金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

26:中村安希『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日』

2024-02-09 19:15:37 | 23 本の感想
中村安希『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日』
★★★★★
 
【Amazonの内容紹介】
 

世界各地の生活に根付く“小さな声”を求めて 貧困、紛争、汚染、疫病。

まことしやかに語られる世界は、本当は一体どんな姿をしているのか。

自らの目で確かめるべく26歳の著者は2年間、47カ国にわたる旅に出た。

第7回開高健ノンフィクション賞受賞作。

****************************************
 
大先輩が「よかった」と言って貸してくれた本。
以前話題になっていて、私も題名だけ知っていた。
ノンフィクションなのだけれども、
各地のエピソードを描いた文章の一つ一つが短く断片的で、
それが文学的でもある。
旅の中で出会う人の無償の親切や愛といった美しいもの、
社会の構造から来るどうしようもなさ、やるせなさに、
情緒を乱されっぱなしだった。
そのせいか、読むのにずいぶん時間がかかってしまった。
 
女性である筆者が単身で治安の悪いとされる地域へ行くのは
読んでいてはらはらしてしまうのだけども、
決して無鉄砲ではなく、危機管理もしっかりしている。
旅人同士の助け合いだったり、現地の人々の親切だったりに
驚かされることも。
『青春を山に賭けて』を読んだときも、
現地の人々の親切さにびっくりしたのだけども、
旅慣れた人にとってはそれが普通なのだろうか。
 
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270-272:最近読んだ本

2023-12-31 15:55:54 | 23 本の感想
Amazonアソシエイト、画像が使えなくなってしまった模様。
表紙で本を覚えているところもあったので、
それで記録できなくなったのは残念。
 
伽古屋圭一『猫目荘のまかないごはん』
 
タイトルになっているわりに、ごはんの印象は弱め。
主人公の課題とその克服はきちんと描かれているし、
込められたメッセージもはっきりしているのだけども、
登場人物が「ストーリー上の役割」を果たしているだけで
血肉の通った人間という感じが薄かったのは残念。
 
 
 長月天音『キッチン常夜灯 』
 
暖かく優しい物語。
おいしそうな描写を求める人にとっては、
十分に期待に応えてくれる一冊。
1~2話ずつ細切れで読んでいたせいか、後半、
「主人公、シェフに対してえらくなれなれしいな?」
と感じてしまったのだけど、通して読んでいたら印象も違ったのかも。
恋愛要素がなかったのが、この物語にはよかった。
 
 
近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法 改訂版』
 
Amazon Audibleにて。
この本が強かったのって、著者の「不思議ちゃんキャラ」が立ってたのも
あったよな~と思う。
 
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269:三土たつお 編著『街角図鑑』

2023-12-24 18:13:47 | 23 本の感想
三土たつお『街角図鑑』
★★★★★
 
【Amazonの内容紹介】
 
パイロン、マンホール、送水口、段差スロープ…
集めることで見えてくる、街角デザインの秘密!

パイロンの役割とはなんだろうか。
注意喚起と物理的な柵として使われることがほとんどだろう。
そこでちょっと考えて欲しい、
パイロンを柵として設置した人の気持ちの奥底を。
それは、私有地にあるのか公有地にあるのか。
固定されているのか動かせるのか。
数は? 間隔は? メンテナンスは?

そう言われると、街中のパイロンが気になってくる。
赤いの、赤白、上が欠けてるもの、
ベースに錘をはめているもの、壊れているもの…。
街中にある、私たちの生活に欠かせなかったり、
とても重要な役割を果たしているものは、
実は「視界に入っていなかった」だけ。
そこに気づくと、俄然、街はおもしろくなる。

さらに、数を集めると、秘められたデザイン意図や、
使う人の無意識が見えてくる。
街歩きが楽しくなる、路上観察に目覚めてしまう図鑑です。
 
****************************************
 
マンホールのふたの写真をせっせと撮っている私に、
友だちがくれた本。
タイトルの通り、街角で見かけるいろんなアイテムの
名称や説明、種類を教えてくれる。
こういう何でもない風景に楽しみを見いだせるような生活、
絶対楽しいよな~。
世の中にはいろいろなマニアがいるというのもわかって
世界の多様さにわくわくしてしまう。
 
三角コーンやリサイクルボックスを擬人化した表現も
ユーモラスでほっこり。
 

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265-268:最近読んだ本

2023-12-24 18:09:49 | 23 本の感想
 亀山ルカ『毎日がうまくいく! 働く女子の わたしらしく「書く」習慣』

テーマ&ジャケ買い。

SNSやブログも扱っている点が、類書と違う点かな。

 
 加賀美真也『言いわけばかりの私にさよならを』
 
知人から回ってきたもの。
初めて読む作者さん。
ひねりのないストレートな、清く正しい学生もの。
中学生くらいが対象なのかな?
小学校高学年が読書感想文用に選ぶ本にありそう。

 
 樺沢紫苑『神時間術』
 
Amazon Audible にて。
実践的で面白いなあと思うところはいっぱいあったのに
タイトルでなんか恥ずかしくなっちゃうな。
あまり曜日の関係ない仕事をしているため
土日の過ごし方というのに悩んでいたのだけれど、
曜日に限らずストレスを24時間で解消していくという
スタイルには、なるほどと思った。
運動が集中力を高め時間を増やす、
授業を15分ずつ区切り休憩を容れる、というのにも。
 

 
 
 
 勝間和代『勝間式生き方の知見 お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』
 
Amazon Audible にて。
生活や仕事のスタイルは変わっても、
パワフルなところはずっと変わらない勝間さん。

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264:喜多嶋隆『潮風テーブル』

2023-12-24 18:00:16 | 23 本の感想
喜多嶋隆『潮風テーブル』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
この海辺の料理店には、あなたが求めているものがきっとある。

守りたい居場所が、ここにある――
海果は、この夏最大のピンチを迎えていた。
台風で家が大きな被害を受けた上、近所にパスタのチェーン店ができたのだ。
端物の魚介類や、地元産の形が不揃いの野菜を使って原価を抑えても安さで負ける。
落ち込む海果だが、相棒・愛の機転で新しい看板メニューが誕生。
やがて、2軒の店をめぐる事態は思わぬ展開に……。
葉山の海辺にある料理店を舞台に、素朴で実直な海果を取り巻く人間模様を描く。
潮風が吹き抜ける感動の物語。
 
****************************************
 
シリーズものだったのか……
前巻までを読んでいないから、キャラクターたちの人となりや事情が
よくわからないというのもあったけど、
ぶつ切りの文章と構成にかなり癖があって、慣れるのに手こずった。
そして、端々から昭和のにおいがする。
スーパーの駐車場のバーをぶっ壊して走り去るの、
令和の倫理観では受け入れられないと思うよ……。
 

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263:宇佐見りん『推し、燃ゆ』

2023-12-21 11:50:12 | 23 本の感想
宇佐見りん『推し、燃ゆ』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。
アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。
ある日突然、推しが炎上し——。
デビュー作『かか』は第56回文藝賞及び第33回三島賞を受賞(三島賞は史上最年少受賞)。
21歳、圧巻の第二作。
 
****************************************
 
芥川賞受賞作。
話題になっていたので、タイトルだけ知っていた。
Amazon Audibleに入っていたので聞いた。
 
タイトルや、女子高生が主人公であるというところから、
ポップでライトな雰囲気を予想していたのだけども、予想外に重い。
はっきりとは書かれていないものの、主人公はおそらく発達障害で、
病院で診断が出ているにもかかわらず、家族に理解があるとは言えないし、
高校生活にも適応できず、中退することになる。
 
この発達障害の設定が必要だったのか? という感想も見かけたけども、
彼女の生きづらさというのが、
「推し」にのめり込む背景にもなっていたと思うので、
やはり必要だったのではないかな。
 
彼女は同情を誘わないタイプの人間なので、
フォローされない状況も、それを良しとは思わないけれども、
「周囲の反応も、まあ、そうなるだろうな……」
という納得感があるのだった。
 
ここまで何かにのめり込んだことはないけれども、
「推し」に認知されたくない、その他大勢の中に埋もれていたい、
という気持ちはよくわかる。
私も、どんなに好きな作家さんでも、会いたいとは思わないもんな。
美男美女の芸能人は生で見てみたいと思うけれども(テレビで見るより美しいらしいから)、
話したいとは思わない。
相手にとってその時間に何のメリットがあるの?? と思っちゃう。
ただ健やかに幸せに、活躍していてくれ~と思うのみ。
 

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262:永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』

2023-12-21 11:22:13 | 23 本の感想
永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
◆第169回直木三十五賞・第36回山本周五郎賞 受賞作◆
疑う隙なんぞありはしない、あれは立派な仇討ちでしたよ。

語り草となった大事件、その真相は――。
ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、
美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。
父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は
たくさんの人々から賞賛された。
二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、
芝居小屋を訪れるが――。
新田次郎文学賞など三冠の『商う狼』、直木賞候補作『女人入眼』で
今もっとも注目される時代・歴史小説家による、
現代人を勇気づける令和の革命的傑作誕生!
 
****************************************
 
Amazon Audibleにて。
Kindleの読み上げ機能は固有名詞の読みがめちゃくちゃだったりするけど、
Audibleは人が読んでいるだけあってそうしたミスはなく、
しかもプロが読んでくれるから情感たっぷり。
今回みたいな人情ものにはよく合う。
 
仇討ち事件について聞きに来た相手に乞われ、
事件についてだけでなく
自らの半生を語る芝居小屋の人々。
話が進むごとに仇討ちは本当に行われたのか?という疑問がわいてきて、
それがミステリー的な要素となり、タイトルが「仇討ち」ではなく
「あだ討ち」である理由も明かされる。
優しくあたたかい人々を描いた人情物であるとともに、
「武士とは」「正義とは」ということも
考えさせられる内容にもなっていた。
第4話・第5話あたりからぐぐっと引き込まれるが、
当人が語るネタばらしの最終話は、やや冗長。
ここがもう少しきっぱりさっぱりしていたら★5だった。
 

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261:森崎緩『株式会社シェフ工房 企画開発室』

2023-12-16 22:02:53 | 23 本の感想
森崎緩『株式会社シェフ工房 企画開発室』
★★★☆☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
「これを使えばあなたもシェフに」。
美味しいレシピ満載の絶品グルメ小説!

札幌にあるキッチン用品メーカーに就職した新津。
トング式ピーラー、計量お玉やメジャースプーン。
ちょっと便利なアイディアグッズが人気の会社で、
次なるヒット商品の開発に取り組むが……。
製品知識のない営業マンや天才発明家の先輩、手厳しい製造担当など、
一癖あるメンバーに囲まれて悪戦苦闘。
やがて過去の挫折と向き合う中で自分を見つめ直していき――。
読んで満腹、美味しいレシピ満載の絶品グルメ×お仕事小説!
 
****************************************
 
明るく軽やかで前向き。
嫌な人も出てこないし、重い事情もテーマもなく、
最後までライトな読み心地のまま読了。
その軽やかさゆえに、主人公の課題とその克服が
取ってつけたように見えてしまうくらいだったけれど、
個人的にはこのムードはとても好き。
単巻で見ると、恋愛要素はいらなかったのでは……と
思うけれども(これも取ってつけたようだった)、
シリーズ化を見越して付けたのかな。
 
北海道グルメもおいしそうだし、
料理グッズの開発という切り口は他にはなくて新鮮。
 

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260:永井紗耶子『女人入眼』

2023-12-09 23:25:01 | 23 本の感想
永井紗耶子『女人入眼』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
『商う狼』で新田次郎賞をはじめ数多くの文学賞を受賞。
大注目の作家が紡ぐ、知られざる鎌倉時代を生きた女性たちの物語。

「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、
玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」
 
建久六年(1195年)。
京の六条殿に仕える女房・周子は、宮中掌握の一手として、
源頼朝と北条政子の娘・大姫を入内させるという命を受けて鎌倉へ入る。
気鬱の病を抱え、繊細な心を持つ大姫と、
大きな野望を抱き、それゆえ娘への強い圧力となる政子。
二人のことを探る周子が辿り着いた、母子の間に横たわる悲しき過去とは――。
「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれる謎多き事件・大姫入内。
その背後には、政治の実権をめぐる女たちの戦いと、
わかり合えない母と娘の物語があった。
 
****************************************
 
「大江広元の娘が主人公で、政子が毒親」という事前情報だけを得て読んだ。
 
てっきり主人公は、飛鳥井雅経と結婚した娘なのだろうと思っていたのだが、
全然違った。雅経は名前すら出てきていない。
 
これまで再三書かれてきた大姫の悲劇というものを、
こういう切り口でも描けるのか!! ……という驚きがあった。
鎌倉ものをいろいろ読んだ人にも楽しめるのではないかな。
 
 
以下、ネタバレ注意。
 
 
大姫が義高を思い続けて結婚を拒んでいる……というのが
政子が作った物語であり、彼女の意向に自分が逆らえば
周りの者たちに迷惑がかかるので、
大姫は母に逆らえず、自らの意志を示すことができない。 
 
「政子は過たない。なぜなら、過ちを認めず、誰かの責にするから」
 
繰り返されるこのフレーズの表す内容が、最後まで一貫して描かれていた
 
この時点で、北条がそこまで力を持っていたか?という疑問はあるけれども、
物語としては面白い。
「悪の一族・北条」という、割と古典的な設定ながらも、
陰湿な策謀というよりなりふり構わない実力行使だし、
悪女・政子がこれまでとはちょっと違う味付けをされている。
自ら育てた唯一の子である大姫を愛する思いは本当だが、
愛が、娘を本当に理解しようとする姿勢につながらず、
その愛ゆえに大姫が苦しみ続けるのだった。
頼家を擁する比企一族だけでなく、
三幡の乳母夫だった中原やその兄弟である大江が、
北条を脅かす政敵になりうる存在として描かれていたのも印象的。
 
宮中の女性たちの描き方も新鮮だった。
これまでかわいそうに描かれることが多かった任子は、明るく誇り高いまま。
そして、対任子では勝者として描かれることが多かった在子は、
実父の身分ゆえに不安定で、寄る辺ない立場にある女性として描かれていた。
 
義高事件の後の海野幸氏が、
事件を背負ったままの存在として登場してきたのはいいが、
主人公とくっついちゃったのはやや興ざめ。
 

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259:姫野カオルコ『何が「いただく」ぢゃ!』

2023-12-08 20:52:22 | 23 本の感想
姫野カオルコ『何が「いただく」ぢゃ!』
★★★☆☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
「人生の9/10は食べ物のことを考えている」
という姫野カオルコが、食のあれこれを斬る!
アジの刺身をもっとおいしく食べる提案から、
懐かしのテレビ番組「ロンパールーム」の牛乳の謎、
「いただく」という言葉のおかしな使われ方まで、
「そうそう、あるある!」とつい膝を打つ、
痛快な食エッセイ。
※食の雑誌『dancyu』2015年4月号~2018年3月号に
掲載された連載「料理を結婚」を、
大幅に加筆修正してまとめました。
 
****************************************
 
前の記事で紅茶に興味がないと書いたけれど、
お酒にも興味ないな……とこのエッセイを読んで思った。
飲むけど、ビールやワインの味の違いもよくわからないし、
日本酒は通らないまま来てしまった。
ということで、お酒については知らないことが多く、
「へー」と思いながら読んだのだけども、
食に関するエッセイなのに「おいしそう」とか「食べたい」とか
一切思わせられない、不思議な読み心地の本だった。
 

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