9時、起床。
チャーハン、サラダ(+りんご)、麦茶と紅茶の朝食。
雑誌の原稿の再校をチェックし、編集者に送る。たぶんこれで校了のはず。
ブログを更新してから、大掃除にとりかかる。手始めは書斎の机回りの整理、書斎と一階の2つの和室とダイニングルームの窓ガラス拭きである。
机上および(写真には写っていないが)その周辺は、長い航海の途中で港に立ち寄った貨物船のように海藻やらフジツボやらがへばりついている。
窓のところにも本が積まれ、窓ガラスを拭くためにはこれもどかさねばならに。
昼食は焼きそば。「マーボ屋」に食べに行こうかという話もあったが、時間の節約のために却下される。ソース焼きそばを食べるのは久しぶりで会ったが、美味しいものである。
食休みの読書。本の片づけをしていると、本が読みたくなるというのは誰もが経験するところであろう。あくまでも食休みの読書であるから、『騎士団長殺し』を読み返すなんてことはできない。池澤夏樹編集の河出書房新社版『世界文学全集』の中の「短篇コレクションⅡ」なんかがもってこいだ。冒頭の作品、アレクサンドル・グリーン「おしゃべりな家の精」を読む。7頁ほどのファンタジックな小品だが、選りすぐられた作品だけあって(20世紀ヨーロッパを中心とする19篇が収められている)、清冽な岩清水のような味わい。
窓際に積まれた本が片づくと、部屋が明るくなる。
撤去された本は、処分(廃棄)されるわけではない。私はめったに本を処分しない。なので本の再配置という問題にはいつも頭を痛めている。今回はとりあえず一階の和室に一時的に移動した。難民キャンプのようなものである。彼らの定住先はこれから少し時間をかけて考えなければならない。
4つの部屋の窓ガラスの清掃が終る頃には夕方になっていた。
夕食は鰻玉丼とカブの味噌汁。
最初、親子丼かと思ったが、食べてみると鰻玉丼だったので、小さな驚きがあった。真空パックの鰻の蒲焼でもこうやって食べると美味しく食べることができる。
デザートはりんご。
机上も大分スッキリした。
深夜、『短篇コレクションⅡ』からジュゼッペ・トマージャ・ディ・ランペドゥーサ「リゲーア」を読む。40頁弱の「長めの短篇」。二人の恋人に同時に振られて(二股がばれたのだ)厭世的気分になっていた若い男が、カフェで一人の碩学と出会う。ひどく気難しい老人だが、毎日顔を会わせる中で言葉を交わすようになる。ある日、老人は若者に自分が若い頃に経験した出来事について語り始める。・・・文句なしの傑作だと思った。読んでいる途中で気づいたのだが、作者は、ルキノ・ヴィスコンティ―監督の映画『山猫』の原作者であった。『山猫』でバート・ランカスターが演じた主人公のサリーナ公爵は作者の曽祖父がモデルなのである。『山猫』は作者の唯一の長編作品で、彼の死の翌年に発表されたものである。
それにしても外国文学には私の知らない傑作がたくさんたくさんあるということに思い至った。どうして若い頃にもっと外国文学の作品を読んでおかなかったのだろう。理由ははっきりしている。翻訳の文章が読むに堪えないものが多かったからだ。語学のテキストなら我慢して読めても、文学作品としてはとうてい読む気になれなかった。でも、いまは違う。上質の翻訳がずいぶん増えたように思う。ちなみに今日読んだ二篇の訳者は、「おしゃべりな家の精」が岩本和久、「リゲーア」が小林惺である。
3時、就寝。