文化逍遥。

良質な文化の紹介。

わたしのレコード棚―日本のフォーク、西岡恭蔵

2011年04月01日 | わたしのレコード棚
 気温が上がってきて計画停電も一息ついたので、『わたしのレコード棚』を再開することにした。
70年代のフォークブームの中で多くの「フォークシンガー」が現れ消えていったが、ブームに乗っただけのものも多かったように思う。その中で記憶にとどめて置きたいと思うのが西岡恭蔵のアルバム『ディランにて』である。オリジナルリリースは1972年。

Nisiokakyouzou
 西岡は、音楽シーンの中では目立たない存在だったが作詞・作曲にすぐれ、特にその詞はのちのミュージシャンに与えた影響は大きかったし、詩人としても評価されるべき人だったと思う。ただ歌い方はぶっきらぼうなところがあり(個人的にはそれも好きなのだが)、あまりうまいとは言えなかった。しかし、彼の参加したグループ[ザ、ディラン](西岡恭蔵・大塚まさじ・永井よう)では大塚まさじがヴォーカルを受け持っており、別の意味で表現力が豊かになった。ちなみに「ディラン」とは大塚まさじが大阪市に開いた喫茶店の名。
 2/26付朝日新聞の土曜版beで彼の『プカプカ』が取り上げられたので読んだ人もいるかもしれないが、わたしも大学の頃学生会館で酒を飲んで『プカプカ』を良く歌った。それゆえ、1999年4月に西岡が50歳で自殺した時には少なからずショックを受けたものだった。原因は知る由もないが、喪失感の中に居たことだけは確かだろう。多くのミュージシャンが、「自分の音楽は必要とされていない」という孤立と憂愁の中で苦しむことになるが、特に時代の要請に乗った形で一度は「売れた」人にその傾向が大きいようだ。わたしなどは、売れたことも認められたことも無いので「まぁ、こんなもんだろう」で済ましてしまうが、一度注目を浴びるとそれを失った時には喪失感が強いのだろう。「売れようが、売れまいが、やりたいことをやってりゃいいんだ」、といったある意味アマチュア精神に近いものも大切なのかもしれない。

 次回からは、いよいよブルースに行く予定。地域とか年代順とかではなく、自分が影響を受けた人から一人ずつ紹介していきたいと思っている。延々と続くのでいつ終わるかもわからないが、興味のある人はお付き合いください。


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