金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

131:中島義道 『私の嫌いな10の言葉』

2010-07-31 22:24:59 | 10 本の感想
中島義道『私の嫌いな10の言葉』(新潮文庫)
★★★☆☆

『哲学者というならず者がいる』と並行して
読んでいたエッセイ。
著者の主張は、わたしの読んだ本の中では
いずれも一貫していて、同じことを書いているようで
立て続けに読むと飽きちゃうんだけど、憎めない。

さて、著者が挙げている嫌いな言葉は以下の通り。
「相手の気持ちを考えろよ!」
「ひとりで生きてるんじゃないからな!」
「おまえのためを思って言ってるんだぞ!」
「もっと素直になれよ!」
「一度頭を下げれば済むことじゃないか!」
「謝れよ!」
「弁解するな!」
「胸に手をあててよく考えてみろ!」
「みんなが厭な気分になるじゃないか!」
「自分の好きなことがかならず何かあるはずだ!」

最後の「自分の好きなことが~」については、
とりわけ身に覚えがあって納得。
「自分の好きなこと」を相手に問いつつ、問う側が
「社会的に評価される、できれば職業と結びつくこと」、
「社会的上昇志向が薄いしかも堅実なもの」、
「社会的地位・名誉・金をちらつかせ」てないもの、
と縛りをかけている、とその欺瞞を指摘している。
ただ嫌いだというだけでなく、こうした言葉の出てくる
社会的・文化的背景まで言及していて興味深い。
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130:福田隆浩 『熱風』

2010-07-30 16:12:41 | 10 本の感想
福田隆浩『熱風』(講談社)
★★★★☆

中学二年生の孝司は、聴覚障害を持ち、
養護学校に通っている。
ある日、孝司の所属する桜庭テニス会に
同じ歳の中山が入ってくる。
互いに気に入らず、衝突する二人。
中山は病気で頭髪を失っていた。
ダブルスを組むことになり、反発しながらも
次第に打ち解けあうかに見えた二人だが、
あるできごとをきっかけに、
中山は練習に出てこなくなってしまう。

****************************************

教材に使われていたもの。
講談社児童文学賞佳作。

障害や病気といった、本人や周りの力では
どうしようもないこと、
努力しても変えることのできない現実が
つきつけられて苦しい。
物語の中でそれらは解決されないし、
この先も同じようなできごとが
彼らを苦しめるに違いなくて
虚無感に襲われてしまうのだけど、
それでも救いのある物語だった。

主人公の孝司のキャラクターがいまいち
とらえられず、ところどころに違和感があったため
★4つ。
もちろんキャラクターに多面性はあるはずだけど、
学校での顔とテニスの場での顔がつながらなかった。
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129:穂村弘 『人魚猛獣説―スターバックスと私』

2010-07-29 20:48:46 | 10 本の感想
穂村弘『人魚猛獣説―スターバックスと私』(かまくら春秋社)
★★★☆☆

スターバックスにまつわるエッセイ。
スタバのHPなんかで連載でもしていたのかしら?
一般募集したスタバにまつわる短歌の紹介が
おもしろい。
頭を使わず気軽に読めて、楽しめる。

いまの勤め先の近くにはスタバがなく、
仕事に追われて買い物に出かけることも減ったため、
スタバに行かなくなったなあ。
スタバは長居しにくいし、仕事もしにくいんだよなー。
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128:樫崎茜 『ボクシング・デイ』

2010-07-29 16:59:51 | 10 本の感想
樫崎茜『ボクシング・デイ』(講談社)
★★★★☆

「ち」と「き」の発音がうまく使い分けられず、
小学4年生の栞は、学校の特別教室で行われる
佐山先生の「ことばの教室」に通う。
校庭のセコイアの伐採、校庭のブロック画に描かれた
「スイミー」のささやき……
少女を取り巻く世界と、揺れる心を描いた物語。

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タイトルから、格闘技のボクシングの話なんだと
思ってたら、まったく違った。
12月26日を「ボクシング・デイ」というんだって。

すっかり忘れていた小学校時代の校庭や教室の場面が
記憶の底から浮かび上がってきた。
栞も千晶くんも敦志くんも、可愛くていとおしい。
やさしい空気に満ちたお話。
「ち」と「き」の発音が苦手で
千晶くんを名前で呼べなかった栞が、
彼の名前を呼ぶエピソードがいい。
明らかな恋愛の要素はないんだけど、
千晶くんが出てくるたびににこにこしちゃう。
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127:野田道子 『点子ちゃん』

2010-07-27 18:16:59 | 10 本の感想
野田道子『点子ちゃん』(毎日新聞社)
★★★☆☆

一平のクラスにやってきた、妖精のような外見の
目の見えない転校生・点子ちゃん。
点子ちゃんの役に立ちたいと彼女のまわりを
うろつくクラスメイト、そしてそれを
苦々しく思って見ているクラスのマドンナ。
一触即発の危機に見舞われながらも、
点子ちゃんはその聡明さと優しさで
みんなの心をつかんでいくが……

******************************************

今年の青少年読書感想文コンクール課題図書その3。
イラストの雰囲気もあいまって、
素直でほのぼの、とってもキュートな物語。
しかし、クラスのみんなの親切なふるまいも、
点子ちゃんの堂々とした物言いも、
どうしても
「外見が可愛いからだよなー……」
と思っちゃう。
この本は点字の大切さがテーマになっているらしいので、
「障害者差別はダメ!」っていうのを前面に押し出しては
いないのだけど、障害者への差別に関しては、
外見の問題がかなり大きく影響していると思う。
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126:中西翠 『クローバー』

2010-07-27 18:05:35 | 10 本の感想
中西翠『クローバー』(講談社)
★★★☆☆

中学一年生の好葉は、小さいころに読んだ絵本の
影響で、四葉のクローバーを集めている。
親友の美咲にもないしょで、
押し花にした四葉のクローバーを図書館の本に
はさんで隠す作業を続けていたが、
だれかが同じように四葉のクローバーを
本に挟んでいることに気づき……

******************************************

日本児童文芸家協会第創作コンクール受賞作。
ふざけあいながらじゃれあう男友達と
可愛くて男の子にモテモテの親友との三角関係に
悩む主人公……という、
一昔前の少女小説みたいなストーリーなんだけど、
中学の頃ってこうだった!!と目からウロコが
落ちるような気持ちに。
こういう初々しい初恋と友情の物語って、
すごく久しぶりに読んだなあ……
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125:草野たき 『リリース』

2010-07-27 01:03:22 | 10 本の感想
草野たき『リリース (teens’ best selections)』(ポプラ社)
★★★☆☆

死んだ父の生まれ変わりとして、親戚中から
医者になることを期待されて育った中学三年生の明良。
親戚の期待に答えつつも、バスケ部のキャプテンとして、
転入生小杉の登場で苛立つチームメイトに
気を遣ったり苛立ったり。
そんなとき、ちがうクラスの女子からの電話で
明良は呼び出される。

******************************************

自分自身を見つめ、家族や友人と本音でぶつかりあう、という
児童書らしい主人公の成長物語。
草野さんの作品のシビアさがわたしは好きなんだけど、
これはちょっとその点で物足りなかったな。
ドキッとするような要素はあるんだけど、
後半、あまりにも調子よく解決しすぎじゃない?と
思ってしまった。

でも基本的に、草野さんの作品は、これもふくめて
みんな好きです。
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124:藤沢晃治 『「分かりやすい教え方」の技術』

2010-07-27 00:49:52 | 10 本の感想
藤沢晃治『「分かりやすい教え方」の技術』(講談社ブルーバックス)
★★★☆☆

これも原稿の素材に使おうと思って買ったんだけど、
長さの問題で断念。
個人的には「いまさら」なので、
目からウロコ!!みたいな発見はなく、
自分が経験から「こうするとうまくいく」と
なんとなく感じていたことを、
この本を読んだことで、言語化してもらったうえに
心理学等の研究結果による裏づけを得た、という感じ。

・講演会で内容を詰め込みすぎるのはよくない
・楽しませよ

の二点は最近とくに感じていたこと。
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123:福井康雄 監修 『珍問難問 宇宙100の謎』

2010-07-22 22:58:48 | 10 本の感想
福井康雄 監修『珍問難問 宇宙100の謎』(東京新聞出版局)
★★★☆☆

ネットを通して全国から寄せられた、
宇宙に関する疑問の数々から100問を選び、
名古屋大学大学院の教授と、院生たちが回答。
「なぜ宇宙は『宇宙』というの?」
「宇宙は何色なの?」
「宇宙があると、一番はじめに気づいた人は誰ですか?」
などなど、疑問に思ったこともなかった疑問に対する
答えが得られておもしろい。
おもちゃ花火の製造業をしている人が、
「宇宙で花火をしたらどうなるの?」
という質問を寄せているのがなんだかほほえましい。
イラストも可愛くて胸キュン。

宇宙のことを考えると、頭がぼーっとしちゃう。
想像でしか触れられない途方もなさ。
(理論が理解できない、というのもあるけど
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122:白尾元理 『月の地形ウォッチングガイド』

2010-07-22 22:47:56 | 10 本の感想
白尾元理『月の地形ウオッチングガイド』(誠文堂新光社)
★★★☆☆

「仕事で本を読むモード」なので、
できるかぎりプライベートでは
仕事と関係ないものを……と借りてきた。

部分部分の写真と、それぞれのクレーターや海の
説明が書かれている。
写真を見ているだけでも楽しいんだけど、
実際に望遠鏡などで月を観測する人には、
写真と実物を照らし合わせて地名を確認することが
できて便利なんじゃないかな~。
「神酒の海」「静かの海」「危機の海」なんて海の前や
科学者の名前をつけたクレーターの名前など、
月の地名はロマンチック
地形のなりたちをどのように考えるのか?という
研究の方法もわかって興味深い。

わたしの持っている三省堂の星座早見盤、
世界で唯一「月がどっちに見えるかまでわかってしまう
星座早見盤」なんだそう。
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