2024年の映画⑩『チャチャ』(酒井麻衣 監督)
★★★★☆
【公式サイトのあらすじ】
野良猫系女子の予測不能な恋の顛末とは!?
チャチャは、“人目を気にせず、好きなように生きる”をモットーに
自由気ままな日々を送る。
ある時、屋上で偶然出逢った樂に興味を持ち、
「お互いに好きなものは正反対だけど、2人いたら丁度いい」
とチャチャは次第に惹かれていくが・・・。
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公開初日に、映画館にて。
若い女の子向けの映画かと思っていたんだけども、
一人で見に来ているおじいさん・おじさんもいた。
※以下、ネタバレ注意
事前に「途中でジャンルが変わる」「えぐいことになる」という
コメントを見ていたので、そこまでの驚きはなかったのだけども、
「これは相当好き嫌いが分かれそうだな~!!」
というのが見終わった直後の印象。
さまざまなジャンルの作品が融合、というより、
パッチワークみたいに混じり合わずに隣り合っている感じ。
シリアス展開にコメディみたいな会話が続いたり、
急に花とか電柱が語り始めたりするので、
「そういう作りの映画なのね」と受け止められない人は
怒り出すかもしれない。
見終わった直後は★3かな~と思っていたのだけども、
一日経ってから思い出すと、★4。
後でこの映画のことを思い出し反芻すると、
「序盤でチャチャ自身が言っていたように、樂もまた、
懐いてきた野良猫を気まぐれに可愛がっていただけで
ずっと一緒にいたいとは願っていなかったし、
彼の中の孤独や空虚さも埋まらなかった」
「他者の心の中を見ることはできないし、
理解することもできない」
ということがひしひしと感じられて、身にしみた。
恋愛ものにしては驚くほど早く、
ヒロインのチャチャが相手に恋をして一緒に住み始めるのだけれども、
陰気で無気力であっても、おいしいごはん作ってくれて、
世話してくれて、ビジュアルは中川大志くんだからね。
アプローチに慣れた「腕に覚え有り」な女の子なら話は早い。
でも、アプローチはチャチャからで、
そして、ずっと優しく世話をしてくれていても、
最初から最後まで樂はチャチャに恋をしてはいないし、
他の人に心が向いている。
決して鈍感ではないチャチャはそのことに気づいているから、
秘密に気づいてもすぐには尋ねることができない。
この一方通行の恋のやるせなさ、残酷さ……。
樂は弱さを抱えつつも、明らかに普通から逸脱した思考の持ち主で、
中川くんの役としては珍しい感じ。
ヒモ役の塩野くんのキャラも、かなり面白くて
出番は多くないのに印象的だった。
そして伊藤万理華さん、この映画で初めて知った方なのだけども、
あざとくて、同性に嫌われて、でもその傷つき具合が共感を呼ぶ、
難しい役を違和感なく演じていたと思う。
出てくるアイテムも含め、映像がとってもキュート。