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わたしのレコード棚ーブルース92『The Story Of Pre-War Blues (P-VINE2772~75)』

2020年06月22日 | わたしのレコード棚
 日本のP-ヴァインレーベルからこの4枚組CDが発売されたのは1994年。なので、すでに四半世紀が過ぎたことになる。タイトルを直訳すると「戦前ブルースの物語」となろうか。ギターなどでも「pre-war Martin」などという言い方をして「(第二次世界)大戦以前に作られたマーチン(ギター)」を意味する。しかし、すでに若い人にはその「WAR(戦争)」が、どの戦争を意味するかすぐには思い至らない人も多いようだ。「第二次世界大戦」のことなのだが、終戦後すでに75年が経過している。その間、不幸なことに、湾岸戦争など多くの戦争があった。日本では「遠い国のこと」と感じられても、戦争当事国では犠牲者を目の当たりにするわけで、「戦前」と言ってもそれが「第二次世界大戦以前」と単純に考える方が、むしろ、時代の経過と変化を忘却しているのかもしれない。

 さて、それはさておき、このようなブルースの古い録音98曲を収めたオムニバスアルバムが欧米以外で発売されたのは、わたしの知る限り日本だけだ。編集及び解説は中山義雄氏で、確かな音楽的歴史認識に基づいた解説はとても参考になる。現在は、入手が難しくなっているようなのが残念だ。余談だが、中山義雄氏は、一時死亡説が出たりして、そのフェイクニュースを信じた人たちが追悼文を書いたり、あげくに自殺説まで出たりしたという。活動を休止しているので、そのような憶測が出たらしい。スライド奏法のギターも弾けるというし、翻訳家としても良い仕事が出来る人なので、再び元気に活動をしてもらいたいものだ。





 CD解説には、多くの写真や、聞き取られた歌詞も載っている。ただし、対訳はついていない。古いブルースは言葉が豊富なので、欲を言えば、良い訳詩とスラングなどの解説も欲しかった。

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