信じられないような出来事がベースに映画化とかドラマ化され
映像化されることは珍しくありません。このアマゾンで見た
『Fargo』は長い間ウオッチリストに入っていたものの見ないでいたシリーズです。
24を見つくしてよいよ見るものがなくなり、アマゾンプライムも解約かと思いだした
時になんとドコモの契約でプライムが一年延長になりそれならばと見始めたのが
この『Fargo』でした。アリゾナの何もない田舎町に起こる連続殺人事件ですが、
なぜアリゾナなのか、何の説明もないままただ冒頭にこれは真実の話で、ただ生存者の希望で
名前を変えておりその他は死者の尊敬を込め忠実に再現したというテロップが流れます。
しかし、ドラマはトンデモ話であり、本当に起きたのか、そんな殺人者がいるのかと
いくら田舎の警察だからそんなバカばかりで悪を野放しにして、真実が暴かれないと
いうのもおかしく見ているものをいらいらといつ正義がなされるのかという気持ちにされ
悪に染まる主人公に同調していいのか、ただひとり真実が見えている副所長の存在が
唯一の頼りなのですが、捜査関係者とデートしたり、見た目がいかにもアメリカ人の
肥満体形だったりヒロインとしての要素が薄いのです。しかし、事件はこの副所長の
捜査で真実に近づき悪は駆逐されるという結末です。
このドラマはコーエン兄弟による作品ということで、スーパー殺し屋が例によって
出てきます。その殺し屋のポリシーとか閑念とか台詞のはしばしに文明論とか社会とか
メッセージが現れるのですが、暴力のなしてきた役割とか米国の社会とか銃によって
築かれてきた物を考えないわけにはいきません。
米大統領選のたびに銃が大量に売れるという事実や銃を所持する権利が憲法にある国と
いうのも実に独特です。
つまり、最初に出てくるこれは真実の物語というのは実際に起きた犯罪を忠実に描いた
という意味ではないことが見ているとわかります。
何しろシリーズにはUFOが現れたり、アポロの月面着陸はスタジオでの撮影だったという
シーンなどがでてきます。
そしてシーズン3ではそのお決まりのテロップにも変化があり、これは真実の物語であるの
trueが消えて物語であるという告白のような表示が出ます。
そこで思い出すのが園子温監督の『冷たい熱帯魚』です。これは実際に起きた埼玉愛犬家殺人事件
をベースにしており、その犯人のでんでんの台詞でかかわった親子に施す人生訓や言動がこの連続
殺人者のものとタブるのです。
暴力で解決しようとする者の共通の思考なのか世の中に対する思考なのか判断付きませんが、
現実問題に対処したときにそのような答えになるのかという妙な共通項のようなものとして
認識しました。
ですが、要はブラックユーモアであり、一つの文明批評なのかもしれません。シーズンスリーでは
悪の犯罪組織の男が持ち出す挿話に日本の小野田少尉のことも出てきます。真の戦士としてアメリカが
まいたビラを認めず30年間ジャングルで戦った戦士だといいます。ところどころ戦争についての話や
登場人物が自分はベトナムで戦った戦士だといったり、毎夜自分が撃ち殺した兵士の顔が出てくるなど
戦争にまつわるエピソードがどのシーズンにも出てきます。アメリカがどの時代でもどこかで戦争をしていて
それが銃を使う大量殺人事件につながっているのを訴えるかのような台詞ですが、それだけではないよう
です。一つ一つのエピソードや台詞が前のシーズンの登場人物とつながっていることの発見やそれが第一
シーズンが2006年でシーズン2が1978年ととんでもなく離れているけれど実はシーズン1のあの人物と
この人が同じ人と解るとぐっと物語の真実の話というのが信じてみようかという気にさせるのでした。
それでもまっとうに暮らしていてまっとうに日々努力する人にはかなわないという気にもなるそんな
結末なドラマで結局民衆の幻想が語られるそんな話なのかもしれません。
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