文化逍遥。

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2017年フランス・ドイツ・ベルギー映画『マルクス・エンゲルス』

2018年07月14日 | 映画
 7/12(木)、千葉劇場にて。英題は『The Young Karl Marx』。監督・脚本は、ラウル・ペック。今年の春に、岩波ホールで上映されていた作品。スクリーンは、千葉劇場の方が大きくて観やすい。



 1840年代のヨーロッパを舞台に、若き日の理想に燃えるマルクスとエンゲルスを描いた作品。ドイツ語、英語、フランス語が混じる。いかに、根は同じ言語とはいえ、3ヶ国語を使いこなす俳優さんたちは大したもんだ。

 この映画が、どの程度二人の実際の交流、あるいは人物そのものを描ききっているか、それはわからない。しかし、大きな変革期にあるヨーロッパをある程度映像化していることは確かだろう。最後の場面では、ボブ・ディランの『ライク・ア・ローリングストーン』が流れ、レーニンはじめマルクス思想に影響された実在の政治家達の映像が流れる。そのレーニンは、最近旧ソ連がひた隠しにしてきた虐殺行為がグラスノスチ(情報公開)により知られるようになってきた。一説によると、革命後の混乱期に少なくとも2000万人の農民がレーニンにより毒ガスで殺害されたという。旧ソ連は、レーニンを神格化し、社会主義国家の精神的な支柱としたのだ。理想とは、ある意味残酷で、常に不寛容を伴う。映画は、美談に終わっている。が、理想と現実、あるいは不寛容と寛容、その境目をどこに置き物事に対応していくのか、そこを明確にすることがどうしても必要になる。しかし、1970年代以降の「新左翼」と呼ばれた人達は、これを「妥協」と云い、「甘い!」と切り捨てた。わたしも、かつて、そういう言葉を投げかけられた一人だ。この作品とは直接の関係はないが、そんなことを想った。

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