King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

16ブロック

2006年11月02日 02時17分27秒 | 日々のこと
最近は映画の寿命が短いですね。
見たい映画もすぐに終わっているので、なかなか
見れません。
ゲド戦記は未だにやっています。
昔は、ロードショー館で3ヶ月やり、それが二番館に流れ、地方に
行き、やがて名画座や三番館に二本立てで帰ってくるという何度も
楽しめたり、見逃しても追っかけて見れたり、映画は今のように息が
短くなかったのです。今やロードショーが全国一斉に3週間しかやらない
で、後はDVDがすぐに発売になるという恐ろしいサイクルです。

そして一番館も2番館もなく、小さいスクリーンのシネコンばかりです。
かくいう私も新宿や銀座にロードショーを見に行くということがなくなり
ました。最近、週刊誌や新聞などで評判の高い映画がみんなつまら
ないという事がよくあります。今回映画の日に『16ブロック』を見ましたが、
これは週刊誌の批評も星3個であまり評価されていませんでした。
客も各列3人位の入りです。

テレビや新聞でもあまり宣伝されていない感じでした。しかし、私は
これは見なくてはいけないというものを感じていました。それは、ニューヨーク
が舞台ということと、それも街を16ブロック囚人を連れて行くだけで、
警察全体が敵になり、最悪の日となったというキャッチです。
色々連想させるものがあり、今のニューヨークが見れるという興味も
強く働きました。
物語の最初から伏線があり、囚人がいうなぞなぞもそうです。

嵐の日に車を運転していたらバス停に、瀕死の老婆と親友とタイプの女が
いた。車に乗せられるのはひとりだけ。あなたは誰を乗せるか。

囚人は、だれかれとなく会う人にこのなぞなぞを出していきます。
答えで性格が解ると言います。そして、彼が最初から大事に持つ
ノート。これらの仕込がやがていいタイミングでふたを開けて、その
答えと見ている側の裏切りと絶妙な見せ方で物語が進みます。

バスをジャックし人質にとった時に、囚人をまぎれて逃がすという
手を見て、このまま逃げたら陳腐な映画だなあと感じましたが、
それも裏切ってくれます。地下鉄での追跡やチャイナタウンでの
銃撃戦などどこかで見た映画のシーンを思い出させて皆にくい
演出に見えます。酒場にこもった最初の方でも助けに来た奴が
デヴィッド・モースで彼はグリーンマイル以外全て悪役で、ゲッタウェイ
以来出れば悪役と相場が決まっています。だから、次の展開も
読めてしまいます。

悪を徹底的に叩きのめす勧善懲悪のアクション映画でなく、じわり
心に響く映画です。少し勇気を持てば、自分も変われるかもしれない
という映画です。まあアル中の刑事なんて実際はいないんでしょうが。
それと一番気になったのは、2年間務所に入ってというのはいいのですが
警官が務所に入るのが一番つらいとよく言います。それに、仲間を売った
奴が一番刑務所でも嫌われて、タバコや金で簡単に人を殺す奴も
いるといいます。彼はどんな刑務所に行ったのか。本当に更生なんか
出来るのか。刑務所小説が好きな私としては、悪の巣窟に行って
無事なわけないと少しはなじらんだのです。でも最後では泣けました。

囚人が地下鉄に乗る時に、カードを貸してくれと何人もの人にたのんで
断られて、警官に呼び止められて捕まっちゃうのかと思うとゲートを通して
くれるのですが、これがなんかぐっと来てしまいます。これもひとつの伏線です。
再三いわれる吉兆が積み重なり、やがてと思わせます。しかし、その
サインもやがて囚人がアル中で足が悪い腹ぼての中年にかけてみようと
信じさせるものが物語の芯であり、リアルフレンドとしてバスに戻るところが
この物語の全てです。人を信じること。そして、勇気をもてば変われると
いうこと。と、しっかりとテーマを持っている映画でそれに乗ってみようとお客も
信じさせるのが監督の手腕であるわけです。

実際のニューヨークは、もっとホームレスやきたないものが沢山あると
思います。ニューヨークの地下鉄はカードで乗るんだと解ったのは
収穫かもしれません。私がロサンゼルスで乗ったときには、改札はなく
ゲートもありませんでした。駅員すら見かけませんでした。切符も全て
自動販売機で、切符を買っているとホームレスやたかりが来て金を
要求します。レストランの駐車場でも路上でも歩道でもどこでもホームレス
はいて、金を要求します。そんな国なんです。それが映画では出て
来ません。それでも一度ニューヨークは行ってもいいかなとこの映画を見て
思いました。
コメント
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