金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

163:土屋賢二 『妻と罰』

2012-12-30 22:47:38 | 12 本の感想
土屋賢二『妻と罰』(文藝春秋)
★★★☆☆

「週刊文春」連載のエッセイをまとめたもの。
かなり前に『ソクラテスの口説き方』の感想を書いたときも
似たようなことを書いているが、
一冊の本として続けて読むときついね……。
思わず吹き出してしまうところもあったのだけど、
これは週刊で読むからその都度おもしろいのであって、
続けて読むと飽きてきてしまう。
気分転換にたまにちょこちょこっと読むといいのかも。


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162:茂木健一郎・田谷文彦 『脳とコンピュータはどう違うか』

2012-12-30 22:30:45 | 12 本の感想
茂木健一郎・田谷文彦『脳とコンピュータはどう違うか―究極のコンピュータは意識をもつか』(講談社ブルーバックス)

タイトル通り、脳とコンピューターの違いを論点として、
これまでにわかっている脳の仕組みとコンピューターの仕組みの違い、
行われた実験について述べられている。
コンピューターについての説明の部分では、
「これは説明しなくてもわかってるよね」といった感じで
意味の分からない言葉がどんどん出てくるので、
ド素人のわたしには、正直なところさっぱり理解できなかった。
しかし、
「コンピューターは脳の機能を請け負うものとして作られた」
という基本の基本な前提にはっとした。

求めていた内容とは全然ちがったので、これはわたしのセレクトミス。
好みかどうかという問題ではないので★はなし。


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161:矢野健太郎 『すばらしい数学者たち』

2012-12-30 22:20:25 | 12 本の感想
矢野健太郎『すばらしい数学者たち』(新潮文庫)
★★★☆☆

数学者たちの発見とそれにまつわるエピソード、
人物像を表す出来事を紹介したもの。
数式が出てきて難しいところも多いのだけど、
文章自体は平易なので小中学生でも読めそう。
取り上げている人物が多いので、
一人ひとりに割かれたページは少なめ。
人物像にまつわる、もう少しディープな話を期待してたので
そこはあてが外れたけど、公式だけを与えられる教科書とは違い、
どのようにしてそれが発見されたのかということを
ストーリーの形で教えてくれるので、
特に中高生が数学の知識を補強するためにいいかも。
堅苦しさのない文章なので、「勉強」という目的を離れても
楽しめそうだし。


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160:天野祐吉 『広告みたいな話』

2012-12-26 08:54:59 | 12 本の感想
天野祐吉『広告みたいな話』(新潮文庫)
★★★☆☆

仕事関係で読んだエッセイ。
この人、『広告批評』の人だったのか……。
『広告批評』という雑誌の存在は知っていたけれど、
著者についてはいくつかの断片的な文章を読んだことしかなく、
雑誌と結び付けて考えたことがなかったので驚いた。
単行本の初版が1987年ということで、もう現在の社会は
ここに書かれた社会の有様とはずいぶん変わってしまっている。
「今」を切り取った内容なので、
取り上げられた個々の事物については
「はあ、当時はこうだったのね」
という感想になってしまうのだが、
世相を反映したものとして取り上げられた事物が
すべてテレビの影響を受けて起こったことである、というのが
おもしろかった。
今はもうテレビではなくてネットの時代だけれど、
人々の物事の捉え方がメディアの在り方によって変化するというのは
現在にも通じることだものね。


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159:土屋賢二 『ツチヤ教授の哲学講義』

2012-12-25 14:29:39 | 12 本の感想
土屋賢二『ツチヤ教授の哲学講義』(岩波書店)
★★★★☆

忙しい時期に入って、本は読んでいるけれど
感想が追いつかない日々。

著者の本をわたしは1冊しか読んだことがなく、
「おもしろいエッセイを書く人」というイメージしか
なかったのだけど、これは哲学の講義をまとめたもので
冗談は前書きにちょこっとあるだけ。
まじめな語り口も決して退屈ではなく、
哲学というものの一端を初めて理解できた!
……ような気がする。

哲学というと「自分とは何か」「人生とは何か」という
答えの出ない崇高な問いを考え続ける学問だと
勝手に思い込んでいたのだけど、
具体的にどういう方法で人々がどんな考え方をしてきたのか、
ほとんど知らなかったので、驚きも多かった。
学生からの質問とそれに対する解答も盛り込まれているのだけど、
学生さんたち、賢いのね……。
わたしはきっとその場にいても話を理解するのに時間がかかり、
その場で疑問点など出せないと思うわ。
「われ思う、ゆえにわれあり」というデカルトの考えが
言語規則に基づいたものであり、それは事実や真理ではなく
「言語の規則はこうなっている」という主張にほかならない、
という説明にはなんだか呆然としてしまった。
物理法則や数学の定義なんかだと他人の考えの誤りを発見して
否定することはできるけれど、哲学の考えを否定することは
できないような気がしていたから。

本当に、世の中には賢い人がたくさんいて、
歴史の中にたまに出現するそういう人たちが
スプリングボードになって学問や社会は発展していくのだなあ……
と改めて思った。


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158:齋藤孝 『友だちいないと不安だ症候群につける薬』

2012-12-19 19:53:15 | 12 本の感想
齋藤孝『友だちいないと不安だ症候群につける薬』(角川文庫)
★★★★☆

仕事で読んだ本。
絶版なのが残念! 中学生に読ませたい、いい本なのに。

たくさん「友だち」がいることがいいことじゃない、
友だちとの適切な距離をとることができるのが
「友だち力」が高いということだ……というのを前提に、
友人関係が切実な問題となる中学生をメインの読者層に想定して
友だち関係やいじめについて語った本。
特に友人関係が重要だった学生時代、
「友だちがたくさんいる」ことを自慢にしているけれど
常にその関係を維持するために心をすり減らしたり
相手の言動について必要以上に深読みして悩んだりしている人って
確かにいたなあ……と思い出した。

友だちとは好きなものを挟んで三角の関係にある、
共通の好きなものがないとその人の人格そのものと
付き合わなければならない……というのに納得。
そして、女性はつきあった男性の世界を
自分のものとして取り入れられるけど、
男性はそうではないことが多い、というのも
身近な事例を思い出して、確かにそうだなと思った。

「力のあるテキスト」の話には、仕事柄はっとした。


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157:中島義道 『ひとを愛することができない―マイナスのナルシスの告白』

2012-12-12 10:17:46 | 12 本の感想
中島義道『ひとを愛することができない―マイナスのナルシスの告白』(角川文庫)
★★★☆☆

気ぜわしいけど何か読みたいという時だったので、
中島先生の偏屈節で気を晴らそう!と思ったのだが……
家族に関心のない父と、その父に愛を求めながら
それが果たされず亡くなった母の関係を中心に、
自身の「愛」について述べたエッセイで、
『私の嫌いな10の人びと』『哲学者というならず者がいる』とは
タイプが違ったな。
面白く読んだけど。
別にウケねらいじゃなかったと思うんだけど、
著者のモテモテ伝説のところで笑ってしまった。


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156:村上龍 『五分後の世界』

2012-12-11 10:56:04 | 12 本の感想
村上龍『五分後の世界』(幻冬舎文庫)
★★★★★

気がついたときには、見知らぬ場所を歩かされていた小田切。
彼が紛れ込んだのは、もといた世界より5分進んだ日本。
本土決戦後、日本は連合国によって分割統治され、
人口の激減した日本人は、地下に潜み、
ゲリラ兵として連合国と戦っていた。
地下の世界で、生き延びることだけを考えざるえない状況に追い込まれ、
小田切は誇りを持って戦う兵士たちと、「5分後の日本」のあり方を見て、
もといた世界とのギャップを目の当たりにする。

**********************************

おもしろかった!!
『半島を出よ』もおもしろかったけど、
苦手要素が少なかったのでこっちの方が好き。
誇りを失った現代日本および日本人に対するアンチテーゼとして
パラレルワールドの日本が描かれていて、
荒唐無稽な設定ながら引き込まれる。
決してユートピアではなく、差別もあり、限界もあり、
けれども人々は何か目指すもののために生きている。
そういう国の姿に魅力を感じてしまうのであった。

近現代史が好きな人は特におもしろく感じるんじゃないかな。
おすすめ!


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155:上大岡トメ 『トメさんちの前向きごはん』

2012-11-29 08:40:04 | 12 本の感想
上大岡トメ『トメさんちの前向きごはん(メディアファクトリー)
★★★☆☆

イラストとエッセイを組み合わせた本。
自炊のモチベーションアップになるかと思って。
いろんな本で書かれていることをすでに読んでしまったので
料理をしよう!とモチベーションが上がることがなかったのだけど、
気軽に読めるので気分転換にはいい。

それにしても、アマゾンのこの本のレビューが
あまりにも独善的でびっくりした。
ブログを見ていても、
「料理できなくて(料理嫌いで)困ってまーす」
という主婦の人は結構いると思うんだけどなあ。


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154:内田樹 『街場のアメリカ論』

2012-11-28 08:51:27 | 12 本の感想
内田樹『街場のアメリカ論』(文春文庫)
★★★★★

日米関係、ファースト・フード、アメリカン・コミック、
統治システム、戦争経験、児童虐待、シリアル・キラー、
身体と性、キリスト教、社会関係資本、裁判をテーマにした
11章からなるアメリカ論。
読むのに肩が凝りそうだなあ……と思ってたんだけど、
読み始めたら止まらない。
深夜で眠いのを我慢して、最後まで読んでしまった。
非常におもしろかったので、おすすめ!

首相の靖国参拝になぜアメリカが抗議しないのか、
太平洋戦争中、インドシナ半島で日仏両軍の間に
戦闘が起こらなかったのはなぜか、
「なるほど」と思う内容が満載。
アメリカ映画やアニメの子供がかわいくないのは、
「子供嫌い」の伝統のためだったのか。
アメリカの子どものミスコンも、写真を見ると、
子どもらしい純真さ、かわいらしさを売りにした子より、
大人の女性の縮小版みたいなけばけばしい子が多いよね。
「子ども」に対するイメージが全然違うんだろうな。

その他、「なるほど」と思ったところ。

・「有事法制」はアメリカあるいはアメリカの許諾を得た外国が
 日本領内に侵略してくる可能性を勘定に入れていない。
 日本にとっての真の軍事的危機は「ありえない」ものとされている。

・アメリカン・コミックで繰り返し描かれるヒーローの苦しみや孤独は
 国際関係におけるアメリカのセルフ・イメージ

・アメリカは「自分の運命を自分で決める」という生き方を標準として定めた。
 アメリカのような国はアメリカ以前には存在しなかった。

・アメリカの統治システムは、愚鈍で無能な統治者が社会にもたらす
 ネガティブな効果を最小化するように制度化されている。
 アメリカは理想の国をすでに達成した状態からスタートしたため。

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