金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

135:衛慧 『上海ベイビー』

2007-12-31 12:08:05 | 07 本の感想
衛慧『上海ベイビー (文春文庫)
★★★★☆

上海に住む25歳の作家ココは、アルバイト先で出会った
美しい青年・天天と恋に落ち、親の反対を押し切り
彼と同棲をはじめる。
繊細な天天と深く愛し合うココだが、
天天は母親との関係が原因で性的な欠陥を抱え、
ドラッグにおぼれていく。
満たされない思いを抱いたココは、
裕福なビジネスマンであるドイツ人男性と関係を結んでしまい、
天天を破滅へ追いやっていくことになる。

**************************************

再読。
オビによると購入したのは2002年。
「中国で発禁処分を受けた」というのがウリで、当時は
「この程度で発禁処分とは……
 そう考えると日本ってなんでもアリの国だなあ」
というくらいの印象しかなかったのだけど、
5年ぶりに読み返したらまたちがう印象。
主人公があまりにも自己肯定的で、
客観的に見てどうなのよ?という感じなのだけれど、
天天を愛する気持ちや彼に対する無力感は
理解できる気がしてちょっとせつない。
西洋と東洋の交じり合う上海の風俗も魅力的。

うんざりするくらい出てくる美しい詩的表現や
キャラクター造型なんかは桜井亜美を思わせる。


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134:村上龍 『69(シクスティナイン) 』

2007-12-31 11:38:22 | 07 本の感想
村上龍『69(シクスティナイン) (集英社文庫)
★★★☆☆

学園闘争も終焉しつつある時代、
佐世保に生きる高校生ケンは、
美少女の気を引きたいがためだけに
学校のバリケード封鎖までやって、
退学になるやらならないやら。
熱気にあふれた1969年の青春を描く
村上龍の自伝的小説。

**************************************

妻夫木聡主演で映画化もされていましたね。
1969年なんてわたしの生まれる10年前なので、
個人的には懐かしさなど感じようがないのだけど、
米軍基地のある街でむやみやたらと爆発している
高校生たちのエネルギーが「遠い」。
こんな暴力教師もいなければ、
思想もエネルギーもない時代に生きているものね。


「~というのは嘘で」のフレーズの連発も、
高校生らしくて、主人公のキャラクターや物語の雰囲気を
形成するのにうまく作用している。
コミカルでポップ、スピード感のある物語で
村上龍に対するイメージが変わりましたわ。


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133:島本理生 『大きな熊が来る前に、おやすみ。 』

2007-12-26 15:07:05 | 07 本の感想
島本理生『大きな熊が来る前に、おやすみ。』(新潮社)
★★★☆☆

【収録作品】
「大きな熊が来る前に、お休み。」
「クロコダイルの午睡」
「猫と君のとなり」

父親や恋人の暴力をトラウマとして抱え、
恋に踏み出そうとする女の子たちの物語。
暴力描写は表面的なのだけど、苦手なので
この程度でもかなり重い気分……
ほか二編は特にどうということもなかったのだけど、
「クロコダイルの午睡」はわりと新鮮な感じ。
恵まれた環境ゆえに、無邪気に無神経に人を傷つける男に
苦手意識を持ちながらも惹かれる主人公。
その恋心があったから余計に憎悪が募っちゃうのね~。

体臭のなさそうな、少女漫画チックな男の子の書き方は
嫌いじゃないし、支持されるのもわかるのだけど、
『メッタ斬り!!』を読んだあとなので、
文章の随所に見られる「ワキの甘さ」が
気になってしまいました……。

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132:石田衣良 『空は、今日も、青いか?』

2007-12-25 14:26:00 | 07 本の感想
石田衣良『空は、今日も、青いか?』(日本経済新聞社)
★★★☆☆

大先輩が中学生向けのオススメ本として挙げていたのを
思い出して借りてきました。
フリーペーパー「R25」と日本経済新聞夕刊に書かれた
エッセイ・コラムを中心に収録したもの。

IWGPシリーズは好きだし、ほかの小説もおもしろいんだけど、
わたし、石田衣良ってなんか信用できないんです
作品の甘さ、キザなところが、天然じゃなくて計算っぽい。
「ほんとはそんなこと思ってないでしょ?
 でも書いちゃうんだよね」
みたいな感じ。
このエッセイ集に入ってる「転職のイエス・ノー」や
「夢を捨てる勇気」に書いてあることには共感できるし、
奇をてらわないまっとうな意見には好感が持てるんだけど、
なんかもやもやしちゃうんだな~。

そんな偏見もあるのだけど、おもしろく読めました。
特に20代の人にはおすすめ。




コメント (1)
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131:太宰治 『走れメロス』

2007-12-24 11:05:16 | 07 本の感想
太宰治『走れメロス』(新潮文庫)
★★★★☆

【収録作品】
「ダス・ゲマイネ」
「満願」
「富嶽百景」
「女生徒」
「駆込み訴え」
「走れメロス」
「東京八景」
「帰去来」
「故郷」

「女生徒」を読んでみたくて借りてきたのだけど、
「女生徒」自体はあんまりインパクトがなかったな。
朝起きてから夜眠りにつくまでの女子学生の思考を追った
短編で、ころころと気持ちが移り変わり、
「人間は、立っているときと、坐っているときと、
まるっきり考えることが違って来る」
なんて考えているのはおもしろかったけど。

わたしは太宰の代表作と言われる「人間失格」や
「斜陽」の良さはちっともわからなかったけど、
「富嶽百景」は文句なしに好き。
そして「走れメロス」「駆込み訴え」の文章も好き。
「帰去来」「故郷」は、太宰が10年ぶりに
生家に帰ったときの話で、なんとなく荒い。
解説によるとこの二編に比べ、「津軽」は良いようだから、
次はそっちを読んでみたい。


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130:小川洋子 『余白の愛』

2007-12-23 00:11:44 | 07 本の感想
小川洋子『余白の愛 (中公文庫)
★★★★☆

耳を病んだ「わたし」はある座談会で速記者のYと出会った。
言葉を写し取るYの指に惹かれた「わたし」は、
彼と再会し交流を持つようになる。
Yと甥のヒロに支えられ、去っていく夫や体の不調に揺れる心は
明るい方向へ向かっていくが……

****************************************

『博士の愛した数式』って、小川作品の中では異色なのかも?
と思い始めた小川洋子3冊め。
一般ウケで言ったらダントツで『博士の~』のほうだろうけど、
わたしはこういう雰囲気の作品のほうが好きだな。
やわらかなのだけど透き通って硬質なところもある、
静かで美しい世界。
今さらだけど、「好み!!」と言える作家さんを
発見いたしました。

しばらく往復2時間の職場に通うことになるので
読書にいそしみたいと思います。


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129:平安寿子 『もっと、わたしを』

2007-12-20 22:36:23 | 07 本の感想
平安寿子『もっと、わたしを (幻冬舎文庫)
★★★★☆

モテないのに二股をかけてトイレに監禁された男、
「顔だけ」の自己中男、
なりゆきまかせで振り回される男、
美貌ゆえに貧乏くじを引く女、
男に媚びる打算ずくめの女。

「もっと、わたしを」と願う5人の男女の
ままならぬ人生をユーモラスに描く連作短編集。
脇役として登場した人物が次の話で主人公を張っていたり、
再度脇役として登場していたりする
「ちょこっとリンク」タイプの連作。
最初の「いけないあなた」の結末が、
最後の「涙を飾って」でわかったのがよかったな。
コミカルなんだけど薄くはなくて、どの話も
最後にほっと和める結末になっているのが良い。
自分の女としての価値を受け止め、
それなりの活路を切り開くしたたかなおなごたちが素敵

しかし奥田英朗の解説はなんだかいやな感じだ。

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128:飛田良文・荒尾禎秀 『ことばのはじめ ことばのふるさと』

2007-12-12 17:15:01 | 07 本の感想
飛田良文・荒尾禎秀『ことばのはじめ ことばのふるさと (ことばの探検―3)』(アリス館)
★★★☆☆

今年最後の試練だと思って、また趣味じゃない論説文を
あれこれ読んでおります。
人文系の論説はわりと好きなので、
自然科学系のものと比べたら
読んだり買ったりするのも苦痛じゃない。

本書は大きく分けて、和語、外国語、外来語など
日本語の構成要素についての話と、
語源に関する話の二本立てになっている。
源氏物語や雑誌に使われている語数を調べるなんて、
気の遠くなる作業だよ……。
昭和24年・25年の
「農民・商家の主婦・地方公務員のそれぞれの
一日につかう単語ベスト10」
という調査結果が笑える。
公務員、返事ばっかりしてるし。
しかもこの返事のバリエーションの多さはいったい……

そして、へちまの語源がおもしろい。

「糸瓜(いとうり)」
→「とうり」
→「と」は「いろは歌」では「へ」と「ち」の間
→「へ」「ち」間
へちま

なんだって!!


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127:おおたうに 『うにっき girls be ambitious!』

2007-12-11 19:11:12 | 07 本の感想
おおたうに『うにっきgirls be ambitious!』(幻冬舎)
★★★☆☆

書店で購入。
うにっき、久しぶりに見た……と思ったのだけど、
全巻を読んだのが昨年の5月だから、そうでもないのか。
有名雑誌でも彼女のイラストを見かけるようになり、
友だちの家にあったタウン誌にも連載を持っているのを発見して
「こんなところにまで!」と思ったものです。

髪型がかわったせいか、可愛くなったね。
年のせいか(?)無茶な感じもしなくなって、
文章も丸くなったような気がします。
「これ、読む人が読んだら、不愉快だろうな~」
というところが以前は結構あったのだけど、
それがぐっと少なくなってる。
「仕事がんばろう」とか「可愛い格好しよう」とか
モチベーションがUPしました。

しかし、あの、読み手のことをまったく考えていない
対談ページの配色はなんとかならないのだろうか……。
水色×オレンジって、読みにくいうえ、
わたしの大きらいな組み合わせ!

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126:中村航 『夏休み』

2007-11-19 09:51:03 | 07 本の感想
中村航『夏休み』(河出書房新社)
★★★☆☆

妻であるユキとその母と3人で暮らすマモル。
ユキの友だちである舞子と結婚した吉田くんと
「義理の友達」になり、
「片方が離婚したら、もう片方も離婚する」
という密約を交わしていたが、ある日、
吉田くんが家出をしてしまい……

**************************************

ライトすぎてポカーン

この人たち、大人だよね?
なんだか児童書の、高校生の物語を読んでいるようだった。
会話のテンポもよいし、くすっと笑わせるところもあって
伊坂幸太郎や吉田修一に近いテイストなんだけど、
さらさらしすぎて何も残らない。
ユキのママが登場する意味がさっぱりわからないし。

「徳川光圀は放浪癖があるよね」
「うん。あれは完全に放浪癖」
「一人じゃなにもできないくせにね」

のところはおもしろかったです。
実際の光圀は放浪なんかしてないそうだけど、
黄門様ははた迷惑な男だよ!

嫌いじゃないのだけど、もの足りない……ということで
★2.5といったところ。

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