金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

193:森達也 『きみが選んだ死刑のスイッチ』

2010-12-20 23:49:30 | 10 本の感想
森達也『きみが選んだ死刑のスイッチ』(よりみちパン!セ)
★★★★☆

この人、よりみちパン!セのシリーズの中で、
ひとりで3冊も書いてるんだな。

刑法のはじまりと、司法の歴史をふり返りながら、
その過程で生まれた冤罪事件とその理由、
裁判員制度の欠陥を指摘。
その上で、世界の動きとは逆行するように
死刑執行が数多く行われるようになった日本の現状を述べ、
問題提起を行っている。

裁判員制度って、なんだかいきなり出来て、
その理由もよくわからないなあ~って感じだったんだけど、
納得のいくようなまともな説明は、やっぱりないんだな。
素人を参加させる意義がまったくわからない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

192:綾屋紗月 『前略、離婚を決めました』

2010-12-18 17:19:49 | 10 本の感想
綾屋紗月『前略、離婚を決めました』(よりみちパン!セ)
★★★★☆

母と父がなぜ離婚することになったのかを、
母が二人の子どもたちに対して語りかける形で説明する。
子供時代、まわりとつながることができなかったこと、
夫と出会い、「つながった」と感じられたこと、
結婚後に分かった夫の酒癖とDV、
離婚の意志を固めるきっかけとなった夫の風俗通いに、
離婚へ向けての夫との戦い。
離婚までのいきさつが、当時の自分の気持ちとともに
つづられていて、読みながら暗澹たる気分に。
子供への思いをつづった部分には
涙ぐみそうになってしまった。
高校生や大学生の女の子たちに読んでほしいなあ。

それにしても、こういう話を読むと、
専業主婦を選択するのはつくづく危険だと思う。
経済的な問題で妻も働きに出なければならない家というのも
最近は多いと思うし、その弊害も論じられているけれど、
自分自身の経済基盤がないというのは行動の選択肢を
大幅に狭めるよな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

191:川西蘭 『セカンドウィンド<3>』

2010-12-17 11:39:57 | 10 本の感想
川西蘭『セカンドウィンド 3』(小学館)
★★★★☆

南雲真一ら三年生が引退し、
洋は南雲学院高校自転車部のキャプテンとなった。
部の予算は削減され、新任コーチの就任で体制が変わる。
新任の奥寺の過酷な指導に対して部の中で不満が高まり、
部の中に暗雲が立ち込める。
エースとなった岳、そしてサブキャプテンの元との関係に
かすかなわだかまりを抱えつつ、
洋は自分のキャプテンとsての資質に自信が持てないでいた。
そして茜と親密になったことで、多恵とは冷戦状態に突入していた。

*********************************************

3巻はポプラ社じゃなくて、小学館から出ているのね。
もう引退とは……
岳や元、後藤といった脇を固めるキャラクターが
いい味を出していて、切磋琢磨し合いつつも
それぞれの道を歩もうとしているこの時期特有の
友情のせつなさも感じられる巻でした。

恋愛もひとまず決着(……なの?)。
岳があっさりふられているのに驚いた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

190:伊集院静 『機関車先生』

2010-12-10 18:41:51 | 10 本の感想
伊集院静『機関車先生』 (講談社文庫)
★★★★☆

終戦後、瀬戸内海に浮かぶ小さな葉名島。
その島にある全校生徒わずか7人の小学校に、
北海道から臨時教員がやってきた。
身体が大きく、強くてやさしいその先生は、
幼い頃の病気が原因で口がきけない。
子供たちは、彼を「機関車先生」と呼び、慕うが、
口のきけない彼が子供たちを教えることに
大人たちは不安を抱く。
しかし大小のさまざまな出来事を通して彼の人柄を知り、
島の人々は次第に彼を認め、惹かれるようになっていく。

*********************************************

通して読むのは初めて。
あちこちで使われているので、断片的な場面場面を読んでいて
おおよその話はわかってしまっていた。
口がきけなくて、強くて優しくて心がきれいだなんて、
機関車先生には絶対感情移入できまい……と思っていて、
実際その通りだったのだけど、
彼よりも生徒や校長先生といった周囲の人々の感情に
スポットがあたっている。
最後の場面では、ホロリときてしまいそうになったよ。
美しすぎる話だけれども、その分人を選ばず
おすすめできる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

189:立岩真也 『人間の条件  そんなものない』

2010-12-10 18:12:22 | 10 本の感想
立岩真也『人間の条件  そんなものない』 (よりみちパン!セ)
★★★☆☆

著者は社会学者。
「できる人」がより多くのものを得る、という社会の仕組みに対して、
当然だと思い、何の疑いも持っていなかったので、
その社会のあり方に疑問を提起するこの本の内容には
目からウロコ。
ワーキングプアや失業者の問題も、
「労働力が余っている」のは「労働力が足りている」のであって、
社会がより豊かになった証拠であり、「余り」になった当人たちが
責められる問題ではない――という考え方も新鮮だったなあ。

しかし、とにかく文章がわかりにくすぎる。
難しい言葉を使っているわけではない。
文章がひどくまどろっこしくて、途中で何回か寝てしまった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

187:日本文芸家協会 『短篇ベストコレクション―現代の小説 (2000)』

2010-12-03 20:10:04 | 10 本の感想
日本文芸家協会『短篇ベストコレクション―現代の小説 (2000)』(徳間書店)
★★★☆☆

収録されている中の一編、藤田雅矢「鬼になる」を読みたくて。
仕事上の必要からさがしていたのだけど、
入手するのにひと苦労。
今回は意図的にあらすじは書かない

この人、全然知らなかったのだけど、SFの作家さんなのかしら。
江戸時代を舞台にしていて、わりとしっかり調べて書いてある印象を
受けたのだけど、後半、何の科学的説明もなくぶっとび展開になるので
読んでいてポカーン
もやもやする。

同じく収録されていた山本文緒の短編はよかったな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画:『ジェイン・オースティン 秘められた恋』

2010-11-27 10:19:11 | 10 本の感想
映画:『ジェイン・オースティン 秘められた恋
★★★☆☆

『高慢と偏見』の作者として知られるイギリスの女流作家
ジェイン・オースティンの若き日の恋を描いた映画。
18世紀のイギリス、ハンプシャーの貧しい牧師の娘として
生まれ育ったジェインは、小説を書いている。
当時の貧しい女性の生きる唯一の道は、
財産がある男との結婚であった。
ジェインは地元の名士であるグレシャム夫人の甥・ウィスリーに
見初められる。
財産の相続人であるウィスリーと娘の結婚を母は望むが、
ジェインは同意できない。
ある日、ロンドンから休暇のためにハンプシャーにやってきた
トム・ルフロイに出会ったジェインは、田舎を見下す彼に
反発しながらも、やがて惹かれあうようになる。
しかし、ともに貧しい家庭に生まれた二人の恋は
前途多難であった。

******************************************************

久しぶりにつまらない映画を見た……

一定水準には達しているので
「ひどい!」という感じはないのだけど、
途中で「あと一時間もあるのか」と思ってしまった。
たぶん、原因の一つが描写・説明不足。
特典としてついていた、カットされたシーンを見て
ようやく意味がわかったところも多々あり。

ルフロイの魅力がちっとも理解できず、
彼がジェインを愛する理由も描写不足で納得できず、
恋愛関係に突入した瞬間に、ときめくどころか
「こいつ、裏切るんじゃないの?」
と思ってしまった説得力のなさ。
アン・ハサウェイは美しいけれども、
一人だけ容姿が現代的すぎて浮いていた。

しかし、生活と家族のための決断は
愛で腹は膨らまないというシビアな現実を反映していて
なかなかよかったな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

186:ウェブスター 『あしながおじさん』

2010-11-26 12:18:20 | 10 本の感想
ウェブスター『あしながおじさん』(偕成社文庫)
★★★★★

孤児院で過ごすジェルーシャ・アボットは、
書いた作文がお金持ちの評議員の目に留まり、
文才を見込まれ大学へ進学させてもらえることに。
援助の条件は、月に一度、大学生活や勉強について
報告する手紙を書いて送ること。
ジュディと改名したジェルーシャは、一度その後姿を
見かけただけの後見人を「あしながおじさん」と呼び、
返事の来ることのない手紙をせっせと書き送る。

*********************************************

訳は恩地三保子。
「ハウス世界名作劇場」の「私のあしながおじさん」が
好きだったな~と思い出して再読。
第一章以外は、ジュディからあしながおじさんへあてた
手紙で物語が構成されているのだけど、
ユーモアに満ちた文章と笑いをさそうイラスト、
文章から垣間見える大学生活の様子が楽しい。

初めて読んだ小学生のときには感じなかったけど、
今読むと、おじさんの嫉妬とあからさまな妨害工作が
なかなかに気持ち悪いな。
そしてジュディはお調子者で無礼。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

185:中村うさぎ 『こんな私が大嫌い! 』

2010-11-26 00:30:51 | 10 本の感想
中村うさぎ『こんな私が大嫌い!』(よりみちパン!セ)
★★★★☆

叶恭子さんと並べてイロモノ呼ばわりしてしまいましたが……
こちらも驚くほどまっとうだった!

「『人と自分をくらべるな』ってホントだろうか?」
「自分の顔が大嫌い!」
「自分のカラダが大嫌い!」
「『自分嫌い』という呪い」
「自己評価って上げられるの?」
「『自分嫌い女』の半生」
「『自虐ギャク』のススメ」
「自分の性格が大嫌い!」

の8章から成り立つエッセイ。
筆者によると、「自分嫌い」とは、「自分好き」の裏返し。
理想の自分を高く設定して、理想と現実と差に満足できない。
よく雑誌に書かれている「自分を好きになろう」は
きれいごとに過ぎず、自分嫌いを克服するには
「自分のことを嫌いでも、好きでもない状態」に
至らなければならない、という。

自己評価の低さとか、コンプレックスの原因だとか、
思い当たることが多すぎた
そして、「自分嫌い」=「自分好き」って、よくわかるなあ。
容姿や性格に悩む思春期の女の子たちにはもちろん、
大人にもおすすめしたい一冊。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

184:伊藤整 『少年』

2010-11-19 14:59:12 | 10 本の感想
伊藤整『少年』(筑摩書房)
★★★★☆

村に暮らす靖は、親類である問題児・房太郎といっしょに、
房太郎の家に下宿している田崎先生に勉強を教わっている。
若く美しい田崎先生にあこがれる靖だが、
房太郎がかぎつけてきた田崎先生の
「女」の部分に、恐れを感じながらも
好奇心を押さえることができない。
やがて、房太郎から手紙の仲介を頼まれたことをきっかけに、
都会からやってきた同級生の女の子に
胸をときめかすことになる。

*********************************************

この人初めて?と思ったけど、ブログ内検索かけたら
「典子の生きかた」を読んでいました。
初版が昭和31年で、入手できず、図書館で
変色しまくった本を借りてきました。
しかし他地区の中学入試には出てるのね。
表題作「少年」のほか「子供暦」を収録。

時代の問題だと思うけれど、登場する女性は
「女らしさ」が徹底しているなあ。
そして女性に対する憧れが過剰なほど。
ラストがなんとなく尻切れトンボな印象。
ラストが冒頭につながっていかないので、
冒頭で回想の形式をとった理由がわからず、
やや消化不良気味。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする