金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

147:神野志隆光 『古事記と日本書紀―「天皇神話」の歴史』

2005-11-30 13:01:19 | 05 本の感想
神野志隆光『古事記と日本書紀―「天皇神話」の歴史』(講談社現代新書)
★★★☆☆

旅行の予習その2。
読み終わって思うに、どう考えても一般向けの内容ではない。
研究者の文章だと思う。記紀研究の入門書にはいいかも。
とは言っても門外漢のわたしでもなんとかついていくことができたので、
神話の内容を知っていて、それにまつわる基本的な知識があれば
理解はできるはず。
本書では「古事記」「日本書紀」を別の神話であると位置づけている。
記紀が時代の政治的利害に沿って解釈され、書き換えられたということは
知っていたが、「両者は同じ神話である」とわたしも信じていたので、
この本の視点には驚き。
両者の不整合性を埋めようと、多くの人々が四苦八苦していたのだね……。
「国史大系」とか、既存の解釈を疑ってかかる姿勢とか、
卒論に苦しめられていた頃を思い出してなつかしかったです。

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146:河島弘美 『ラフカディオ・ハーン―日本のこころを描く』

2005-11-30 12:59:28 | 05 本の感想
河島弘美『ラフカディオ・ハーン―日本のこころを描く』
(岩波ジュニア新書)
★★★☆☆

旅行の予習。
小泉八雲については、日本人女性と結婚して怪談を書いたことくらいしか知らず、
新書『明治の音』でちらりと読んだだけなので、まずは子ども向け伝記でお勉強。
子ども向けなので内容は割りと表面的にとどまり、毒のない視点で描かれている。
妻セツとの出会いや、ハーンの死後、親交のあったチェンバレンが
彼を悪し様に書くに至った理由、などなどくわしく知りたいと思う点が
いくつかあった。
ハーン研究についても言及があって、入門書としてはよかったと思う。

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145:銀色夏生 『つれづれノート〈3〉毎日はシャボン玉』

2005-11-26 12:57:55 | 05 本の感想
銀色夏生『つれづれノート〈3〉毎日はシャボン玉』(角川文庫)
★★★★☆

これでシリーズ制覇。
もう新しいものが出ないと思うとさびしい。
食べたものだとか行ったところだとか、たわいもない日常の風景が
描かれているだけの部分でも、なぜかしっかりと読んでしまう。
そして銀色さんの思想みたいなものにはっとさせられる。
今回、うんうんとうなずいてしまったのは、
人の幸不幸は、その人がものごとをどうとらえるか、
現象のどの側面を選択するかの問題である、というような内容のところ。
不遇を嘆いてばかりいる人は、自分で自分を不幸にしている。
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144:三浦しをん 『夢のような幸福』

2005-11-25 12:56:36 | 05 本の感想
三浦しをん『夢のような幸福』(大和書房)
★★★☆☆

一章はおもしろくて何度も笑ってしまったのだけど、それ以降は
あまりわたしのツボを刺激せず、それほどでもなかったな……。
旅行記が多めだったのも原因かも?
実際に自分が行った青森の話は比較的おもしろく読めたのだけど。
ボーイズラブにはまったく興味のないわたしですが、
書かれているおたく話の大半をなぜか理解できてしまうことに困惑。

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143:湯本香樹実 『ポプラの秋』

2005-11-23 12:54:13 | 05 本の感想
湯本香樹実『ポプラの秋』(新潮文庫)
★★★★★

かなり昔に買って、未読のままだったもの。
『夏の庭』の例があったのに、何も考えずに通勤途中の電車で
読み始めてしまい、たいへんだった。
「これでもか!これでもか!」と襲いかかる泣きポイント。
泣き出しそうになるたびに読むのを中断して、冷静でいられない。
小さな女の子が不安に揺れながらも、
周囲の人々から受け取っていた金色の記憶。
おばあさんを核としたその記憶の中のできごとが現在に作用して、
大人になった彼女の心をまたあたためる。
弱点を完全に押さえられてしまった感じ。泣けました。

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142:宮城谷昌光 『太公望〈下〉』

2005-11-21 12:52:34 | 05 本の感想
宮城谷昌光『太公望〈下〉』(文藝春秋)
★★★★★

とうとう読み終わった!
一冊一冊が厚いので、毎回手をつける前にためらってしまうのだけど、
読み出すとあっというま。
あいかわらず読みながら「えーっと、この人誰だっけ?」を繰り返してましたが、
時代が動くときの胸の躍るような空気を前にして、そんなことは瑣末な問題です。
日本の歴史小説で興味をひかれるものは、だいたい高校生のころまでに
読みつくしてしまった感があって、ずっと離れていたのだけど、
今後中国史がマイブーム(死語?)になりそうな予感
邑姜って出てこないの??と思ってましたが、彼女が邑姜なのね。
望を慕う継の気持ちがせつない。
主人公たちの長い年月を思い、じーんと来ましたよ!


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141:三浦しをん 『秘密の花園』

2005-11-20 12:51:09 | 05 本の感想
三浦しをん『秘密の花園』(マガジンハウス)
★★★★☆

実際に身をおいたら耐えられないだろうけど、見たり読んだりする分には
女子校ものが大好きなわたし。
吉田秋生の『櫻の園』に通じるオムニバス形式の物語で、
あとがきや帯から想像したのとはまったく異なる雰囲気。
喪失と、女であることから逃れられない痛みが、三人の少女の視点から
描かれていて、全編にわたって暗い影がさしている印象。
「洪水のあとに」は、最初、ちょっと表現が大げさ?と思ったのだけど
……そりゃートラウマにもなるわ!!
少女期特有の繊細さと残酷さに男性の無理解が作用して、やるせない。
気が滅入ってしまった。
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140:乃南アサ 『好きだけど嫌い』

2005-11-15 12:49:04 | 05 本の感想
乃南アサ『好きだけど嫌い』(新潮文庫)
★★★☆☆

この人、エッセイも出していたのね。
世の中の風潮を批判する内容の文章は、良くも悪くも正統派。
「問題集に使われそうな文章だなあ~」と思いながら読む。
文庫版あとがきにもちょっと触れられていたのだけど、
「乃南さん独特の毒」がなかった気がしてちょっとさびしい。
(風潮批判は誰がしても、独特のひねりがない限り、
 ありきたりに思えてつまらないものだ)
反面、乃南さんの私生活や日常を書いた部分はおもしろくて、
仕事の性質に対する不満や金銭トラブルにまつわる考え方には
「そうだよね~!」とうんうんうなずいてしまうのでした。
ほかにもエッセイ出てるなら、読んでみたい。

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139:ル=グウィン 『影との戦い―ゲド戦記 1』

2005-11-14 12:47:24 | 05 本の感想
ル=グウィン『影との戦い―ゲド戦記 1』(岩波書店)
★★★★☆

功名心が強く傲慢で無謀な魔法使いゲドが、自らの奢りの結果と
戦い続ける物語。
ファンタジーでカタカナ盛りだくさん、わたしの苦手要素がてんこ盛り!
……と思われたのだけど、そうでもなかった。
児童文学ではあるのだけど、暗喩に満ちていて、大人が読んでも
深く考えさせられるお話だと思いました。
明快さがないので、むしろ大人向けかも。
こういう子どもって大嫌い!と思いつつ読んでいたのだけど、
後半ではゲドが自らの過ちを受け止め、真摯に立ち向かって行くようになり、
彼の孤独についても理解できて素直に読めました。
この勢いを逃すとまた手付かずになりそうなので、
早いうちに続きを読んでおきたいものです。

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138:アンソロジー 『恋愛小説』

2005-11-13 12:45:45 | 05 本の感想
アンソロジー『恋愛小説』(新潮社)
★★★★☆

川上弘美、小池真理子、篠田節子、乃南アサ、よしもとばなな、
五人の女性作家による恋愛アンソロジー。
酒ばっかり出てくるなあ……と思ったら、もとはサントリーとの
コラボレーションで出ていたものなのね。
好きな作家さんが多くて読み応えありの一冊でした。

篠田節子「夜のジンファンデル」
ストイックなのに官能を感じさせる。
この人の話を読むのは本当に久しぶりだけど、うまいなあ、好みだなあ。
相手は利己的で無神経な男だけれど、憎めない感じがする。
主人公の乾いた視点も◎。

よしもとばなな「アーティチョーク」
なんだかよくわからないが、読みながら泣いてしまった。
お酒を愛したおじいちゃんの思い出と、終焉を迎えそうな恋人との関係を
描いたお話。
「思い出作り」って嫌いなんだけど、思い出の効用というのはあるのだろう。
いっしょにいったお店、いっしょに飲んだ、食べた、おいしいもの。
よい思い出は、めぐりめぐって未来にやさしいはたらきかけをすることがある。
胸に刻んでおきたい。
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