フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

5月21日(日) 晴れ

2023-05-22 10:53:37 | Weblog

7時半、起床。

ロールパン、目玉焼き、ソーセージ、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

昨日のブログを書いてアップする。

今日は午後1時からオンラインの句会がある。その前に昼食を食べおこう。「鳥久」の弁当などいいのではないかと、自転車に乗って買いに行く途中、「きりん珈琲」の前を通ったときに気が変わって、ここで食べることにした。

店主さんから「ランチタイムにいらっしゃるのはお珍しいですね」と挨拶される。

ランチメニューの中からアスパラの和風鶏そぼろ丼を注文する。

珈琲とサラダが付いて1280円。

春限定だから次に来るときはもうないかもしれない。今日食べられてよかった。

「リトルミトン」に寄ってお八つを買って行こう。

店の前でカフェ仲間のトモミさんとバッタリ遭う。最近、こういうことが何度かある。お店の方から「ご一緒にいらしたんですか?」と聞かれたが、偶然です。

時間があったらご一緒したいところだが、句会の開始まであと10分しかない。お店の方に写真を撮っていただいて、店を出る。どうぞよいカフェの午後を。

帰宅して、お八つ(ヘーゼルナッツとホワイトチョコレートのマフィン)の用意をしてZoomの開始。素材はホワイトチョコレートだが色はストロベリーである、

本日のオンライン参加は6名(画面左上からさやかさん、私=たかじ、市川桜子さん、渺さん、紀本直美さん、羽衣さん)。桜子さんは初参加で、「市川桜子」はペンネーム。あきこさんのお知り合いである。東京在住だが、京都から上京して2か月目である。私が「蒲田に住んでいます」と言っても、どこのことかわからないようだった。

本日の作品は19句と少な目である(蚕豆さんとあきこさんが投句参加)。一人三句(天・地・人)を選句。

私は次の三句を選んだ。

 天 日時計や二時方向に蜥蜴(とかげ)消ゆ

作品リストの冒頭に載っていた句である。一目見て、いい句だという印象があり、結局、これが今回一番いい句だと思った。兼題の「時計」を「日時計」で使い、それを「二時方向に」と蜥蜴の消え去った方向に使ったところが上手い。もしかして『ラストマン~盲目の捜査官』をご覧になっているのではないかしら。末尾の「消ゆ」もきれいだ。昨日発売の『NHK俳句』6月号に載っていた小澤實の句「立ちどまり蜥蜴ふりむく石の上」と並べても遜色ない句である。

 地 時計の針止まったまま五月尽

これも兼題句。家の中にいくつかある掛け時計の一つであろう。電池切れか何かで針が止まったままである。電池を替えねばと思いつつ、メインとなる掛け時計ではないのだろう、ついそのままになって、5月も終わろうとしている、と解釈した。ちなみに我が家には掛け時計が3つある。居間と台所と洗面所である(書斎やトイレにも時計はあるがそれは置時計である)。それぞれの時計は時刻が違う。居間の時計は15分進んでおり、台所の時計は10分進んでおり、洗面所の時計はほぼ正確である。それで混乱することはない。私は頭の中でそれぞれの時計の指し示す時刻を頭の中で正しい時刻に変換しながら生活しているのである。

 人 砂時計サンダル探して5分経つ

これも兼題句。つまり今回私は兼題句ばかり三句選んだのである。「時計」を兼題にしたのは私だが、「時計」には物語を喚起する力があるように思う。この句は謎めいている。砂時計は天地を反転するところから時計として機能し始める。つまり作者はサンダルを探し始めるにあたって砂時計を反転させたのである。なんだろう?どこかに隠されたサンダルを探すゲームか何かなのだろうか?すでに5分が経過している。残り時間は何分なのだろう。場所は室内なのだろうか。いや、砂時計の「砂」からサンダルは「ビーチサンダル」を連想させる。サンダルは砂の中に隠されているのだ。夏の海辺の光景が目の前に広がる。

選考タイム。

各自の選んだ句を発表して、集計結果が出る(天=5点、地=3点、人=1点)。上位の句から選んだ人をを中心に感想を述べてから、作者が明らかにされる。

25点 日時計や二時方向に蜥蜴消ゆ 羽衣

今回の特選句の作者は羽衣さんだった。あきこさん、花さん、私が「天」を付けた。全部で7名がこの句を選んだ。得点、選者数ともに断トツの特選句である。みなさんの感想も私の選評とほぼ同じ。お見事です。

拍手!

16点 駆け込みの白雨の客の胡麻団子 たかじ

私の句。紀本さん、蚕豆さん、明子さんから「天」をいただいた。いつもの句会なら特選句になっていておかしくないが、選者の数が4名で、ここが羽衣さんとの違いである。句の意味は、激しい俄雨に雨宿りのつもりで飛び込んだのは街の中華料理店。カフェであればコーヒーでも注文すればよいのだが、なにせ中華料理店である。しかしラーメンやチャーハンや餃子の入るお腹ではない。メニューを眺めて胡麻団子が目にとまる。これだ。熱々の胡麻団子を頬張りながら雨の上がるのの待つ。「駆け込みの」はいらないのではないかと桜子さんからのコメント。おっしゃる通り、あわただしい動きを演出したわけだが、「白雨の客」で駆け込んで入って来る様子は想像できる。桜子さん、鋭いです。


(写真は5月14日のブログから)

10点 囀り(さえずり)の梢を渡る間投詞 蚕豆

渺さんと桜子さんが「天」を付けた。しかし、二人は間投詞の解釈が分かれた。渺さんは梢を移動しながらの小鳥の囀りそのものが間投詞のように聞こえると解釈したが、桜子さんは間投詞は鳥を目で追いかけている人の口から発せらる言葉ではないかという解釈をした。間投詞とは「おぉ」とか「あっ」とか「やれやれ」といった情緒を現す独立性の高い言葉で感動詞とも感嘆詞とも呼ばれるものだから、文法的には桜子さんの解釈が合っているように思う。鳥の囀りを「チッチ」とか「ピーピー」と表現するのは間投詞ではなく擬声語である。ただし、詩として読んだ場合は、鳥の囀りを人間の間投詞のようなものと解釈することも可能だろう。

 9点 擦り傷の子や夏草の秘密基地 羽衣

さやかさんが「天」を付けた。子どもの特有の世界を描いた句だが、「一発特待生」レベルの特選句の作者が作った句としては凡庸な感じはいなめない。子どもが原っぱの中に「秘密基地」を作るというのは多くの人に語られてきた情景であり追憶である。特選句をベタほめしたので、こちらは辛口の感想になりました。

 6点 遍く(あまねく)田空を映して聖五月 渺

田植えの時期は地方によって異なるが、東北では5月中旬、ちょうど今頃である。田んぼが広がる風景。田んぼには五月の青空が映っている。お馴染みの日本の風景であるが、そこに「聖五月」(マリア様の月)というキリスト教由来の季語を投じたのがこの句の見所である。この言葉が俳句の季語になったのは明治期であろう。当時の文人、知識人はキリスト教への関心が高かった。それは宗教というよりも西洋思想そのものであったからだ。

 5点 レースの手袋みたいな祖母の手握る 市川桜子

「レースの手袋みたいな祖母の手」とは一体どんな手であろうか。「きれいな手」「美しい手」という意味にもとれるし、「かさかさと皺の入った手」と言う意味にもとれる(レースの手触りは決してすべすべとしたものではあるまい)。臨終の床にある祖母の手を握っているという解釈(渺さん)さえ可能だろう。しかし、二つの解釈は両端でつながっているのかもしれない。生きて来た歳月を語る祖母のかさかさと皺の入った手を美しいと感じることは不思議ではないからだ。桜子さんは日頃から思いついた言葉やフレーズをノートに書き留めているそうだ。いうなれば俳句のネタ帳だ。「レースの手袋みたいな」という比喩はたぶんそこからもってきたのではないかしら。

 3点 時計の針止まったまま五月尽 紀本直美

私が「地」を付けた。選句のときに私の想像を述べたが、作者は全然別のことを考えていた。これは広島サミットをモチーフにした句だそうだ。針の止まったままの時計とは被爆した時計のことなのである。もしこれが八月の句であったら、私もそのことに気づいたと思うが、それではベタすぎると紀本さんは考えたのだろう。広島出身の直美さんには「八月の終電はみな広島へ」という句がある(句集『八月の終電』所収)。

 3点 老鶯(ろうおう)と新宿中央サウナかな 紀本直美

渺さんが「地」を付けた。老鶯とは夏に鳴く鶯のことだが、ここでは中高年の方々の比喩になっているようである。ある俳句教室の生徒さんたちと新宿を吟行したときのことを詠んだもの。もし今日恵美子さんが出席されていたら、彼女の句だと思ったことだろう。彼女はサウナが大好きで、カフェ好きの人がカフェめぐりをするようにサウナめぐりをされているのだ。

 1点 砂時計サンダル探して5分経つ 市川桜子

私が「人」を付けた。選句のときに私の解釈を述べたが、作者の説明はそれとは全然違っていた。砂時計の落ちていく砂を見つめていると、何かを探している感じ、何かが砂の中から姿を現すのでないかという気がする。たとえばサンダルとか(どんだけ大きい砂時計なんだ)。気が付くと自分が砂時計の中に入っていて、アリ地獄のような、奈落の底に引きずりこまれていくような感覚に陥る。シュールな句なのだ。シュールではあるが、5・7・5の音律はきっちりと守られている。同じ作者の「レースの手袋」の句の破調とは違う。両刀使いということか。

 1点 足首のボルトは軽し春の雨 蚕豆

直美さんが「人」を付けた。蚕豆さんは以前、足首を骨折して補強のボルトを入れている。当然、違和感があるだろうが、春の訪れにそれも軽く感じられるということである。それが雨の日であることが、えっと思うが(雨の日に散歩?)、それがかえってリアリティがある。春の雨はやわらかいのだろう。

 1点 いつまでもロックでいたいね白桃忌 市川桜子

さやかさんが「人」を付けた。実は、「白桃忌」は「白桜忌」の勘違い。与謝野晶子の命日(5月29日)である。晩年白いソメイヨシノを好んだことに由来するもので、ソメイヨシノが咲く季節に亡くなったわけではない。ちなみに白桃忌というのはない。太宰治の忌日は「桜桃忌」である。「与謝野晶子はロックな人だったの?」という問いに桜子さんは「はい」と答えた。理屈よりも情を優先し、反戦を詠んだ人である。桜子さんは初参加で三打数三安打(全部入選)である。

 1点 満開のバラ園に針のない時計 紀本直美

明子さんが「人」を付けた。横浜の港が見える丘公園の風景を詠んだものだそうだ。近くには神奈川県立近代文学館があり、生誕120年、没後60年を記念した「小津安二郎」展を開催中である。「バラ」と片仮名表記にした理由を問われて直美さんは「薔薇だと見た目が重くなるから」と答えていた。私は「バラ園に」の「に」が説明的なので、ない方がよいと思うが、直美さんは名詞止めで句が分割されるのが好みではないようだった。

入選句は以上の12句だった。このくらいの数だとブログを書くのも楽である。しかし、句会は予定の2時間をほぼ使い切って行われた。一句一句を話題にしてせかせかしないでおしゃべりを楽しめたのはよかった。

みなさん、お疲れ様でした。

次回の句会は7月2日(日)。兼題(出題者は羽衣さん)は「甘味の季語」(水羊羹とかアイスクリームとか)。

『山下達郎のサンデー・ソングブック』を聴きながら話した内容を忘れないうちに句会ブログの下準備。

バッグにノート・パソコンを入れて散歩に出る。カフェで句会ブログを書くつもりだ。こういうときは「ルノアール」である。

ミルクティーを注文し(ポットで出て来る)、店内のWi-Fiを使って句会ブログを書く。1時間ほど滞在。

夕食は鶏肉の塩麴炒め、餃子、玉子のスープ、ごはん。

塩麴が効いている。

GWで息子が帰省した時に作った餃子が冷凍されて残っていた。

食事をしながら『どうする家康』を追っかけ再生で観る。家康、下女お万にお手付きをして、正妻瀬名が激怒するという展開。前回の武士の死に場所の物語と呼応した女の生存戦略の物語ということだろう。

レビューシートのチェック。

放送原稿の下準備。

風呂から出て、今日の日記を付ける。

1時半、就寝。