温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

トカラ列島 旅行ひとくちメモ (どのように旅行したらよいのか)

2012年08月26日 | 鹿児島県
約2週間にわたってトカラ列島の温泉を取り上げてきましたが、これらの記事を読んで訪れてみたくなった酔狂なあなたへ、アクセスや島内事情などいろいろな面でハードルが高いトカラ列島を、ズブな素人でも訪れることができるよう、今回の記事では私の実体験をもとに旅行のプランニングや滞在中の行動で役立つ(かもしれない)How to を書き綴ってまいります。
なお観光地や各島の概要については、既に詳しく説明されているサイトがありますのでGoogleで検索してそちらをご覧いただくとして、ここでは個人的に気付いた旅行の技術面のみをメモしてゆきます。


●アクセス編
(1)フェリー「としま」・客室編
トカラへの唯一のアクセス手段が、週に2往復しか運行されないフェリー「としま」。離島とはいえ飛行機はありません。船の概要については村のホームページをご覧くださいね。まずは客室について。客室には、雑魚寝の2等客室、2段寝台の指定寝台、1等客室の3種類が用意されています。

 
2等客室。最も安い等級です。他の航路の2等客室でもよく見られるレイアウトであり、カーペットの床に枕と毛布が用意されています。一人分のスペースは結構狭いため、慣れていないと長時間の滞在はキツいかもしれず、耐えきれずに甲板や食堂で時間をつぶす客の姿も見受けられます。


 
こちらは指定寝台。ひとつの部屋に2段の寝台が左右に2つずつ(計8人分)分かれて配置されており、両方の寝台の間にテレビが1台設置されています。スペースにはとてもゆとりがあり、カーテンを閉めればプライバシーも確保できます。また蓋つきの棚に荷物も収納できます。神経質の人は指定寝台がおすすめ。ちなみに私は初日に往路と、最終日の復路でこの指定寝台を利用し、島と島の移動は長くても1~3時間程度でしたので、2等客室を選択しました。


(2)フェリー「としま」・チケット編
旅程立案に当たり、週2便しかないフェリーの乗船に際しては予約が必要なのかどうか、事情が分からない我々にとってはかなり不安ですが、結論から言えば、余程のこと(たとえば悪石島でボゼのお祭りが開催される日など)がない限りは、予約なしで当日いきなりチケットを購入しても問題ないみたいです。でも指定寝台や1等はキャパに限りがあるため、鹿児島発の指定寝台や1等に限っては事前に電話で予約することができます。実際に私も往路の指定寝台は電話予約をし、乗船当日に窓口で券を購入しました。なお予約のあるなしにかかわらず、鹿児島港での乗船券の販売は、出港当日の9:00~17:00および19:00~23:30です。
一方、各島で乗船券を買い求める場合は、島のコミュニティーセンター(役場の出張所)で購入することになります。島によって発券時間が異なりますので、宿泊先の方に聞いてください。また何らかの事情により島で乗船券を買えなかった場合は、船内でも購入可能です。


 
こちらは鹿児島港の発券所および待合室。


 
乗船券と指定寝台のチケット。鹿児島発は発券時に寝台が指定されますが、島発の場合は、乗船した後、船内の受付で指定を受けます。


(3)フェリー「としま」・船内滞在編
鹿児島から各島までの長い船旅、ずっと指定された客室でじっとしているのはかなりツラいものがありますから、船内をウロウロしてみましょう。

 
乗客にとっての憩いの場である食堂。お土産も買えます。テレビも2台あって、航行中でもBSが視聴可能です。自販機ではビールも売ってますよ。島にはお店が無かったり、またはあっても値段が高かったりするので、自販機でビールを大量購入してから島へ降りてゆくお客さんがいらっしゃいました。なお深夜などは営業していません。


 
食堂で食べられる食事は冷凍食品です。画像のものは高菜チャーハン。セルフサービスです。食堂以外でも自販機が設置されており、ソフトドリンク・アイス・カップラーメンなどが購入できます。
また一部の階のトイレにはシャワー室も設置されています。


 
フェリーの受付(案内カウンター)。何かあればこちらへ相談を。なお島から乗船した場合は、等級を問わず、乗船してからこの受付で座席(寝台)の場所を指定してもらってください。
この受付カウンターには村発行の観光パンフや各島の地図(コピー)が用意されていて無料でもらえるほか、各島の出張所で捺せる記念スタンプが全島分用意されており、島を巡らなくてもこの島で全部のスタンプをコンプリートできちゃいます(それでいいのか?)。



受付カウンターのそばには、フェリーの現在地を電球で表示する「航路表示盤」があり、いまどこにいるかがわかります。この画像の場合は、上り便(鹿児島行)がちょうど屋久島と口永良部島の間を抜けて北上していることを示しています。ということは…


 
船から両方の島が見られるはずですので、実際に甲板に出てみると、本当に二つの島がはっきりと眺められました。画像左(上)は屋久島(のはず)、右(下)は口永良部島です。



運が良ければ、このように船の上からイルカが見られるかも。この時は悪石島と小宝島の間で、イルカたちがフェリーの両側でピョンピョンと華麗にジャンプしてくれました。でもあっという間にイルカは姿を消すので、カメラにその姿をおさめるのは至難の業です。


 
こちらはカツオドリ。いかにも南方らしい鳥ですが、この鳥は船に驚いて海から飛んでくるトビウオを狙っているため、船と並行して飛んでおり、撮影は容易でした。



トビウオは人間が食べたっておいしいわけでして、フェリーの甲板では開きにしたトビウオを干していました。のどかな船ですね。


●プランニング案
(1)フェリーの運行パターン
週2往復しかないフェリーですが、実際に旅程を立案しようと思って、村のホームページを開いて運行表を見ても、初めての人間には、そこに記されているお意味がさっぱりわかりません。入港日や出港日ってどういう意味なのでしょう?
そこで拙ブログではフェリーの運行パターン(曜日)について、以下のように表現し直してみました。
※2014年5月一部修正

・鹿児島→トカラの場合(下り便)
月曜23:00出航→火曜の早朝からお昼にかけて各島へ→奄美・名瀬宝島止まり(奄美には行きません)
金曜23:00出航→土曜の早朝からお昼にかけて各島へ→奄美大島・名瀬港まで行きます

・トカラ→鹿児島の場合(上り便)
水曜朝7:00宝島始発早朝3:00奄美・名瀬出港→同日朝からお昼にかけて各島を出発→同日20:3018:50鹿児島到着
日曜早朝3:00奄美大島・名瀬出港→同日朝からお昼にかけて各島を出発→同日20:3018:50鹿児島到着
※2013年7月より全便が名瀬まで行くようになり、鹿児島港の出発および到着時間も変更されました

通年、このパターンで運行されます。運行表で記されていた入港・出港って、鹿児島港を基準にした表現だったんですね。1隻のフェリーが都合3日かけて往復しているだけなので、週2往復とならざるをえないわけです。なお船の検査や県の行事(選挙など)によって運行曜日が異なる場合がありますので、かならず運行表でチェックしましょう。

ちなみに私が利用した日は、安定した高気圧に覆われ続けていたので、外洋とは思えないベタ凪の状態でほとんど揺れることはありませんでした。でも天候によっては相当揺れることがあるそうですから、体調に自信のない人は酔い止めの薬を事前に用意しておくことをおすすめします。また、鹿児島港の出航はオンタイムでしたが、あまりに海が静かで順調な航行となったため、各島へは時刻表より15~30分ほど早く到着しました。また鹿児島港に戻った日も、やはり全行程にわたってベタ凪だったため、定刻より30分早く鹿児島へ入港しました。一方、天候が荒れたら数時間単位で遅れたり、あるいは寄港できずに島を通過する場合もあるらしく(島によってはうねりに弱い港もあります)、当然ながら欠航も多いそうです。従いまして、計画通りに旅行が遂行できる可能性はかなり低いと想定しておいたほうが良いでしょう。

ついでに言えば、どんなに順調な航海であっても、鹿児島に戻ってくるのは夜8時18:50です。新幹線なら博多行最終の「みずほ」新大阪行に乗り継げますが、その日のうちに飛行機へ乗り継ぐことは100%不可能かなり困難です。よって、鹿児島へ戻る日には市街のホテルへ泊らざるをえません泊まることを前提にプランニングした方がよいでしょう。
※2013年7月の運行時刻変更により、本記事を投稿した時より状況が変わりましたが、投稿時の状況は取消線を付けた上でそのまま残しておき、現在の状況も一緒に紹介しておきます。


 
鹿児島港から下り便に乗り込むお客さんたち。客層としては、島民や工事・公務関係者が多く、観光客の大部分は太公望で、私のような純粋な観光目的の人間は少ないようです。


 
船を舫る作業は島民のみなさんのお仕事。船が入港する度に、島の人は総出で港へやってきます。


 
トカラの島では畜産業が盛んであり、当然ながら牛の出荷もフェリーで行います。画像左(上)は平島で、右(下)は小宝島で、牛が専用の檻に入れられてフェリーに載せられる様子です。


(2)具体的なプランニング
繰り返しますが、フェリーは週に2往復しかありませんから、一回の旅程で複数の島を巡ろうとする場合、鹿児島から近い島から、あるいは遠い島から順々に訪問していこうとすると、とんでもない日数を要してしまいます。でも下り便が運行される翌日には上り便が運航されるので、この法則を念頭に置き、遠い島と近い島を行ったり来たりすれば、効率よく複数の島を巡れます。具体的には、

 鹿児島  A島  B島  C島 ・・・ 

このように島が並んでいるとすると、
 金曜:鹿児島23:50発の下り便に乗船
 土曜:C島に到着、そして宿泊。
 日曜:C島から上り便に乗船してA島へ(A島にて宿泊)
 月曜:終日A島
 火曜:A島から下り便でB島へ(B島にて宿泊)
 水曜:B島から上り便で鹿児島へ戻る(20:30着)
 木曜:鹿児島空港から飛行機で帰る
こんな感じで、1週間あれば3つの島を巡れます。上記プランが最も効率的かと思われます。1週間も休めないよ、という方は訪問する島の数を1~2つに限定しないといけません。


●島内の移動
公共交通機関はありませんから、自分の足に頼るか、宿で車(有料)を借りるほかありません。なお車の多くは軽自動車でマニュアルですから、AT限定免許の人は運転できないかと思います(中之島にはAT車もわずかにありますが)。また、自転車を持ち込む人もいるようですが、どの島も急な坂ばかりですから、あまり役に立たないかもしれません。こうした地理的事情のためか、レンタサイクルもありません(宿によっては原付を貸してくれる場合があります)。


●宿泊
トカラ列島に観光協会はありません。旅行会社と提携している宿があるという話も聞いたことがありません。このため自分で調べて電話で予約することになります。一応役場でも諸々の相談にのってくれるそうですが、島の人や旅行者に聞いたところによると結構事務的みたいですので、村のホームページなどを見て、自分で調べて手配した方がいいかもしれませんね。どの宿とも1泊3食付で7000~8000円が相場です。

どの島ともキャパシティーの少ない民宿ばかりで、しかも工事業者や公務関係者が優先されることが多いようでして、旅行者に対しては商売っ気が無く、けんもほろろに断られることがザラです。実際に私も何軒かの宿で断られました。でも実際に宿泊すると、どの宿でもとても親切に歓待してくれますよ。
なお、宿のキャパが小さいことなどを理由として、各民宿とも事前の予約が求められます。予約ができても相部屋となる場合もあります。もし希望する島の宿泊予約が取れなければ、島に到着しても宿が確保できないばかりか、他の島へ移ることもできませんので、その時点で旅程は破綻してしまいます。従って手配をする前に、別の島を訪れる旅程を何パターンか想定しておいたほうが良いかと思います。また、とりあえず現地に行ってから宿を探そう…という発想はかなり危険です(宿にあぶれる可能性が非常に大です)

なお宿を予約しておけば、入港に合わせて宿の方が車で港まで迎えに来てくれます。船から島に降りて、辺りをキョロキョロしていれば、宿の方が見つけてくれるでしょう。


●お金
島にATMはありません。クレジットカードも使えません。予め現金を多めに用意しておく必要があります。尤も、現金をたくさん持っていても、島で盗難事件に遭う可能性はほとんど低いので(フェリー船内を除く)、保管の面はほとんど心配ありません。
郵便局は口之島・中之島・宝島にあるので、郵貯の通帳を持参すれば引き出しが可能です。また後述するように店や自販機が殆どないので、共同浴場などで小銭が必要な場合は、あらかじめ船内で飲料を購入するなどして、くずしておきましょう。


●食生活
外食できる店は皆無です。このため島の宿はどこでも1泊3食が基本です。島内を散策していても、お昼には宿へ一旦戻りましょう。なお事前に宿へ連絡すれば、食事を抜いたり、あるいは弁当を追加したりすることが可能です。フェリーの入港時間によってお昼ご飯をどうするか迷う場合もあるかと思いますが、上述のようにフェリーの食堂は素っ気ない冷凍食品ですから、宿でいただくことをおすすめします。

意外とうっかりしてしまうのが飲み物事情。日本国内だったら、大抵はどんな場所にも飲料の自販機があるため、暑い夏で汗をダラダラ流しても、いつでも気軽に水分補給することができますが、トカラの島には自販機は1~2台しかなく、島によってはありません。集落からちょっとでも離れると、飲料が入手できなくなります。このため水筒やペットボトルの携行が欠かせません(水道は飲めます)。


 
画像左(上)は平島の自販機、右(下)は宝島の自販機と売店です。各島とも中心的集落に1~2台程度しかありません。頻繁に商品補充することもできないため、売り切れのものも多かったりします。



小宝島唯一の自販機は故障中でした。


お店から直接食材や飲料類を入手しようとしても、営業時間も取扱品目も限定的ですし、場合によっては店が無いこともあります。従って、どうしてもこれだけは欠かせない、という品物があれば、鹿児島出発前に予め用意しておきましょう。
物によってはフェリーの売店を活用する方法もあり、実際に島の人は入港時にダッシュでフェリーへ入って、売店や船内の自販機で希望のものを買い求める光景を頻繁に目にしました。ちなみに夏はアイスがバカ売れです。


●健康
各島とも僻地診療所があり、基本的な診療は可能のようですが、薬局は無いので、必要な薬があれば事前に用意する必要があります。なお、真夏の炎天下に屋外を歩くような人は(バカな私以外は)いません。ほとんど自殺行為です。


●通信
携帯はドコモしか使えません。なおドコモにはレンタルサービスがあり、使用前日の15時までに申し込めば、翌日には自宅や勤務先などへ届けてくれますよ(申込にはクレジットカードが必要)。歩いて島を散策して途中で迎えに来てもらう場合や、天候悪化などにより旅程変更を余儀なくされ宿泊予定の民宿にキャンセルなどを申し出る場合など、島で携帯電話が必要となる場面は結構多いかもしれません。

インターネットに関しては、村が通信事業者となってネット環境を整備しており、各島で利用が可能となっています。島の方や旅行者から伺った話によれば、役場の出張所などへお願いすれば、ネット接続されているパソコンが利用できるみたいです。また宿によっては無線LANを飛ばしているありがたい施設もあります。私が宿泊した宿のうち、小宝島のパパラギ、平島の大峰荘では無線LANが使えました。


●お土産
トカラのお土産としては
塩・漁醤・筍水煮・トビウオ関係・島らっきょう・島バナナ関係(バナナそのものやコンフィチュールなど)
などが挙げられるでしょう。でも島内にお土産屋さんはありません。宿でオリジナルグッズを販売していることもありますが、希望のものが手に入るとは限りません。島ならではのお土産はフェリーの売店で販売しているほか、鹿児島市内の十島村役場の隣にある「結プラザ」でも販売しており、後者の方が品揃えは豊富です。ちなみに、某島で伺った話によれば、船内の売店に卸すと思いっきりマージンをもっていかれてしまうので、船では販売したくない、とのことでした。
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トカラ列島 平島 あかひげ温泉

2012年08月25日 | 鹿児島県
 
連続して取り上げてきましたトカラ列島の温泉めぐりも、今回の平島でラストとなります(日程の関係で口之島と諏訪之瀬島は巡れませんでした)。平島の温泉施設は一軒しか無く、その名は「あかひげ温泉」と称します。あかひげと言っても、山本周五郎の小説でも黒沢明の映画でもなく、十島村の村鳥である「アカヒゲ」のことです。この温泉は源泉温度が低いために燃料で加温しており、その関係で入浴できるのは週3日の夕方のみです。このため外来者にとってはハードルが高そうに思えますが、その営業日はフェリー上り便の入港曜日と合っていますので、実はそんなに苦労することではなく、島に到着した日に利用すればよいだけの話です。加温するため営業日が限られていたり、その日がフェリーの入港曜日と合っている点は、同じく源泉温度が低い宝島の「友の花温泉保養センター」と全く同じですね。
浴場はコミュニティーセンター(役場の出張所)に内包されており、正面玄関の左側に勝手口のような温泉専用の入口があります。


 
下足場の上部壁面には寄付者の名札が並んでいます。また靴箱の上には料金箱が置かれています。他の島の共同浴場と同様に無人ですので、自己申告で料金を支払います。



なお私が宿泊した民宿「大峰荘」の玄関にも料金箱が設置されており、ここで支払ってもOK。


 
脱衣所はこじんまりしており、至ってシンプルな構造ですが、よく手入れが行き届いており清潔です。扇風機が設置されているのは嬉しいですね。



洗い場と浴槽があるだけの、飾り気のないタイル貼りの実用本位な浴室ですが、やはりこちらもメンテナンスがよく、とっても清潔です。


 
室内には左右に分かれて洗い場が設けられており、シャワー付き混合栓が計5基設置されています。自分たちの共有財産を大切に使ってゆこうという意識の顕れなのか、腰掛や桶がきちんと整頓されており、先客のお爺さん二人も自分で使った備品類をきちんと元通りに戻してから退室していきました。素晴らしいマナーです。


 
台形を横にしたような形状をしている湯船は4~5人サイズで、この湯船には「お湯」「お水」「温泉」という3つの蛇口が設けられており、「温泉」から加温された源泉が注がれています。加温こそされているものの、循環消毒などは行われておらず、加温した上での放流式となっています。
泉質名としては単純温泉ですが、金気が多いのか赤みを帯びた黄土色に弱く濁っており、その濁りのために浴槽の底が霞んで見えます。金気味(鉄とは異なる味)と土気味、そして重炭酸土類泉を加温した時に現れる独特の臭みとゴム系の表現が難しい不思議な油臭がそれぞれ感じられます。加温の塩梅がよく、利用時はちょうど良い湯加減でした。



浴室内には水色タイルの空っぽの槽がありました。この槽の用途は不明。そういえば宝島の「友の花温泉保養センター」にも同じものがあったっけ…。


低温の温泉を温めて提供していること、公民館的な建物、限定的な営業時間、青い空っぽの小さな槽があること、手入れがよく行き届いていて綺麗、赤っぽく濁ったお湯など、宝島の「友の花温泉保養センター」に似ている要素を有しているこの温泉は、同温泉と兄弟関係にあるといっても良いかもしれませんね。綺麗で気持ち良い温泉に浸かって、数日間に及んだトカラでの旅の疲れを癒すことができました。こんなお風呂を維持し続けている島の方々に感謝です。


平島1号
単純温泉 27.8℃ pH7.0 溶存物質454.7mg/kg 成分総計464.8mg/kg
Na+:72.3mg(53.05mval%), Mg++:10.3mg(14.36mval%), Ca++:30.9mg(26.01mval%), Fe++:4.7mg(2.87mval%),
Cl-:105.2mg(54.00mval%), SO4--:44.7mg(16.91mval%), HCO3-:97.8mg(29.09mval%),
H2SiO3:81.2mg,

鹿児島県鹿児島郡十島村平島川之上293

火・木・土の17:00~21:00
200円
備品類なし

私の好み:★★

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トカラ列島 中之島を逍遥 (その2)

2012年08月24日 | 鹿児島県
前回の続きです。


●高尾盆地
 
今度は宿の近くの八幡神社から、島の中央部へ向かう坂を登ってゆくことにしました。海岸部から中央の高地へジグザクカーブが続く坂道をひたすら登ってゆくと、途中で「与助岩」と称する大きな岩の前を通過します。一見すると何の変哲のない岩ですが、島には言い伝えが残されているらしく、傍らに立つ説明版によれば、
16世紀中頃、トカラ列島を荒らし回っていた海賊日向の与助という人物やその一味を、当時の郡司が美女を囮にして酒盛りを開き、与助らが油断したところを退治した。すると、与助の霊はこの大きな石と化し、体は灰となって飛び散って人々の血を吸うブト(ブヨ)になったという…。
この日向という人物は、生前は海賊として暴れまわり、討たれた後はブヨになって人々を襲うという、生きている時も死んだ後も、徹底的に世間様へ散々迷惑をかけるとんでもない輩なんですね。


 
海べりの集落から中央部まで、地図上では大した距離はなさそうなのに、実際に歩いてみると、坂を登りきるまでかなりの距離と標高差があり、ちょっとした登山のようでして、夏は水を携行しないと大変なことになっちゃうでしょう(この島では海沿いの東区や西区以外に自販機や店はありません)。島には公共交通機関が無いので、島内の移動に際しては有料で宿から車を借りるか、あるいは自分の脚力に頼る他ありません。
全身汗だくになりながら、歩き始めてからちょうど30分で、道の先が明るくなって勾配が緩やかになり、ようやく高尾盆地に到達です。まず目に入ってくるのは「十島開発総合センター」という立派な建物。館内には集会所や会議室などがあるのですが、実はどうやらここで宿泊もできるみたいでして、旅行者は島の民宿に泊まるのが原則ですが、もし宿にあぶれた場合はこちらへ相談すると何とかなるかもしれません。


 
「十島開発総合センター」から先へ進むと道の両側の視界が開け、特に右側には島とは思えない雄大な牧場が広がっており、そこではトカラ馬がのんびり草をはんでいました。


 
いまではすっかり数が少なくなってしまった日本在来種の馬の一種であるトカラ馬。大きさは所謂ポニーと同等です。一時はトカラから姿を消したそうですが、喜界島や鹿児島など他の地域で飼われていたものをトカラへ戻して、この牧場で繁殖させているんだそうです。馬はとても可愛らしく、ずっと眺めていても見飽きることがありません。


 
トカラ馬は人懐っこい性格も特徴のひとつなんだそうでして、私が柵に近づくと、馬の方からこちらへ歩み寄ってきてくれました。道沿いに立てられている掲示板ではそれぞれの馬について紹介されています。



いかにも馬専用の牧場らしく、道路には「馬注意」の看板が立っています。


 
高尾盆地の中央部へとやってきました。中之島はトカラの中心的役割を果たしており、小規模ながらいろんな公的施設があるんですね。たとえばこれは、鹿児島地方気象台の中之島地域気象観測所。といっても観測機器が設置されているだけで無人なんですけどね。



こちらは「歴史民俗資料館」。トカラの島々の概要や自然、歴史・民俗などを大きなパネルや実物などの展示品を用いて紹介しており、館内では土器・丸木舟・漁具・民具などいろんなものがを展示されています。


 
村発行の観光パンフレットによれば私が訪問した木曜日は休館日のはずでしたが、実際に訪れてみると玄関に置かれたパイプ椅子には「開館」の札が立てかけられており、その下には係員を電話で呼び出してほしいと書かれた紙が置かれていました。さっそくそこに記されている番号へ携帯で連絡すると、1分ほどですぐに係員の方がやってきて下さり、館内の展示をひとつひとつマンツーマン状態で細かく解説してくださいました。
地方へ赴くと民俗資料館の類をよく目にしますが、入館してみても大抵は古民具を陳列展示している程度に留まっているため、残念ながら民俗学に関心のない人には決して面白いものではない場合がほとんどです。しかしながら、こちらの資料館は実物のみならず、実にわかりやすい解説パネルも用意されており、またジャンルによって展示エリアを分けているため、トカラに関する諸々を誰でも興味深く知ることができる、非常に有益な施設となっていました。中之島へ訪れた際には是非訪れるべき施設です。なお上画像の右側(下側)は悪石島のボゼです。


 
資料館の敷地内には「本土復帰記念碑」が立っています。第二次大戦の敗戦後に沖縄がアメリカの施政下にあったことは知っていても、奄美やトカラも占領下にあったことを知る人は少ないでしょうね(当時の英語で表記された南西諸島の地図を見ると、奄美群島は"Northern Ryukyu"と書かれています)。1946年2月2日以降、北緯30度以南(口之島以南)はアメリカが占領することとなり、トカラ列島に関しては1952年2月10日に日本へ復帰しました。



こちらは中之島天文台。九州では最大級のカセグレン式60センチ反射望遠鏡なんだそうです。といっても天文に関する知識がほとんどない私にとってはその意味がよくわかりませんが、この大きな望遠鏡の他、館内には一度にたくさんの人が星を見ることができるモニターも装備されており、とにかく天文ファンには垂涎の施設なんだとか。


 
中之島はトカラの他の島と同様に牛の生産も盛んでして、天文台の周囲は広大な牛の牧場となっていました。



牛がおじさんに導かれ、道路をノソノソと歩いてゆきます。



牧場地帯が終わって密林地帯に入ると、門柱の跡らしき物体と遭遇。よく見ると消えかかった白字で「中之島小学校 日の出分校」と表記されていました。ここには分校があったんですね。


 
校庭跡と思しき広場の奥には小さな池、そして小さな建物が残っていました。これってまさか校舎の遺構? ちらっと中を見たらパイプ椅子がたくさん置かれていていましたが…。また池のほとりには動物を象った白いコンクリの朽ちかけた造形(おそらく遊具の一種)が立っているのですが、これは何(アシカ)?


●御池(底なし池)
 
地図を見たら島の中央部には「御池」という池があり、別名「底なし池」とも呼ばれているらしいので、どんなところか興味津々行ってみることにしました。日の出分校から更に先に進み、途中の分岐に立つ道しるべに従って奥へと向かいます。


 
沿道にはお花がたくさん。


 
分校跡から約20分歩いて御池に到着です。神秘的な景色が…と表現したいところですが、正直なところ、あまり特筆すべき風景ではないかも…。底なし池という名前から想像するような、不気味な雰囲気もありません。ごく一般的な池でした。でも、小さな島なのに意外な大きさの池を擁するほどの湛水能力を有していることは興味深く、しかもこの池の地下で湧く水の量が年間を通して安定しているという事実は驚かされました。



池の水は川となって海へと流れてゆきます。


 
年間を通して水量が安定しているため、昭和45年からこの池の水は水力発電に利用されています。これは水力発電用の取水堰です。


 
池へアクセスする一本道はこの円筒が建つ地点で途切れます(行き止まり)。取水堰を通ってきた水は、ここから急な斜面を下り、その勢いで水車を回して発電するわけですね。発電所の奥には海岸線(七つ山海岸)が広がっています。ということは、私は歩いて実質的に島を横断し、集落とは反対側の岸までやってきたことになるわけです。



●ヤルセ灯台・七つ山海岸
 
御池(底なし池)から一旦分岐点まで戻り、今度は南東へ延びる道に入って、「歴史民俗資料館」の方が奨めていたヤルセ灯台やセリ岬を目指します。竹林の中を掻き分けるように延びる山道をひたすら進むと、ようやく灯台へのアプローチへと到達することができました。辺りは放牧場となっており、道は馬の糞とヤギの糞で埋め尽くされていると言っても過言ではない程の状況でした。碧い空には白い灯台がよく映えますね。


 
資料館の方が特に奨めて下さったのが、灯台の裏に位置するセリ岬。まるで東尋坊のような断崖絶壁や、海から鋭く突き出たような奇岩に、外洋のうねりが絶えることなくブチ当たって白い波しぶきを上げています。その様子を眺めていると、海に吸い込まれそうになってしまいました。いやはや、まさに絶景です。もし本土にこんな景勝地があれば、間違いなく周囲にお土産屋さんが林立していることでしょう。


 
灯台へ向かう途中の道には、七つ山海岸を見張らせる素晴らしい絶景ポイントがありました。海をよく観察していれば、しばしばカメを肉眼で発見できるそうですが、探し方が悪かったのか、あるいはこの時は本当にいなかったのか、残念ながらカメを見つけることはできませんでした。


 
七つ山海岸には地図に載っていないキャンプ場があります。実際に立ち寄ってみると、ここは海水浴場としても使われていたのか、シャワー室やトイレまで設けられているのですが、外観から推測するにあまり築年数は経っていないように思われますが、窓は完全に破れており、室内はヤギに侵入されて糞だらけになり、すっかり荒廃していました。地図から消され、荒廃状態も放置されているということは、村はここを実質的には放棄したのでしょうね。もったいない…。でも、もし整備したところで、島外からのアクセスが悪くて観光客の絶対数が少ないこの島では、利用客が増える可能性はかなり低いでしょうから、放棄も仕方がないのかもしれません(というか、はじめから造らなければいいのに…と思ってしまいます)。



中之島滞在中は、時折シャワーみたいな雨は降ってきたものの、ほとんどは天気に恵まれ、ひたすら歩いた日には幸いにも灼熱の日光を遮る雲が上空にかかってくれたので、思いのほか体力のロスを気にせず散策することができました。

次は平島へ向かいます。
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トカラ列島 中之島を逍遥 (その1)

2012年08月24日 | 鹿児島県
※今回の記事はトカラ列島・中之島を散策した旅行記です。記事中の一部に温泉が登場しますが、いつものような温泉に関するレポートではありませんので、あしからず。



トカラの島で最も大きく、中心的な役割を果たしている中之島を、フェリーの甲板の上から撮影。


 
2009年の皆既日食の際には多くの観光客が訪れたらしく、着岸中のフェリーから港を見下ろすと、その際に貼りつけられたステッカーが目に飛び込んできました。独特のフォントのおかげでよく目立っていますが、強い風雨に晒されているためか、一部が剥がれかかっています。


●東区から西区の海岸沿い
 
中之島で宿泊したのは「大喜旅館」さん。旅館といっても民宿をひとまわり大きくしたような感じですが、食堂は広く、客室数も他島の民宿より多く設けられています。トイレや洗面台は共用で、お風呂は外湯を利用しますが、建物自体は最近改修されたらしく、地デジテレビとエアコンが完備されたお部屋はとっても綺麗でした。


 
宿の前にはたくさんのネコがたむろしていました。海岸の集落にはネコが良く似合います。都会と違って、この島のネコ達は逞しく、某日の朝に宿から外出しようとしたところ、勝手口の前には食いちぎられて半身になった鼠の死体が転がっていました。



宿の隣は郵便局。かつてはここに十島村の役場があったそうです(現在は鹿児島市内へ移転しており、島に役場の本庁は無い)。


 
郵便局からフェリー埠頭方面へ進むと、八幡神社と称する神社の鳥居が立っており、その傍には足湯と思しきお湯の槽があって、湯面からはうっすらと湯気が上っていました。


 
またその傍らには温泉の熱を使った温泉蒸しの跡が残っていましたが、案内看板は山の斜面に倒されており、また蒸し器に温泉熱は行き届いておらず、この温泉蒸しが使われている形跡はありませんでした。


 
こちらはコミュニティーセンター(役場の出張所)。ここでフェリーの切符を購入するので、旅行者は必ず訪問する施設です。



出張所の敷地内には「汽船も亦道路なり」という碑文が刻まれた石碑が立っています。人口や貨物量が少ないトカラの島々は、民間の船舶会社が定期航路を開設しようとしなかったため、以前から公営による定期航路が求められ、当時の村長である長文園彰など関係者の尽力の結果、念願かなって昭和8年4月に「としま丸」が就航しました。絶海の孤島にとって航路は必要不可欠の交通インフラですが、だからこそ行政が懸命に守っていかねばならないという熱意がこの碑文から伝わってくるようであり、その当時の事情は現代でも全く変わっていません。



さらにフェリーの港の方へ進むと、山側にアイボリー色の外壁の頑丈そうな建物が建っていました。これは西区住民生活センターです。


 
西区住民生活センターの傍には、島唯一のお店である「永田商店」があり(営業時間は限定的)、自販機も設置されています。


 
また西区住民生活センターの斜前の防波堤沿いには、集落の共同浴場である「西区温泉」が、道路や防波堤に囲まれて埋もれるように存在しています(委細はこちらの記事を参照)。


 
海沿いの道にはバナナがたくさん生えており、花を咲かせるとともに青い実をたくさん実らせていました。


 
建設会社の事務所と並んで建つ小さな小屋が「天泊温泉」


 
漁港を過ぎ、海沿いの道をどんどん進むと、そのどん詰まりには発電所、そしてセメントプラントがありました。


●西区

セメントプラントからコミュニティーセンターまで一旦戻り、そこから坂を上って西区の集落へ。
細い路地に沿って古い平屋の民家が密集しており、南国らしい石垣やバナナの緑が、島ならではの独特な光景を形成していました。


 
西区の集落には、気根がカーテンのように美しく垂れ下がっているガジュマルの大樹が、あちこちで見られました。


 
大樹から何本も伸びている枝々は集落の家屋の上を覆っており、家々を厳しい日光から守っているかのようです。


 
ガジュマルの写真を撮っていると、この民家のおばあちゃんが私に話しかけてきました。数年前にご主人を亡くし、ずっと一人暮らしで話し相手が欲しかったみたいです。もう還暦を迎える娘さんなど親戚縁者は本州各地へ移って暮らしており、先日はその娘さんや親類に招待されて東北・関東・中部を旅していたそうですが、昔は本当に苦労したし、いまでも不便なところはあるけれども、やっぱりこの島が一番良い、とお婆ちゃんはしみじみと語っていました。


●東区
 
次に一旦宿の方へ戻り、更に海岸沿いを南下してゆくと、以前に取り上げた「東区温泉」の前を通過。



「東区温泉」の斜め前には自販機もあるので、湯上りの水分補給にも支障ありません。


 
温泉を通り過ぎて道なりに進み、緩い坂を上がりながらちょっと海岸から離れると、中之島小中学校があります。


 
芝に覆われた広い校庭。体育館の背後には御岳が聳えています。


 
学校から山手の方へ上がると、トカラや沖縄ではおなじみのミズイモの水田が道沿いに点在していました。小さな島ながら意外と水資源は豊富みたいです。


次回に続く…
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トカラ列島 中之島 天泊温泉

2012年08月23日 | 鹿児島県

中之島で最も行ってみたかったのがこの青い扉の小屋です。物置じゃありませんよ。これ、温泉なんです。一応観光パンフレットの地図にも小さく薄くその存在が載っています。トカラを扱った書籍のグラビアで初めてこの温泉を目にした時、いかにもマニア受けしそうな怪しげな外観にすっかり心が奪われてしまい、もしトカラを旅する機会があれば是非とも訪問してみたいと希っていたのですが、いざ実際に中之島へ訪れてこの小屋を発見したところで、この施設は建設会社が保有している作業員専用のお風呂であることを知り、外来者の私は外から眺めるほかないのだろうな、と半ば諦観して指をくわえておりました。ところが、ダメ元で宿泊先の宿の方にこの温泉について訊いてみると、今は建設会社の人はこの島から離れており、あそこには誰もいない、鍵は開いているしお湯も溜まっているはずだから、興味があるのなら入ってみたら良いですよ、と希望に満ちた答えを返してくれたのです。というわけで喜び勇んで行ってみることにしました。



周囲を藪に覆われた古い無人の小屋ですから、内部には泥が積もって虫もたくさん棲息しているような惨状を想定していたのですが、意を決してドアを開けてみると、脱衣所は予想を覆して意外にも綺麗な状態が保たれており、天井には湯気抜きみたいな通気口が開いているので外気は入りこんできますが、きちんと防虫網が張られているため虫はほとんどいませんでした。脱衣場の棚の下段には従業員の方のものと思しきお風呂道具が並んでいましたが、使われなくなって少なくとも一か月以上は経っているらしく、いずれもカピカピに乾燥していました。


 
脱衣棚には清掃台帳がくくりつけられており、きちんと当番を決めて管理していたことがわかります。なお台帳の日付は一か月前で終わっていました。棚とは反対側の壁には湯沸かし器の真新しいコントロールスイッチが取り付けられていました。



浴室は薄暗く、壁にあいた防虫網付の明り取りの穴から外の光が入ってくるだけです。でも暫く使われていないとは思えないほどちゃんとしています。室内には二分された浴槽が据えられています。



ちゃんとシャワー付き混合水栓が2基も設置されています。先程の湯沸かし器はこのシャワーで使うのでしょう。



 
湯舟に張られているお湯の温度を測ると、46.1℃とやや高めの数値が表示されましたが、入浴できない温度ではないので、ちょっと安心しました。
洗い場側へ突き出ている湯口にはホースが接続されており、そのホースは主浴槽でお湯を注いでいます。その傍には浴槽の切り欠けがあり、そこからお湯がオーバーフローしているのですが、お湯が流れる床は鮮やかな赤茶色に濃く染まっていました。


 
二分されている浴槽のうち左側の主浴槽には、上述のホースからお湯が供給されているほか、浴槽底の隅にあいた穴からもプクプクと泡を上げながらお湯が湧出していました。つまり足元湧出なんですね。なんて素晴らしいお風呂なんでしょう。純然たる掛け流しであり、湯加減も供述のように46℃とかなり熱めですが、せっかくですから源泉そのままの状態で入浴したいですから(加水するのは悔しいので)、軽く湯もみをしてから加水しないで入浴しました。

お湯は薄ら灰白色っぽい貝汁濁りで、オーバーフローの流路こそ濃い赤茶色に染まっており、浴槽内の側面も同じ色が着色していますが、お湯自体にはそんな色は見られません。でも臭覚面ではその色から連想されるような金気臭は明瞭に感じられ、それと共にミョウバンのような匂いも漂っており、浴室内は逃げ場の無いムンムンとした湯気とこの2種類の匂いが一緒になって充満しており、浴室の戸を開けた途端はその特殊な空気に押し倒されそうにになっちゃいました。味覚面でははっきりとした金気(鉄)味+炭酸味+ミョウバン味+うす塩ダシ味といった感じで、いろんな味覚が混然一体となって舌に伝わり、そして残ってゆきます。他にあまり例を見ない味だったように思います。スベスベとキシキシが混在した浴感で、湯中には滓なのか湯の華なのか、白っぽい浮遊物が舞っていました。



となりの小さい槽は主浴槽から穴を通ってお湯が流れてくるのですが、その量が少ないのか、かなりぬるくなっており、お湯自体もちょっと鈍っているように見受けられました。また主浴槽と違ってお湯に流れがあまりないのか、湯面には白い結晶がたくさん浮いていました。

同じ中之島でも、近所の西区温泉や東区温泉などの白濁した硫黄泉とは明らかに異なる含鉄系の泉質であり、狭い範囲なのに全く違うお湯が自噴しているのですから、温泉を取り巻く自然環境って本当に不思議ですね。雰囲気といいお湯の質といい、温泉マニアならば興奮必死のお風呂だと思います。


泉質不明

鹿児島県鹿児島郡十島村中之島楠木

入浴可能時間不明
従業員用なので料金設定なし
備品類なし

私の好み:★★★
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