時半、起床。
パン、クリームシチュー、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。
パンは昨日リーガロイヤルホテル内のショップで購入したものの1つで、クリーム入りのメロンパンである。クリームパンとメロンパンを掛け合わせたものだが、美味しいもの同士かけあわせても残念ながらもっと美味しくはならない。むしろ双方の美点を打ち消し合うこともある。それが今朝の食卓の教訓だ。クリームパンは中のクリームが甘いからパン自体は甘くなくていい。一方、メロンパンは表面が甘いから内部は甘くなくていい。しかるにクリーム入りメロンパンは表面も内部も甘い。逃げ場がない(カレーパンがセットであればいいかもしれない)。
今日、研究指導の予定にしていたOさんから体調不良のため来週に延期していただけますかというメールが届く。了解。どうぞお大事に。というわけで、今日は大学に行く用事がなくなった。
卒業生のメグミさんから年末にいただいた結婚式の案内状。出席の通知の葉書をまだ出していなかったので、近所のポストに投函する。さすがにもう「年賀状」の投函口はなくなって、平常運転に戻っている。
昼食は「天味」に食べに行く。馴染みの飲食店には1月中にひとわたり顔を出しておかなくてはならない。
上天丼を注文。妻と来るときは、夜が多いので、コースで注文するが、昼間に一人で来るときは天丼を注文することが多い。
コースのときも〆に小天丼(かきあげ丼)は食べるが、まるごとしっかり天丼を食べたいときはやはりこれである。並の天丼と上天丼の違いはイカが穴子になるかどうかである。
店によっては天丼に専用の丼ダレではなく、天つゆをかけるところもあるが、それだと天ぷら定食の天ぷらが最初から丼ぶりにのって出てきたのと変わらない。やはり天丼には丼ダレである。ここの丼ダレは色が濃いめで、それをかけた天ぷらは黒っぽく見える(なお、ご飯は軽めでお願いした)。
昨日購入した東海林さだお『ひとりメシの極意』の東海林と太田和彦の対談の中で、「丼ぶりものの最高峰は天丼である」という話が出ていた。値段でいうとう鰻丼の方が上だが、近年、鰻は高くなりすぎて、庶民が「ちょっと奮発して」食べられるレベルを超えてしまった。カツ丼は王者という呼称の方がふさわしい。鰻丼もカツ丼は丼のどこを食べても均一的な味だが、天丼はいろいろなネタが入っていて楽しめるという点も最高峰と呼ぶにふさわしいと言っていた。なるほどね。ちなみに「天味」の上天丼は1300円、さらにかきあげを加えると1600円になる。
食後の珈琲は大井町の「pottery」に飲みに行く。
店内はほぼ満席で、普段は座らないカウンター席に座ることになった。目の前のマダムと新年の挨拶をかわしながら、ブレンドコーヒーを注文。 マダムはゴルフが趣味で、新年も元旦から18ホールを回ったそうだ。お元気なことで何よりです。
私の隣の常連客と思しき男性は、今春から就職する大学生のようだったが、フォーマルスースはどの程度のものを買うべきかマダムに相談していた。マダム曰く、「フォーマルスーツはめったに着ないものだからそんなに高いものでなくていい。高いものを買って、太って着られなくなったらもったいない。それよりもふだん着るスーツにお金をかけた方がいい」というアドバイスをしていた。なるほどね、一理ある考え方である。でも、私の考えはちょっと違う。フォーマルスーツは吊るしではなく、少なくともイージーオーダーで作るべきである。たまにしか着ないとしても、その「たまに」は儀礼的なイベントである場合が多い。そういう場所に「こんな安物を着て出かけるのか」という負い目が生じるのはよろしくない。体型の変化についていえば、オーダーで作ったスーツが着られなくなるような体型にならないように努めればよいのである。いいスーツはそういう努力のモチベーションを高める働きをするだろう。
「pottery」を出たのは3時を回っていた。すぐに家には戻らず、そのまま恵比寿の東京都写真美術館に行く。
久しぶりの恵比寿ガーデンプレイス。
写真美術館に行く前に恵比寿タワービルに昇ってみる。エレベーターの38階のボタンを押す。39階でないのは、38階の方が窓が広いからである。
エレベーターを降りると、強い西日が差しこんでいた。
カメラで直視することのできない強い光である。
南西方向に広がった街並みがキラキラと光っている。
足元に目をやるとガトーショコラに大玉のチェリーを嵌め込んだようなビルが見える。
遠くに目をやると、おそらく武蔵小杉あたりのビル群だろう、靄の中に浮かんでいる。 まるでこれから観に行こうとしているマイケル・ケンナの作品みたいである。
やがて日没の時刻が近づいてきた。あれほど強かった太陽の光もカメラで太陽の輪郭を認識できるほどに弱まってきた。
山の端に太陽が隠れはじめた。
1月8日の東京の日没である。これを俳句にすれば・・・
松過ぎの東京の陽の落ちにけり たかじ
季語は「松過ぎ」。松の内の明けることをいう。
さて、美術館に行こう。
「マイケル・ケンナ写真展 A 45 YEAR ODYSSEY 1973-2018」
彼の45年間の仕事の中から100点の作品を展示する回顧展である。
彼は私より1つ年上の1953年生まれ。彼が写真家としての仕事を始めた1973年は、私が早稲田大学第一文学部に入学した年である。
奥の小さな2つの部屋は写真撮影NGだが、大展示室の撮影はOK。
彼が目指したのは「余分なものを削ぎ落したミニマルな作品」である。
これはケンナの作品ではない。展示場の入口の外に置かれたイスとベンチを私が撮ったものである。ベンチ好きの友人の坂井素思先生(放送大)のためのサービスショットである。彼のベンチシリーズは→こちら
地下の展示場を出て、ショップのある2階へ。
美術館を出る。
さきほど日没を観た同じ場所へ行く。 薄い月が浮かんでいる。
さあ、家に帰ろう。
恵比寿ガーデンプレイスと恵比寿駅は動く歩道でつながっている。9割くらいの人が 動く歩道を利用している。そのまた半分くらいの人は動く歩道の上でさらに歩いている。
動く歩道の中継(乗り継ぎ)地点にベンチが置かれている。
でも、ここに誰かが座っているところ見たことがない。ベンチは前を行き過ぎる人たちを無言で見つめている。
7時、帰宅。
夕食は秋刀魚の開き、茄子とベーコンの煮びたし、サラダ、数の子たっぷりの松前漬、味噌汁、ご飯。
野良猫のナツは家の中(とくに私の書斎)にいる時間が長くなった。ときどき思い出したように外に出ていく。もちろん一人では玄関のドアを開けることはできないから、「ミャー(出ますよ)」と言って、私を連れて階段を下りていく。
トントントンとリズミカルに階段を下りていく。
妻が講習会の生徒さんからいただいた正月限定パッケージ入りの鳩サブレ。私も先日鎌倉へ行ったお土産に購入しようと思ったが、長蛇の列で断念したものである。
やっぱり鎌倉のお土産ナンバーワンはこれである。美味しくて、二枚立て続けに食べた。
2時、就寝。