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わたしのレコード棚ーブルース106 Jaybird Coleman

2020年10月19日 | わたしのレコード棚
 ヴォーカルとハーモニカのジェイバード・コールマン(Jaybird Coleman)は、本名バール・コールマン(Burl Coleman)。1896年5月20日にアラバマ州ゲインズビル(Gainesville)で生まれ、1950年6月28日に同州タスケジー(Tuskegee)で亡くなっている。ハーモニカ演奏者としては、もっとも初期に録音し活躍した人である。一音一音を大切にしたハーモニカとヴォーカルが、素朴さと相まって、当時のアラバマのブルースシーンを彷彿とさせてくれる。


 オーストリアのWOLFレーベルのLP、WSE127。写真は、コールマン。


 同LP裏面。

 1927年アラバマ州バーミンガムでの録音8曲と、1930年アトランタでの2曲を収録。コールマン名での録音は、この10曲で全てらしい。他にも、可能性としてコールマンではないか、ということで挙げられている曲が含まれている。それは、Frank Palmesという名で1929年にシカゴで録音された2曲と、1927年にバーミンガムで録音されたBertha Rossという女性ヴォーカルのバックで演奏しているBessemer Blues Pickersというグループの一員としてハーモニカを吹いているのがコールマンではないか、というもの。
 録音を聴くと、力強いヴォーカルとシンプルなハーモニカだ。資料を当たってみると、この人は単にアラバマの限定された地域で演奏活動をしていたわけではなく、南部をかなり広く回っていた「バーミンガム・ミンストレルズ」の一員としても活躍していたらしい。人を集められる技術と音量を持ち、ある意味ヴォードヴィルの要素を併せ持っていたのかもしれない。そんな風に考えて写真を見ると、きちんとネクタイを締めて、旅回りの芸人らしい笑顔を作っているようにも見える。彼の両親はシェアクロッパー(土地に縛られた農夫)だったと言われているので、「土地」の拘束から逃れるために何でもこなそうとしたのかもしれない。
 上のLP裏面の解説や、複数の資料が指摘しているが、ジェイバード・コールマンはKKK(クー・クラックス・クラン)にも受けが良く、そこでもかなり稼いでいたともいう。KKKというと、白人至上主義の団体で、黒人を排斥して時にリンチするような人達という印象が強いが、日本に紹介されているようなものと実態が異なるのか、一口にKKKと言っても地域により性格が異なるのか。あるいは、公民権運動以前のKKKは、団体そのものの性格も違っていたのかもしれない。さらに、考えたく無いことだが、コールマンの芸の中には白人を喜ばせるものがあったのか。呪縛から逃れるためならそのくらいのことはやるのが芸人のしたたかさだ。今となっては、本当のところは誰にもわからない。

 ジェイバード・コールマンの人気は1940年代初めころには衰え、ブルースシーンから消えてゆく。彼は、1950年に癌で亡くなったという。

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