文化逍遥。

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2016年アイルランド映画『ローズの秘密のページ』

2018年02月10日 | 映画
 2/8(木)、千葉劇場にて。原題は『The Secret Scripture』で、直訳すれば「秘密の聖書」。監督・脚本はジム・シュリダン。原作はセバスチャン・バリーの同名小説。若き日のローズ役にルーニー・マーラ。老年のローズ役はヴァネッサ・レッドグレイブ。



 1940年代、第二次世界大戦中の北アイルランド。戦火を逃れ片田舎に住む叔母を頼りに疎開してきた若く美しいローズは、街に来てまもなく「おまえは、どっちだ?」と問われる。問い詰めた男は、北アイルランドの英国からの分離独立を求めるカトリック系組織の者だったのだ。ローズ自身はプロテスタントで、比較的自由な生き方をしてきた。一方でその頃、同じ町に棲み後にローズの恋人になるマイケルは、英国軍の徴募に応じパイロットになる決意をしていた。それは、カトリック系の組織から見れば、裏切り者=敵になることを意味していた。さまざまな時がたち、妊娠したローズは、嫉妬にかられた神父から精神異常者にされ隔離病棟に送られてしまう。さらに、自分の子どもを殺したという罪を着せられるという不当な扱いを受ける中で、聖書に自らの思いをつづり始め40年の歳月が流れ・・・。

 アイルランドは、歴史的にイングランドの支配下にあり、独立を果たしたのは1922年。しかしその時、北部の6州はプロテスタントが多いという理由でイギリス領になってしまう。その後も北アイルランドの独立運動はやまず、武装組織IRAと英国との間で和平合意なされたのは1998年になってのことだった。この映画は、そういった時代背景を基に作られている。後に夫になるマイケルが、独軍機と空中戦になり墜落し、ローズの家の近くにパラシュートで降下する、などということが実際にあるとは考えにくく、ストーリーに無理があるのではないかと思わざるを得ない点もあった。が、全体に良く出来た作品と感じた。

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