金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

81:ミシェル・マンゴリアン作/小山尚子訳 『イングリッシュローズの庭で』

2005-08-31 20:58:49 | 05 本の感想
ミシェル・マンゴリアン作/小山尚子訳『イングリッシュローズの庭で』
(徳間書店)
★★★★☆

第二次大戦中、姉のダイアナとともに海辺の町へ疎開してきた少女ローズ。
優等生で美しい姉へのコンプレックスに悩まされていた彼女が、
〈狂人〉ヒルダの日記や新たな友人との出会いを通して、恋を知り、
世界を知っていく様子が生き生きと描かれます。
子どもの頃に読んだ『若草物語』や『あしながおじさん』を思い出させる、
なつかしい感じのする児童文学でした。

キリスト教世界だけではなく、日本でも婚前交渉を忌む風潮というのはあって、
その反動なのか、さまざまな面で性に対する奔放さが持ち上げられる昨今。
「とにかく、いけないのだ」と教え込むことにも効用はあるのだろうなあと
思いました。
というよりは、そんなふうに洗脳するしかすべはないのかも。
「愛してる」を免罪符にしがちだけど、
年若い女の子に「愛」の真偽は見抜けないし、
そもそも十代で他人に対する「愛」が成立するかどうかも疑わしいので。
(失敗しないとわからない、という考え方もあるでしょうが)
そして当時徹底的に非難されていた未婚での出産。
タブーを犯すことの最大の代償は世間との衝突だということが、
しっかり描かれていて好ましく感じられました。

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映画:『日の名残り』

2005-08-31 20:57:13 | 映画の感想
映画の感想:『日の名残り』(ジェームズ・アイヴォリー 監督)
★★★★★

名門貴族に仕えた執事スティーブンスが、
かつてともに勤めていた女中頭の連絡を受けたところから物語は始まる。
感情を排して忠義を貫こうとする執事の孤独、紳士たろうとした主人の悲運、
淡い恋と非情な年月の流れが描かれます。
自らも大切に思っていた女中頭の恋心を受け入れられずに彼女を失い、
道を誤りつつある主人を正すこともできない。
執事というものの悲哀を感じさせる物語でした。
古きよきイギリス貴族の生活や、当時の世界情勢も垣間見られ、
雰囲気がとても好き。

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映画:『初恋』

2005-08-30 20:55:17 | 映画の感想
『初恋』(エリック・コット 監督)
★★★☆☆

構成がつかめなくて、どこまでが作中世界でどこまでが実際のできごとなのか、
半分を過ぎるころまで判断がつかないまま。
二組のカップルの「初恋」を描いたオムニバス形式の物語。
金城武の話のほうはかわいらしく、
もう一方の、結婚前に逃げ出した男の話はちょっとせつない。
タイトルやひとの話から想像していたようなセンチメンタルな物語ではないのだけど、
演出も楽しめたし、色彩と音楽の使い方がおもしろかった。

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映画:『(ハル)』

2005-08-29 20:54:07 | 映画の感想
『(ハル)』(森田芳光 監督)
★★★★☆

内野聖陽さん目当てで見たのだけど、よかった~。
「インターネット」ではなく「パソコン通信」、
メールが普及する前の時代のラブストーリー。
ネット恋愛ってもう食傷気味だったのだけど、
10年前の作品であるにかかわらず、とても新鮮な感じがしました。
メールを通じて少しずつ心を通わせ、お互いを大切に思うようになるまでの
過程が無理なく描かれています。
日常の風景とメールの文面が断片的に組み合わされて、
全体的には穏やかで静かな哀愁さえ感じる雰囲気。
そんな中でも文字だけでつながった関係のあやうさ、
姿が見えないからこそのせつなさが
しっかり感じられて、ふたりのすれ違いにやきもき。
久しぶりにどきどきするようなラブストーリーを見た気がしました。

深津絵里って本当に可愛い。
きれいというよりキュートな感じ。
10年前の映画なので服装や髪型が野暮ったく見えるはずなのだけど、
透明感はあいかわらずです。
そして意外なところで宮沢和史さんを発見してびっくり。
個人的には、若い内野さんより彼のほうが好みだ(笑)。

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80:江國香織 『ホリー・ガーデン』

2005-08-18 20:52:00 | 05 本の感想
江國香織『ホリー・ガーデン』(新潮文庫)
★★★★★

荷物が多くて、バッグにハードカバーが入らなかったので、代わりに文庫本。
再々読。
江國さんの本では『ウエハースの椅子』がいちばん好きなのだけど、
二番目に好きなのがこの『ホリー・ガーデン』。
幼い頃からの友だち、果歩と静枝の日常を描いた物語。
ドラマチックな展開があるわけでもなく、
淡々とちいさなできごとのつみ重ねが描かれているだけなのだけど、
読むといつも、「静かで明るい孤独」ということをイメージする。
心配したり、嫉妬したり、劣等感を抱いたり、傷つけたり。
ふたりの関係の複雑さには、奇妙なリアリティもあります。
そして小道具の使い方が素敵。
食べ物や食器、アクセサリーなど、ディティールにまで美意識を感じさせて、
それだけのためにでももう一度読みたいという気にさせる。

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79:若木未生 『LOVE WAY―GLASS HEART』

2005-08-17 20:50:27 | 05 本の感想
若木未生『LOVE WAY―GLASS HEART』(コバルト文庫)
★★★★☆

高校時代、友だちから借りて入ったハイスクールオーラバスターのシリーズは、
主人公たちとの年齢差が開いたためかどうにも受け付けなくなってしまった。
グラスハートは最近古本屋で発見して知る。
この巻がいちばん好きだなあ。
番外編みたいな感じなので邪道かもしれないけれど。
シリーズの途中でイラストレーターさんが変わって、
ちょっと違和感を感じていたのだけど、
今回、羽海野さんでよかったなあ…と思いました。
とんがった男の子の幼い、可愛い一面って、一般的には「乙女心わしづかみ!」
なのかもしれませんが、わたしにとっては最高に気持ちが悪いので。
羽海野さんの可愛らしいイラストでギャップがうまく中和されて、
素直にせつないなあと思えたのでした。
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78:吉田修一 『熱帯魚』

2005-08-15 20:48:32 | 05 本の感想
吉田修一『熱帯魚』(文藝春秋)
★★★★☆

この作家さん、個人的に久々のヒットかもしれない。
読むのはこれで三冊目だけど、ほかにも読んでみよう。
「熱帯魚」「グリンピース」「突風」の三篇を収録。
的確な言葉で綴られる、少し変わった人々の日常の風景。
最後の「突風」はあまり好きじゃないな、という印象だったのだけど、
「熱帯魚」「グリンピース」ではところどころで描かれる間抜さに笑ってしまう。
やさしさと残酷さの関係について、すこし考えた。
この世界を「現代的」と評することには、少々疑問が残るのだけど。

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77:おおたうに 『RE CHERRY COKE』

2005-08-14 20:47:23 | 05 本の感想
おおたうに『RE CHERRY COKE』(ベルシステム)
★★★★★

絶版になっていたものを、アマゾンのマーケットプレイスで入手。再々読。
イラストレーターおおたうにさんのイラストエッセイ。
彼女の本は、『美人画報』とともに、女心復活のためのツール。
あれこれ悪口言われているのも目にするし、『うにっき』シリーズを
読んでいると、反感買うのもわからないでもないのだけど、
それでも彼女の描くものはいつもきらきらな感じがして、
かわいらしくて、わたしは好き。
1ページの中に文字とイラストがぎっしりつまってて、何度読んでもおもしろい。


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76:富永裕久 『図解雑学 パラドクス』

2005-08-13 20:45:27 | 05 本の感想
富永裕久『図解雑学 パラドクス』(ナツメ社)
★★★☆☆

『図解雑学』はわたしが好きなシリーズのひとつで、ときどき読む。
哲学者と数学者を兼ねていた人物は数多くいたというけれど、
それがよくわかる一冊。
どちらも論理の世界。
論理学は学生時代に講義をとっていたけれど、
テキストはコーヒー牛乳の洗礼を受けてなんか茶色いぞ、という状態。当
然内容はおぼえていません。
つきつめていくときりがなさそうな学問です。

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映画:『ぼくらの七日間戦争』

2005-08-13 20:43:45 | 映画の感想
『ぼくらの七日間戦争』(菅原比呂志 監督)
★★★★☆

おおお、なつかしい~! と思い、深夜に放送していたのを録画。
中学時代、原作のシリーズを夢中で読んでいて、映画も何度か見ていました。
(個人的には『2』のほうが好き)
やっぱり、年を重ねた分、あの頃のように安易に子どもたちに同調することは
できず、
「こんなクソガキ(失礼!)のために駆り出されて、教師ってたいへんだよね…。
 本当はどうでもいいと思ってるんだろうな~」
とか、
「おとがめナシなの!? 自分のやったことは自分に跳ね返ってくるってこと、
 見せないと教育的によくないんじゃないかなあ」
とか思ってしまうのが悲しいのですが、今見ても、
子どもらしいロマンにあふれていておもしろいお話です。
相原と純子のカップルが、すんごい中学生らしくてかわいいの。
主役格の子はアイドルくさいんだけど、脇役の垢抜けない男の子たちがいい感じ。
当時は宮沢りえを特別かわいいとは思っていなかったのだけど、
こうしてみるとダントツにきれいな女の子だったのだな~と思う。
今見てもまったく野暮ったく見えない。


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