文化逍遥。

良質な文化の紹介。

わたしのレコード棚―ブルース34、Clifford Gibson.

2017年04月02日 | わたしのレコード棚
 ブルース・ギターの歴史を語る上で、目立たぬためか見落とされやすいが、けっして外せない人もいる。クリフォード・ギブソン(Clifford Gibson)もそんな一人と云えるだろう。単音を絶妙なタイミングでチョーキングしつつ、低音と高音を巧みにからませてゆく奏法は、簡単なようで深いところでの修得は困難だ。わたしなどは、思わず「なんてうまさだ」と唸ってしまう。それが、超絶技巧などとはほど遠い、シンプルな演奏であるにもかかわらずだ。地味と言えば地味だが、この人の存在はおそらくギターリストに語り継がれてゆく気がする。また、そうあって欲しいものだ。生まれたのは1901年ケンタッキー州ルーイビル(Louisville)といわれている。その後1920年代にセントルイスに出て、そこで演奏活動を続けている中で録音する機会を得たらしい。このブログの「レコード棚―ブルース33」で紹介したエド・ベルの他に、ピアニストのルーズベルト・サイクスやヒルビリーの人気者ジミー・ロジャース(白人)などとも共演し、渋い音を聞かせてくれている。個人的な思い込みだが、リロイ・カーのピアノのバックで単音奏法のギターをつけたスクラッパー・ブラックウェルは、クリフォード・ギブソンの影響を強く受けたような気がする。



 YazooのLP、L-1027。1929年の録音14曲を収録。この人が録音できたのは、1929年から1931年頃だけのようで、その後の経済恐慌以降はパーティーや路上などの演奏でチップを得、細々と暮らしていたようだ。亡くなったのは1963年12月21日、セントルイスだった。62年余りの生涯だが、録音できた期間は30歳前後の数年のことで、「再発見」されることもなかったわけだ。歳をとってからの演奏を聴いてみたかった。残念だ。

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