桜井敏雄(1909~1996)先生のステージには2度ほど接したことがある。最初は1991年の9月、浅草寺裏の浅草5656(ゴロゴロ)会館で敬老の日に地元紙が主催した催しでのことだった。80歳を過ぎてもまだまだお元気で、ステージ上を大股で背筋を伸ばして歩いておられた。声の張りもあって、演歌師の真骨頂を聞かせてくれた。その数年後にも両国の江戸博物館のホ-ルで聞くことが出来たが、残念なことにわたしが聞いたのはそれが最後となった。
LPは、’82年に浅草木馬亭で行われた「第5回オッペケコンサート」のもようを収録したもの。出演は他に、金子潔(故人)、太田操(故人)、なぎら健壱、の各氏。今では単なる流行歌となった演歌以前の、硬骨漢が時代を風刺して歌っていた頃の雰囲気を今に伝えてくれる。