前回取り上げた「西区温泉」から海岸沿いの道を南下し、役場の出張所や郵便局など通り過ぎて100メートルほど進んだところに、中之島の共同浴場のひとつである「東区温泉」が、まるで白い屋根を道路に埋めこんでいるかのような姿で佇んでいます。西区温泉と同様に、防波堤が海側へ出っ張った場所に湯小屋が建てられており、防波堤のコンクリ擁壁を上屋の側壁代わりにしています。西区と東区、両浴場は同じような構造をした兄弟みたいなもんですね。近くまで来ると湯屋から硫黄の匂いが漂ってきます。
入口の掲示には、湧出量が少ないことや島民を優先することを理由として、夕方の16時半から18時半は島民専用時間となる旨が告知されていました。また島民専用時間が終わったわずか1~2時間後には清掃時間に突入し、入口には「清掃中」の札が提げられます。このため、外来者がこのお風呂で一日の疲れを癒そうとするならば、18時半から19時(または20時)までの僅かな間を狙うか、清掃後の深夜、または夜の入浴を諦めて午前中からお昼にかけての時間に入るしかありません。尤も、このルールは厳密に守られているわけではなく、比較的融通がききますから、島民時間内であっても地元の人に了承をもらえば問題ないかと思います(実際に私は了承をもらって夕方に利用しました)。
西区と同じく寸志箱が取り付けられており、備え付けの専用封筒に記名の上で1,000円以上納めると、寄付者一覧に名前が掲載されます。きっと今頃(あるいは数か月後)には私の名前も載っていることはず。
東区は奄美からの移民が多く住む集落であるため、奄美の言葉を忘れないようにという願いを込めて、奄美言葉が貼り出されていました。
浴室は脱衣所と一体型であり、これも西区と似たような造作ですね。脱衣所の棚の下段には常連さんのお風呂道具がたくさん並んでいました。集落の共有財産という意識が強いのでしょう、室内はとてもよく整頓されています。また棚の上には扇風機も設置されており、湯上がりにクールダウンしたいときにはとても重宝します。
西区とおなじく上屋は、コンクり擁壁の上に木材の柱と梁、そしてアクリル波板の屋根を載せただけで、一見すると簡単な造りですが、よく観察すると結構頑丈に作られているみたいですよ。
洗い場も西区同様、しっかりとタイルが貼られており、真湯が出るシャワー付き混合水栓が完備されています。なおこちらのカランの数は4基で、西区よりも1基少ないんですね。水栓金具は硫化して真っ黒に変色しています。
山側から湯口が伸びている西区と異なり、東区の湯口は海側から伸びており、その配管の真上のモルタルには成分の析出によるトゲトゲがたくさん発生していました。玄関で書かれていたように湧出量はそれほど多くないようでして、数回このお風呂を利用しましたが、いつも湯口から出てくるお湯の量はトポトポと滴り落ちる程度でした。でも湯使いは完全掛け流しであり、お湯は浴槽の切り欠けから排出されて海へと流れてゆきます。
湯屋の造りと同様、お湯の質も西区温泉と似ており、硫黄感が強い白濁のお湯なのですが、匂いも味も東区の方が断然濃く、砂消しゴムと卵黄を足して2で割ったような硫黄味+塩味+石膏味がそれぞれはっきり感じられ、上述のように硫黄臭は道路まで漂ってゆくほど強くはっきりとしています。またお湯のトロミもこちらのほうが濃く感じられました。白濁する程度は日によって異なり、左右の画像で比較すれば一目瞭然ですが、青白く濃く濁っている日もあれば(画像左(上))、底のタイルの目地まではっきり見えちゃうほど透明度を有する日もありました(画像右(下))。
寄付者の名札の数を比較すると、西区より東区の方が圧倒的に多く、そんな事情を反映しているのか、西区では夕方でも一人占めして利用できる機会が多かったにもかかわらず、東区ではかならず先客や後客がいらっしゃり、日によっては室内に5人近い利用者がいたこともありました。また先客がたっぷり加水するために、東区の温泉はいつもぬるめでした。お湯は濃いけど利用者も多い…。それが東区温泉の特徴なのかもしれません。
斜め前には自販機ありますので、湯上がりにどうぞ。長い暖簾ががぶらさがっているので、初めて見た時は「なぜこんなところにエロ本自販機があるのか?」と勘違いしちゃいました。
中之島4号
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉(硫化水素型) 66.1℃ pH5.9 溶存物質5574.5mg/kg 成分総計5724.2mg/kg
Na+:1276mg(60.84mval%), Mg++:149.7mg(13.50mval%), Ca++:423.3mg(23.15mval%),
Cl-:1895mg(53.45mval%), SO4--:1326mg(27.61mval%), S2O3--:5.9mg(0.11mval%), HS-:1.6mg(0.05mval%) ,
H2SiO3:79.8mg, CO2:129.0mg, H2S:20.7mg,
鹿児島県鹿児島郡十島村中之島ゲロウ132 地図
24時間入浴可能(ただし16:30~18:30は島民専用、4~9月は20時頃から、10月~3月は19時頃から清掃時間です)
寸志
備品類なし
私の好み:★★★