文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2014年パキスタン映画『娘よ』

2017年04月07日 | 映画
 4/3(月)、神保町の岩波ホールにて。



 スマートフォンで連絡を取り合えるようにIT化されても、なお旧習の残る部族間のトラブルが絶えないカラコルム山脈の麓。その解決策として政略結婚の対象にされる10歳の少女。娘を連れ、そこから必死の逃避行を試みる母親。日本で暮らす者には、ちょっと想像もつかないことだが、これは実話を基にした映画だという。どの程度の誇張があるのか、それは不明だが、女性がまるで人身御供になっていて、男たちはそれを当然のこととして平然としている。観ているのが辛い映画でもあった。が、それも映画を通して現実を見直し検証することのひとつの方法ではある。
 監督・脚本・プロデュースはアフィア・ナサニエルという女性で、この作品がデビュー作という。旧習の強く残る地方でのロケは、困難が伴ったと思われるが、山岳地帯の映像は見事だった。母親アッララキ(「神アッラーの加護」という意味という)役は、サミア・ムムターズという舞台出身の女優さんで、この人の表情の作り方は迫力があった。逃避行を助けることになるトラックの運転手役は、モヒブ・ミルザー。共に、パキスタン演劇界を代表する俳優さんらしい。パキスタンの演劇、俳優のレベルの高さが想われた。


 それにしても、岩波ホールは空いていた。平日の昼間、2回目の午後1時からの上映だったが、全体の3割くらいの入りではなかったろうか。以前では考えられないことだ。どうかすると、平日の昼間でも混んでいて入場出来ないこともあったくらいだ。特に、最近は若い人の姿がほとんど見当たらない。近隣には大学なども多く、少し前は授業の合間に映画を観る大学生も多かったように思うが、最近ではそんなこともないのだろうか。DVDやブルーレイで、家庭でもそれなりの映画鑑賞が出来る時代になったが、やはりもっと映画館に足を運び、佳作やDVD化されない作品などをしっかりと鑑賞したいものだ。そういえば、我々の世代が通った飯田橋の佳作座や銀座の並木座が無くなって久しい。岩波ホールでは、制作国大使館などの支援、協賛を得られることもあろうが、それにしてもこれからの映画環境が懸念される。

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