★★★★☆
【Amazonの内容紹介】
平安時代の最高権力者・藤原道長に連なる藤原北家ながら
傍流の御子左家は、
歌壇ではそれなりの実力を発揮しているものの、
公家の出世レースではパッとしない家柄。
当家の次男に生まれた藤原定家は、
病由来の難聴を克服し、侍従時代の同僚で親友の
藤原家隆らとともに『新古今和歌集』の選者を務めるなど、
歌壇でめきめきと頭角を現す。
鎌倉幕府に押され気味の朝廷の権威回復を狙う後鳥羽上皇は、
そんな定家に、三代将軍・源実朝に京への憧れを植え付けるため
「敷島の道(和歌)」を指南せよと命ずる。
後鳥羽の野心は肥大し、ついには倒幕の兵を挙げんとするが……。
知らぬ人のいない「小倉百人一首」には、
なぜあの100首が選ばれたのか?
同じく藤原定家選の「百人秀歌」より1首少なく
3首だけ異なる理由とは――?
「承久の乱」前後の史実をきらびやかに描きながら、
その謎を解き明かす。
****************************************
ボーイズラブならぬおっさんずラブ、
定家・家隆・後鳥羽院の三角関係と聞いて、
読んでしまった……!
男色ばやりだった時代でもあるし、
思ったより違和感はなかった。
定家と式子内親王の恋愛は「ない、ない」で終わるし、
かといってオリキャラとの恋愛は想像すらできない
(失礼だが、モテないよね……)ので、
恋歌にからめようと思ったらこうなるよな……という納得感。
回想を多用しすぎて時系列がわかりにくくなっていたり、
「うかっ」「げっ」という言葉の癖のようなものが気になったりと
ひっかかるところもあったけれど、
百人一首成立の背景もおもしろかったし、
史実と史料から読み取れるパーソナリティ、オリジナル要素を
うまくミックスして独特の作品世界が構築されていて、
ほろっときてしまうところもあった。
明月記の細かいエピソードも織り込まれていて、
ファンはうれしいんじゃないだろうか。
兄弟や猶子は登場するのに、途中で秀能が出てこなくなり、
承久の乱に関わっていたかどうか一切触れられないのも、
「実は関与していなかったのでは?」という説を
踏まえてのことなのだと思った。
その後の歌を使ったやりとりが素敵だったので、
これを言うのは野暮というか、興ざめかもしれないが……
初めてだったんだから、致したかどうかは
体に残る感覚でわかるでしょ?
政子がまさに「蛮族の女」。
北条家はこの作品でもドロドロしてますなあ。