金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

236:奥田英朗 『イン・ザ・プール』

2006-10-30 17:33:19 | 06 本の感想
奥田英朗『イン・ザ・プール』(文藝春秋)
★★★★☆

岐山高校出身なんだよーってことで、続編の『空中ブランコ』を
以前母が読んでいたような……?

精神科医師・伊良部と、彼のもとを訪れる人々を描く短編集。
不定愁訴、持続勃起症、被害妄想などなど、
さまざまな症状を抱えた患者たちが、
はちゃめちゃな変人・伊良部の言動にあきれつつ、
治療かどうかもわからないコミュニケーションの末に
なぜか立ち直ってしまう。

いやー、笑わせてもらいました。
伊良部の変人ぶりと患者たちのツッコミがおかしい。
コメディなんだけど、風刺も含まれていて楽しめました。
文庫落ちしているので、軽くてもしっかりした作りのものが
読みたいというときにおすすめ。

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235:井上荒野 『しかたのない水』

2006-10-30 10:23:26 | 06 本の感想
井上荒野『しかたのない水』(新潮社)
★★★☆☆

『誰よりも美しい妻』で、わたしの中ではどかーんとヒットした感のある
著者ですが、この本でも底力を見たような気分。
フィットネスクラブに通う男女6人の日常と恋を描く連作短編集。

「運動靴と処女小説」では、女が話を切り出したあたりから
だまされてるよ~とハラハラ。
新しい仕事と恋に舞い上がり、現実を思い知らされる中年男性の
悲しみに気がめいる。
「クラプトンと骨壷」はどんでん返しに驚き。
「フラメンコと別の名前」では全編にわたって触れられていた
フラメンコ教室インストラクターの行方についての謎が
思いがけないかたちで明かされる。

好み度は低かったけれども、一編一編、小説としてのつくりを
楽しめる一冊。

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234:豊島ミホ 『日傘のお兄さん』

2006-10-30 10:00:34 | 06 本の感想
豊島ミホ『日傘のお兄さん』(新潮社)
★★★☆☆

「女による女のためのR-18文学賞」でデビューした著者の
第二短編集。
「バイバイラジオスター」「すこやかなのぞみ」「あわになる」
「日傘のお兄さん」「猫のように」の五編を収録。

最後の「猫のように」だけは中年男性を主人公にしていて異色なのだけど、
全体的の印象としては、平易な言葉で女の子の素直な心情を描いていて、
可愛らしい。
「バイバイラジオスター」と「すこやかなのぞみ」が好き。
表題作の「日傘のお兄さん」は、個人的に美少年が好きじゃないのと
核となる設定に苦手意識が働いたのとで、
あまり感情移入できなかったのだけれど、
典型的な「報われないいい人」キャラの宮川くんにラブ

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233:大泉芽衣子 『夜明けの音が聞こえる』

2006-10-28 21:50:08 | 06 本の感想
大泉芽衣子 『夜明けの音が聞こえる』(集英社)
★★★☆☆

『だらしな日記』で紹介されていたもの。
すばる文学賞受賞作。

自ら言葉を封じているうちに本当に声が出なくなってしまった
高校生の暦彦。
「地球の回る音」までが聞こえはじめ、精神的に追い詰められていたところ、
治療のために犬吠のホテルで働きはじめることになる。
ホテルでの労働も救いにはならず、陰湿ないじめに遭うことになり、
「地球のまわる音」が聞こえなくなるが……。

「すばる文学賞」のほうは純文学なんだっけ?
「小説すばる新人賞」のほうはエンタメね。
同じ賞をとった『漢方小説』とはずいぶんカラーがちがうなあ。
最初から最後まで気分は陰鬱になりっぱなし、
いじめのところなんて本当に気分が悪くなる。
けれども、引き込む力はあってあっという間に読了。
(薄いからっていうのもあったかもしれないけど)
口直しに明るいものが読みたい……

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232:河村錠一郎 『世紀末美術の楽しみ方』

2006-10-27 01:40:09 | 06 本の感想
河村錠一郎 『世紀末美術の楽しみ方』(新潮社)
★★★☆☆

世紀末絵画とは、19世紀末に描かれた絵画のうち、
社会通念から逸脱した主題を象徴様式で描いたものを指す。
それらを主題ごとに分類し、解説を加えて紹介した一冊。

以前に読んだ『すぐわかる画家別幻想美術の見方』と
扱われている作品や内容が一部重なっていたので、
それが下地になってなんとかついていけた気はするけれど、
文章の言おうとしていることが門外漢にとってはやや難解。
名前は出てくるのだけど図版のない作品が多くあって、
そこにも不満が残る。
比較対象として挙げられていたら、やっぱり気になるもの。
絵画に関わらず、史跡とか文化財とかって、きちんと予習してから
見たいと思う。
「見テ知リソ 知リテナ見ソ」と言うけれど、
こういう象徴様式の絵画みたいなものはとくに、
それが何を表しているのか知らないと、意図がさっぱりわからない。

それにしても、「世紀末」という言葉は、どうしてこんなに
退廃的で絶望的なイメージを喚起するのだろうか。
ヨーロッパの観念だからキリスト教に関係しているのだろうとは
思うけど……気になりつつも調べていないまま。

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231:西尾維新 『クビキリサイクル』

2006-10-25 12:00:12 | 06 本の感想
西尾維新『クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い』(講談社ノベルス)
★★★★★

縁あって通っていたサイトで猛烈プッシュされていたもの。
メフィスト賞受賞作。

話題の作家さんだし、今さらですが、おもしろかったー!

財閥の令嬢によって絶海の孤島に招かれた5人の天才女性。
そのうちの1人・玖渚友と、その付き添いでやってきたいーちゃんが
密室で連続して起こった首斬り殺人の解決に乗り出す。

ミステリー要素も大きいのだけど、
「新青春エンタの傑作」と銘打たれているとおり、
ミステリーというよりはエンターテイメントといった感じ。
キャラクター造型がかなりアニメ的で、どちらかというと
ライトノベルに近い印象があるので、読む人を選ぶかも?
いかにもな感動詞やヒロインの一人称には正直ドン引きだったけど、
それを補ってあまりあるおもしろさ。

最初の「孤島」「天才」キーワードと、散見される思想から
すぐに森博嗣を連想した。
著者も影響をうけた作家の一人として公言しているとのこと。
ほかに挙げられていた京極夏彦や清涼院流水、上遠野浩平あたりは
数冊読んだきりなので、あまり感じなかったけど、
ファンの人はそういう点でも楽しめそう。
矛盾するようだけれど、作中に、
「誰かを褒めるときに《何々みたい》と言うのは最大級の侮辱」
という話が出てくる。
なんとなくわかるなあ。
「外見が芸能人に似ている」という話ではなく、作ったものに対する話。
言ったほうにどんな意図があるにしても、言われたほうにとっては
《何々に似てる》ってたいてい悪い意味なんだよね。

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230:狗飼恭子 『好き』

2006-10-23 23:34:35 | 06 本の感想
狗飼恭子『好き』(幻冬舎)
★★★☆☆

田中麗奈主演のWebドラマの小説版3作+書き下ろし1作。
プロットを映画の製作と同時に小説にしたもので、
原作でもノベライズでもないという形態。

もともと狗飼さんのつくった話でないせいか、
時代背景が昭和三十年代・五十年代のせいか、
「叉焼麺」「波」はあからさまに書き込みが少ない……
世相をあらわす背景が不自然なほど薄くて、
そのうえ女の子の一人称ですすむものだから、
主人公の現代的な感覚と「集団就職」という話題に、
ちぐはぐな感じを受けてしまう。
映像で見せる分にはセットがあるから問題なかったのかもしれないけど。
舞台が現代になった「テンカウント」はよかったので、
やっぱり時代背景が問題だったのだろうか。
歴史ものに関わらず、過去を舞台にして書くには
かなり勉強が必要そうだもんね。

「テンカウント」で男の子がヒロインに「美穂ちゃん」と
言わされてるのにときめいた……
そして書き下ろしの「『好き』」は、一冊の本として
入れ子式の構成になっているところもよかったし、
狗飼さんの話だなあという感じがして好きでした。

田中麗奈は特別好きというわけでもなく、テレビも見てないので
最近の動向は知りませんが、顔立ちが現代的なので
絵柄としてもやっぱり「テンカウント」がいちばんしっくり
来たんじゃないだろうか……と勝手に予想。

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映画:『エトワール』

2006-10-23 23:07:05 | 映画の感想
映画:『エトワール デラックス版
★★★☆☆

TSUTAYAで目について、借りてきたもの。
女たちの熾烈な戦いを描いたヒューマンドラマかなにかかと思ったら、
オペラ座のダンサーたちの舞台裏を追ったドキュメンタリーでした。
解説によるとオペラ座にカメラが入ったのはこれが初めてだそうで、
ダンサーたちへのインタビューなど、バレエに興味のある人、
くわしい人にとっては楽しめるであろう作品。

ちなみにわたしのバレエについての知識は、
小学館の小学○年生シリーズで連載していた
上原きみ子『銀のトウシューズ』どまり。
なのでよくわからないところが多々あり、掃除しながら
いまいち集中力に欠ける状態で見ることになってしまったのだけど、
他事を切り捨てて、ストイックにバレエに打ち込むダンサーたちの生活や、
激しい競争社会でダンサー仲間と心底打ち解けられないという寂しさ、
忍び寄る老いと引退についての話はなかなか興味深い。

冒頭に来日講演の際の映像があって、若い金髪ダンサーに群がる
日本人女性を評して「日本特有の現象だ」とか言ってるのが
ひどく恥ずかしかった。
ベッカムだのヨン様だののときもそうだったよね。
ああいうのって、付和雷同的な側面ももちろんあるのだろうけど、
なんでもいいからはしゃぎたいというお祭り気質もうかがえる。
わたしがイヤだと思うのは、なんとなくそのちやほやする感じが
「にわか」っぽいからなのかな。

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映画:『サタデー・ナイト・フィーバー』

2006-10-23 16:41:01 | 映画の感想
映画:『サタデー・ナイト・フィーバー』(ジョン・バンダム 監督)
★★★★☆

これも名前はよく聞いたけど見たことがなかったなあ……
というわけでレンタル。
なんとなく「70年代の風俗の証拠フィルム」としか
イメージしていなかったのだけど、よくできた映画で驚く。

ブルックリンの塗装店に勤めながら土曜の夜にはディスコに通い、
踊りに熱中するトニー。
ディスコで出会ったステファニーのダンスに魅了されたトニーは
彼女をコンテストのパートナーに選ぶ。
マンハッタンに勤め、「上流」を意識する彼女に出会ったことで、
トニーはそれまで考えもしなかった別の人生があることに気づく。

労働者の街ブルックリンと、橋を隔てた向こうにある
洗練の街マンハッタンの格差をテーマの一つに据えて、
若者たちの苛立ち、失業、人種差別等々、
当時の社会状況を反映しながらトニーの成長を描いている。
主人公を演じるジョン・トラボルタ、風俗のちがいもあって
最初は「なんか冴えない男だなあ~」と思って見ていたのだけど、
かっこいいじゃないか。
センシティブなトニーの魅力も後半からわかってきました。
ほどよい筋肉と細身の体つきの持ち主でないと似合わない
あのファッションも、なにやらなつかしい感じ。
ヒロインのステファニーを見て、思わず南果歩を連想してしまった。
似てると感じたのはわたしだけ……??

付録についていた音声解説が非常におもしろい。

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映画:『ヘイフラワーとキルトシュー』

2006-10-22 21:38:37 | 映画の感想
映画:『ヘイフラワーとキルトシュー』(カイサ・ラスティモ監督)
★★★★☆

久々に映画。
籐子ちゃんとミチさんのところでレビューを見て、
心惹かれていたフィンランド映画。
ジャガイモの研究に没頭するパパと家事のできないママ、
わがままな妹との4人家族の中、しっかり者のおねえちゃんが
ある日突然ぶっちギレ!……というほのぼのストーリー。

前評判のとおり、インテリア、ファッション、どれをとっても
カラフルでキュート
小さな女の子ふたりというのが、もうそれだけで可愛い。
家事下手のママによってぬいぐるみを乾燥機の中に入れられ、
「死んじゃうー!!」
と大騒ぎする二人にメロメロ。
そして「どうして妹ばっかり!」という理不尽さに対する怒りは、
長女なら誰にでも身に覚えがあるはず。
ママのあの髪型はないだろう……とは思ったけれど、
ひたすらにキュートで、ビジュアル的に楽しめる映画でした。

余談だけれど、本編のあと見た予告にSHIHOが出てきて
ちょっと気分がダウンしてしまった。
別にきらいじゃないけど、なぜ彼女?と、もやもや。

コメント (2)
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