8時、起床。
サラダ、牛乳、紅茶の朝食。今朝も体重コントロールの必要からトーストは抜く。
10時に家を出て、大学へ。
最近は、電車の中ではいつも清水幾太郎の3冊目の自伝『わが人生の断片』(1975年)を読んでいる。単行本(文藝春秋)、文庫版(文春文庫)、そして全集版(講談社)で所有しているが、持ち運びに便利なので文庫版で読んでいる。すでに何度も読んでいる本であるが、何度読んでも面白く、その都度思考を刺激される。時間は有限であり貴重であるから、同じ本を繰り返し読むというのは限られた本についてしかできないが、この本はその限られた本の一冊である。これを通読・精読することがこの春休みの課題の一つである。
本は消耗品と心得ているから(もちろん自分で所有する本の場合)、気になった箇所に線を引き、気になった単語を〇で囲み、思いついたことを余白にメモする。
「所詮、歴史というものは、それが既に過去となった現在の地点から観察し評価するほかはない。それだけに、観察や評価に当たっては、その歴史のうちに生きた当時の人間の身になって考えねばならない。現在の立場から見れば、もう古い過去になっているような期間でも、当時の彼らにとっては、未来は闇だったのである。未来の闇に面していた人間のことは、その同じ時期を判り切った過去のように見下ろす人間には理解できないであろう。これは過去に生きた人間に対する同情というような問題ではない。この注意を怠ると、どんな沢山の資料を揃えても、過去を知ることが出来ず、歴史に学ぶことが出来ず、そもそも、現在の自分の位置を悟ることができないという戒めである。昔も今も、未来は闇である。」(文庫版上巻、38頁)。
ここに繰り返し出てくる「未来は(の)闇」は後期の清水が好んで使った言葉である。
11時に句会仲間のあゆみさんと早稲田駅で待ち合わせ(ロックアウト期間は学外者はキャンパスに入れない)、「カフェゴト―」へ行く。彼女は教え子ではないが、教え子の恵美子さんとは高校以来の親友で、彼女の紹介で句会に参加するようになったのであるが、研究者であるご主人が地方の大学に職を得て、来月中旬に引っ越すことになった。先のことはわからないが(未来は闇であるから)、今度の日曜日の句会が彼女がリアルに参加できる最後の句会になるかもしれない。その前に、今日は個人的に送別カフェをすることにしたのである。
ランチの前であるから、飲み物(アイスアップルティー)だけのつもりであったが・・・
並んでいるケーキを見ていたら、タルトタタンがあったので、注文しないわけにはいかなくなった。一日に2回焼くのだが、夜まで残っていることはまずない。
タルトタタンはいまや雑誌でも紹介される「カフェゴト―」の看板商品の1つである。マスター曰く「今日はこれからタルトタタンの協会の集まりがここであるのです」。「タルトタタンの協会? ほんとですか?」半信半疑でスマホで調べたら、確かに本家フランスにはそのようなものがあるらしい。フランスにあるのであれば、その支部のようなものが日本にあっても不思議ではないだろう。
食事のことを考えて、1つをハーフにしてもらってあゆみさんと分けようとも考えたが、ブログにその写真を載せて、この店のタルトタタンは小さいなと誤解されると申し訳ない(というのを口実に)一人一個注文した。
日曜日の句会の投句の締切は昨日であったが、彼女は勘違いをしていて、今日だと思っていた。すぐに紀本さんにメールをした方がいいですよとアドバイスする。彼女がメールを送ったところ、すぐに紀本さんから返事が来て、「恵美子さんが明日まで待ってほしいと言っているので、あゆみさんも明日まででいいですよ」 とのことだった。みんな、ちゃんと締め切りは守りましょうね(ちなみに私は昨日のうちに送っている)。
カフェゴト―りんごの国に来たみたい あゆみ
これは彼女が即興で作った句。子どもか。
「大久保先生でいらっしゃいますか?」と誰かが私の名前を呼んだ。見ると、学生のようである。「はい、そうですが、あなたは?」と尋ねると、「卒業生で先生の講義を受けていたものです」とのこと。お名前は〇〇エリナさん。文化構想学部を2014年に卒業された方で(論系は社会構築で浦野先生のゼミ生だった)で、私の大教室での講義(「日常生活の社会学」と「 ライフストーリーの社会学」)を受講していたそうである。一緒にいる男性はご主人で(一昨年の5月に結婚)、ヨシヒコさんとおっしゃる。彼も早稲田の卒業生(学部は教育)で、弦楽器のサークルで一緒だったそうである。楽器は彼女がチェロ、彼がヴァイオリ。いいですね、大学時代に知り合って、そのまま結婚するというのは、一つの理想的なコースではなかろうか。
今日は久しぶりに母校を2人で訪れ(キャンパスに入れないのは残念だが)、 カフェめぐりをするつもりで、この後は「D-Style Tokyo」に行くそうだ。あゆみさんにわれわれの写真を撮ってもらう。「私がブログをやっているのは知っている?」「はい、実はさっきも見ていました」「あっ、そうなの。じゃあ、この写真をブログに載せてもいいかしら」「はい、喜んで」。
笑顔の素敵な2人だった。どうぞこれからも2人で仲良く人生の日々を奏でていってくださいね(結婚披露宴の祝辞みたいだな)。
さて、われわれはランチを食べにいきましょう。予約はしていないが、ダメもとで「モンテ」をのぞいてみる。
運よくカウンター席が空いていた。カウンターといっても席は2つしかないので、独立のテーブル席のようなものである。
カウンターで横並びというのは、テーブルで対面よりも、距離が近い感じで悪くない。
前菜はラタトゥーユと鶏のレバーペーストを注文して、シャアして食べる。
レバーペーストはパンにつけて食べる。パンはお替りした。
主菜は私は真鯛のポワレ ホワイトソース掛け。
彼女は鶏モモ肉のオレンジ煮。
シェアまではいかないが、お互いの料理をお裾分けした。
食後のお茶は、店を変えて「フロハン」で。
私はホットジンジャー、彼女はゆず茶。
あゆみさんから今日のお礼ということで彼女の家の近所、所沢の「いちあん」というパンカフェのパンと林檎のコンフィチュールをいただく。 ありがとうございます。
私はあゆみさんの句が好きで、彼女のロックな(嘘のない)人柄も好きである。 彼女が地方に行ってしまうのはとても淋しい。先日、沖縄に移住することになった宙太さん(元「SKIPA」店主)とも個人的な送別会をしたばかりだが、同じようなことは続くものである。
また一人別れを惜しむ二月かな たかじ
でも、きっとまた会えますよね。とりあえず日曜日の句会でね(笑)。
この街を離れんとして春の風 たかじ
あゆみさんを地下鉄の駅まで送ってから、大学へ。
ちょっと幻想的な雲が出ている。
泡立つような雲である。
研究室であゆみさんからいただいたパン(ウィンタークーヘン)をお八つに食べる。
こげ茶色の軽石のようである。
割るとチョコとナッツの香りが広がった。
雑用を片付けて、6時半頃、大学を出る。
エリナさんとヨシヒコさんにライトアップしたこの眺めを見せてあげたかったな。
戸山キャンパスのロックアウト期間は明日(22日)まで。
夕食は豚シャブ。
簡単で、美味しくて、安い。三拍子そろった鍋である。
2時、就寝。