ミシシッピーのスライド奏法を駆使するギタリストを代表する一人ブッカ・ホワイト(Bukka White、本名Booker T Washington White)は、1909年11月ミシシッピー州に生まれ、1977年2月にテネシー州メンフィスで亡くなっている。LPの解説などによると、彼の父親はプロのミュージシャンで、マンドリン、ヴァイオリン、ピアノ、ギター、ドラムス、などをこなしたらしい。後のヴィデオの映像にブッカ・ホワイトもピアノを弾いているものがあるが、幼いころからの家庭環境と音楽的な素養があったのかもしれない。
1930年にメンフィスでヴィクターに初録音をしている。なので、ロバート・ジョンソンよりも6~7年早く、録音期の早い頃にその機会に恵まれたブルースマンの一人と言えるだろう。ただし、その時メンフィスでのヴィクターへの録音14曲の内、発売に至ったのは4曲だけだったらしい。その後の経済恐慌を経て、1937年に再びシカゴで録音。その後、ミシシッピー州パーチマン・ファーム監獄に入る。理由は不明だが、戦前の黒人差別の中で、さしたる理由も無く投獄された黒人も多かったというから、彼もその一人だったのかもしれない。その監獄にいた1939年、アラン・ローマックスが議会図書館の録音の為そこパーチマン・ファーム監獄を訪れ、2曲の録音をした。さらに、監獄を出所した後'40年に録音の機会を得て、ヴォカリオン、オーケーに12曲吹きこんでいる。
その後のフォーク・ブルースが再評価される時代になって1963年に「再発見」され、多くの録音や映像を残している。が、再発見後のものは、聴衆に迎合したようなところが感じられ、音楽的な深みを失っているように感じられる。この人の本質的な良さは、やはり戦前の演奏に残っているようだ。
YAZOOのLP1026。スライド奏法のブルースを集めたオムニバス盤。ジャケットの写真に写っているギタリストが誰かは不詳。1930年初録音のブッカ・ホワイトが、『The Panama Limited』の1曲だけだが聴ける。なお、『RCAブルースの古典』にも同じ曲が入っている。
CBSソニーから出ていたLP、SOPJ96『Parchman Farm』。1937年の2曲と、1940年の12曲を収録。名盤。1940年の収録時には、ビッグ・ビル・ブルーンジーのギターを借りて録音したとLP解説にある。おそらく、リゾネーター・ギターの田舎臭い音質がエンジニアに嫌われたのだろうが、それが返ってブッカ・ホワイトの精神的な深みのようなものを際立たせているように聴こえる。1940年の録音では、ウォシュボード・サムがウォシュボードでバックアップしているが、それも良い雰囲気を醸し出している。
LPジャケット裏面にある写真。ブッカ・ホワイトは、このようにギターを左膝に載せて弾く。クラシックのギタリストに近い構え方だが、ブルース系のギタリストには珍しい。
DOCUMENTレーベルのCD5320。ミシシッピー州パーチマン・ファーム監獄で1939年、アラン・ローマックスが録音した2曲が入っている。この2曲も、ブルースの歴史においては重要な録音で、精神的な深みを感じさせてくれる。
ソニーから出ていたCD7612『Memphis Hot Shot』。1969年の録音で、バンド形式によるもの。悪くはないが、戦前のものと比べると、やはり深みに欠け、寂しい気がする。
今回、この稿を書くにつけ、何曲かの歌詞をネットからダウンロードした。それとLPに付いている聞きとられた歌詞、さらに教則本に載っているものとを比較してみた。マトリックス・ナンバー(原盤番号)や録音データを可能な限り照合して、同じものが聞きとられていることを確認したが、これがけっこう違う。古い録音なので聞きとりにくいのは仕方ないが、それにしてもずいぶん違う。したがって、詞の内容も変ってくる。専門家が聞きとったものとはいえ、完全に信頼できないものなのだと、改めて感じた。
1930年にメンフィスでヴィクターに初録音をしている。なので、ロバート・ジョンソンよりも6~7年早く、録音期の早い頃にその機会に恵まれたブルースマンの一人と言えるだろう。ただし、その時メンフィスでのヴィクターへの録音14曲の内、発売に至ったのは4曲だけだったらしい。その後の経済恐慌を経て、1937年に再びシカゴで録音。その後、ミシシッピー州パーチマン・ファーム監獄に入る。理由は不明だが、戦前の黒人差別の中で、さしたる理由も無く投獄された黒人も多かったというから、彼もその一人だったのかもしれない。その監獄にいた1939年、アラン・ローマックスが議会図書館の録音の為そこパーチマン・ファーム監獄を訪れ、2曲の録音をした。さらに、監獄を出所した後'40年に録音の機会を得て、ヴォカリオン、オーケーに12曲吹きこんでいる。
その後のフォーク・ブルースが再評価される時代になって1963年に「再発見」され、多くの録音や映像を残している。が、再発見後のものは、聴衆に迎合したようなところが感じられ、音楽的な深みを失っているように感じられる。この人の本質的な良さは、やはり戦前の演奏に残っているようだ。
YAZOOのLP1026。スライド奏法のブルースを集めたオムニバス盤。ジャケットの写真に写っているギタリストが誰かは不詳。1930年初録音のブッカ・ホワイトが、『The Panama Limited』の1曲だけだが聴ける。なお、『RCAブルースの古典』にも同じ曲が入っている。
CBSソニーから出ていたLP、SOPJ96『Parchman Farm』。1937年の2曲と、1940年の12曲を収録。名盤。1940年の収録時には、ビッグ・ビル・ブルーンジーのギターを借りて録音したとLP解説にある。おそらく、リゾネーター・ギターの田舎臭い音質がエンジニアに嫌われたのだろうが、それが返ってブッカ・ホワイトの精神的な深みのようなものを際立たせているように聴こえる。1940年の録音では、ウォシュボード・サムがウォシュボードでバックアップしているが、それも良い雰囲気を醸し出している。
LPジャケット裏面にある写真。ブッカ・ホワイトは、このようにギターを左膝に載せて弾く。クラシックのギタリストに近い構え方だが、ブルース系のギタリストには珍しい。
DOCUMENTレーベルのCD5320。ミシシッピー州パーチマン・ファーム監獄で1939年、アラン・ローマックスが録音した2曲が入っている。この2曲も、ブルースの歴史においては重要な録音で、精神的な深みを感じさせてくれる。
ソニーから出ていたCD7612『Memphis Hot Shot』。1969年の録音で、バンド形式によるもの。悪くはないが、戦前のものと比べると、やはり深みに欠け、寂しい気がする。
今回、この稿を書くにつけ、何曲かの歌詞をネットからダウンロードした。それとLPに付いている聞きとられた歌詞、さらに教則本に載っているものとを比較してみた。マトリックス・ナンバー(原盤番号)や録音データを可能な限り照合して、同じものが聞きとられていることを確認したが、これがけっこう違う。古い録音なので聞きとりにくいのは仕方ないが、それにしてもずいぶん違う。したがって、詞の内容も変ってくる。専門家が聞きとったものとはいえ、完全に信頼できないものなのだと、改めて感じた。