10月9日、映画監督アンジェイ・ワイダ氏が肺不全により亡くなった。90歳だった。
わたしの観た同監督作品を年代順に並べてみる。括弧内は制作年。
「地下水道 Kanał」 (1957年)
「灰とダイヤモンド Popioł i diament」 (1958年)
「大理石の男 Człowiek z marmuru 」(1977年)
「悪霊 Les possédes」 (1988年)
「カティンの森 Katyń」 (2007年)
「ワレサ 連帯の男 Walesa. Czlowiek z Nadziei 」(2013年)
どれも優れた作品だが、最も心に残っているのは「悪霊」だ。ドストエフスキーの原作だが、わたしのような文学部出身者はどうしても、言葉を重んずる傾向にある。ましてや、原作があまりに文学史上大きな作品で、観る前にすでに読んでいる場合はセリフばかりが気になるものなのだ。が、この映画は原作の言葉をかなり忠実に使っているだけでなく、映像も大変優れたものだった。
さらには、アンジェイ・ムラクチク原作の「カティンの森 」。ワイダ監督のライフワークとも言える作品だろう。ポーランドのみならず、ヨーロッパ、あるいは世界の、あるいは人の心の暗部を描いた映画史上に残る作品といえる。
集英社文庫の『カティンの森』。
言葉の真の意味で「文化を担える人」を世界は失った。合掌。