金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

15:綿谷りさ 『夢を与える』

2009-05-31 15:09:34 | 09 本の感想
綿谷りさ『夢を与える』 (河出書房新社)
★★★★☆

夜、寝付けなくて読み始めたのだけど、
3分の1ほどですでにズーンと暗い気分に。
今朝、残りを読んで、さらに気分が沈む。

あらすじだけ見れば、チャイルドモデルから芸能界入りした
女の子の栄華と転落――という陳腐な表現に
なってしまうのだけど、読ませる。
中学時代に好きだった男の子が象徴するものや、
冒頭の母親のエピソードと後半の夕子の相似が
効いてる。
主人公の夕子に、文壇のアイドルとしてもてはやされた
綿谷さん自身を重ねて見てしまうんだけど、
やっぱりどこか作者自身を投影しているところは
あるだろうし、そこも興味深い。

好きかって言われたらそうでもないのだけど、
良かったです。


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14:森浩一・門脇禎二『継体王朝―日本古代史の謎に挑む』

2009-05-30 23:30:22 | 09 本の感想
森浩一・門脇禎二『継体王朝―日本古代史の謎に挑む』 (大巧社)
★★★☆☆

しゃちほこ村と同県の春日井市で行われた
シンポジウムの内容をまとめたもの。
シンポジウムシリーズというのがあるらしく、
そのうちの一冊。
すでに絶版っぽいのだけど、もともとものすごく狭い範囲でしか
流通していなかったっぽい本だ。

各研究者の講演・研究と、それをもとにした
討論の記録がメイン。
討論や対談のレポートって苦手。
登場するのが二人ならいいんだけど、3人以上出てくると
誰が誰だかわからなくなるんだもん!!
「シンポジウム」と書いてあるのをちゃんと見れば
よかったんだけど、門外漢はまず誰か一人の著作を読んで
一貫した主張をおさえたほうがよいですね。

思いがけず百済王敬福の名前が出てきてなつかしかった。
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13:原田宗典 『ぜつぼうの濁点』

2009-05-30 23:13:21 | 09 本の感想
原田宗典『ぜつぼうの濁点』 (教育画劇)
★★★☆☆

ひらがなの国に、ある日とつぜん「゛」(濁点)だけが現れた。
この濁点、「ぜつぼう」に長年仕えてきたのだが、
主が始終絶望しているのは自分のせいではないか?と
主のために暇を願い出たのだった。
「どなたかどなたか私をもらってやってはくれますまいか」
頭を下げる濁点だったが、「やくにん」も「やもめ」も
「やくざ」もこの望みをはねつけるのだった…

***********************

先輩からお借りしました。
初出は『ゆめうつつ草紙』。
『ゆめうつつ草紙』は既読のはずだけど、
まったく記憶にないよ。はて。

擬人化されたことばたちのシュールな世界。
「椿事」だとか難しい言葉も使ってあるのだけど、
小学校4~6年生くらいだと
濁点がつくことによって言葉の意味が変わる
おもしろさを感じられるかな?
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12:平岩弓枝 『平安妖異伝』

2009-05-30 18:16:19 | 09 本の感想
平岩弓枝『平安妖異伝』 (新潮社)
★★★★☆

父・兼家から兄・道兼に藤原家の中心が移るころ、
若き日の道長が少年楽士・真比呂と出会い
都を騒がす快異を解決する連作短編集。

シリーズ2冊めとは知らずに先に読んでしまったのもあり、
道長の冒険』は全然おもしろく感じられなかったのだけど、
これはおもしろかった。
よく考えると、事件を解決してるのはたいてい
道長じゃなくて真比呂なんだけど……
「大鏡」の意地悪い道長ではなく、
道兼や定子にもやさしい道長です。
コメント (2)
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11:川上卓也 『“貧乏道”を往く』

2009-05-30 17:54:59 | 09 本の感想
川上卓也『“貧乏道”を往く』(春秋社)
★★☆☆☆

以前読んだ『貧乏真髄』がおもしろかったので
借りてきました。
『貧乏真髄』は自らの生活について語ったもので、
日記やごはんブログみたいに人の生活ぶりが
垣間見えるものが好きなわたしにとっては
おもしろかったのだけど、
これは著者の思想を全面的に押し出したもので
どちらかと言えばライトな新書系?
経済とメディアに踊らされる現代日本社会について述べ、
流行としてではないシンプルライフを推奨したもの。
途中で退屈になって斜め読みになってしまった。
経済についてもメディアについても、
いやになるほど読んでるし、特に目新しいこともなし。

「限定商品と言ったって、実際はプラスチックやビニル、
化学繊維やメッキです」
は良かったな。
最近、貨幣経済のシステムが崩壊したら……と
しょうもないことを考えていたのだけど、
買うなら金(ゴールド)か宝石だな。
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10:山田詠美 『アンコ椿は熱血ポンちゃん』

2009-05-30 17:36:21 | 09 本の感想
山田詠美『アンコ椿は熱血ポンちゃん』(新潮社)
★★★☆☆

前にこのシリーズを読んだのは2年前か(これ→『熱血ポンちゃん膝栗毛』)。
読んでもたいてい内容を忘れてしまって
同じのを二回読んでいても途中まで気づかないくらい。
本当に暇つぶしだなあ……って感じで、
たまたま目についたら借りてくるだけなのだけど、
なぜだかちょうどよいタイミングで発行順に
わたしの目の前に登場するのであった。

この人の、自分の価値観に合わないものをこきおろす
了見の狭さみたいなものが苦手だったのだけど、
小説にしてもエッセイにしても、そういう攻撃性が
影をひそめてきたような気がする。
おもしろく読めました。
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9:谷崎潤一郎 『ちくま日本文学14 谷崎潤一郎』

2009-05-18 12:34:44 | 09 本の感想
谷崎潤一郎『谷崎潤一郎 ちくま日本文学14(筑摩書房)
★★★★☆

【収録作品】
・刺青
・秘密
・母を恋うる記
・友田と松永の話
・吉野葛
・春琴抄
・文章読本 抄

******************************

実はまだ「細雪」も読んでいない。
なんとなく手を出せずにいたのだけど、
このシリーズは表記を読みやすく変えているせいか
抵抗なく読める。
ミステリーの色合いを含んだ「秘密」「友田と松永の話」が
おもしろい。
「吉野葛」は、友人とともに吉野を訪れた際の見聞きした
吉野の風物、南朝や義経にまつわる伝説を記したもの。
神秘の吉野! いいなあ。
「文章読本」も良かった。これは仕事に使えそう。
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8:穂村弘 『世界音痴』

2009-05-08 19:59:00 | 09 本の感想
穂村弘『世界音痴』(小学館)
★★★★☆

仕事で紹介したのと知り合いに貸すことになったため、
なんとなく再読
読むのが3回目なので、さすがにもう笑えないし、
心を揺さぶられることもなかったのだけど、
初めて読んだときの衝撃は思い出す。

貸した相手が男の子だったからか、
初読時のときめきは共有できなかったようで、
返してもらうときに
「なんで貸してくれたんですか?」
「? おもしろかったから」
「なんか他意があるのかと思った」
というやり取りがありました。
「おれはダメ男だ、おれはモテない、って話だよ」
って最初に言ったために
「あんたもモテないダメ男だからね」
という意味だと思われたのかしら……?
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7:内田樹 『下流志向』

2009-05-03 23:56:16 | 09 本の感想
内田樹『下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち』(講談社)
★★★★★

珍しく、仕事とは関係なしに論説系。
いやいやーおもしろかった!!
「学びからの逃走・労働からの逃走」をテーマにした
講演の内容をまとめたもの。
教育を受ける権利を放棄する子どもたちやニートが
生まれた社会的・心理的な背景について、
苅谷剛彦、諏訪哲二、山田昌弘らの著作からの引用を交えて
説明している。
私立中・高生と公立中・高生の学びに対するモチベーションの差が
何に起因するか、という説明には目からウロコ。
久しぶりにおもしろい論説を読んだなー。


以下、自分用に引用メモ。↓

・教育の逆説は、教育から受益する人間は、自分がどのような利益を得ているかを、教育がある程度進行するまで、場合によっては教育過程が終了するまで、言うことができないということにあります。(p.46)

・子どもたちは消費者マインドで学校教育に対峙しているのです。(p.50)

「自分探しの旅」のほんとうの目的は「出会う」ことにはなく、むしろ私についてのこれまでの外部評価をリセットすることにあるのではないかと思います。(p.71)

・リスク社会とは、そこがリスク社会であると認める人々だけがリスクを引き受け、あたかもそれがリスク社会ではないかのようにふるまう人々は巧みにリスクをヘッジすることができるのです。(P.84)


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6:山本文緒 『日々是作文』

2009-05-03 23:32:37 | 09 本の感想
山本文緒『日々是作文』(文藝春秋)
★★★★☆

再読。前回読んだのは3年前か。
このところめっきり本を買わなくなってしまったので
魔性の男Amazonとのおつきあいも途絶えていたのだけど、
久々に見てみたら文庫落ちしてたのね。
二回目なのでとりたてて新しい感想もないのだけど、
さまざまな媒体で発表していたものを集めたものなので
やや一貫性に欠けるかな?
一回目に読んだときは、初めて読む文章だったので
気づかなかったけど。
わたしは山本さんの小説の「意地の悪さ」が好きだけれど、
作者本人の幸せを素直に享受できないところにも
共感しているのだろうなあ……となんとなく思った。
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