやられない(鬱にならない)ものだと思うが、こうしたぶっちゃけトークを人にすることで精神のバランスを保っているのであろう。陽性のぼやきなのである。そしてそういう自分を冷静に見ているもうひとりの彼女がいる。クールな批評家が自分自身について語っているようなところがある。
そんなAさんにも二つの希望というか心の支えがある。お子さんの成長と創作だ。前者は子どものいる女性に一般的にいえることだが、後者は一部の人だけのものだ。私はAさんに創作は続けるべきであること、私の見るところ、その才能はなかなかのものであることを述べた。いずれ報われる時がくるだろう。創作にあてる時間を全部お子さんとの時間にあてることはかえって精神のバランスの上からはよくないだろうとも言った。
将来、あなたが何かの賞を受賞したときには、スピーチの中で、「私を支えた一言」として今夜の私の言葉を紹介してくれていいよと言ったら、Aさんは、紹介どころか恩人としてご挨拶をお願いしますと言った。わかった。スピーチを考えておきましょう。
10時ちょっと前、これから帰れば子供が寝る前に帰宅できますと言って、Aさんは席を立った。私も一緒に席を立った。
11時前に帰宅。