金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

68:瀬戸内寂聴 『女人源氏物語〈上〉』

2007-05-30 11:30:44 | 07 本の感想
瀬戸内寂聴『女人源氏物語〈上〉』(小学館)
★★★★★

光源氏の周辺の女性たちが語る「源氏物語」。
上巻は「桐壺」から「常夏」まで。
回想や思い出話という形をとっているので原作そのままではないし、
アレンジを加えている部分も結構あると思うのだけれど、
原文で読んだところを見る限りでは、
かなり忠実に原文のエピソードと表現を織り込んでいます。
愛蔵版でかなり厚く重く、持ち歩けないので
夜寝る前にちょっとずつ読み進めていたのだけれど、
女の情念の濃さにあてられて毎晩寝つきが悪くなって困ります

以前から光源氏のことは
「気持ちの悪い男だなあ」
と思っていたのだけれど、紫の上を引き取ろうとするところや
玉鬘に言い寄るところではゾーッ!
調子のいいことを言いまくり、自分を可哀想がってめそめそ泣いたり
愛人の悪口をほかの愛人に言ったりする源氏に本気でムカムカ。
しかし、高貴な身分で美貌の持ち主と来た日には
やっぱりモトモに育つわけないよね……。

源氏の薄っぺらなところを知りつつも、
思い切れずに死ぬまで苦しみ続けた六条御息所があわれ。
生霊になって二人も取り殺しちゃって
完全にホラー担当といった感のある彼女だけれども、
源氏への恋情からくる嫉妬っていうよりは、
それまでの華やかな人生に対する誇りゆえという感じ。

下巻も楽しみです。
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67:宮本輝 『はじめての文学 宮本輝』

2007-05-28 17:49:18 | 07 本の感想
宮本輝 『はじめての文学宮本輝』(文藝春秋)
★★★★★

【収録作品】
「星々の悲しみ」「真夏の犬」「力道山の弟」「トマトの話」
「力」「五千回の生死」「道に舞う」

「文学の入り口に立つ若い読者へ向けた自選アンソロジー」
と銘打って、本屋さんで平積みになっていたシリーズ。
あんまり読んだことのない作家さんから……というわけで
最初は宮本輝。
この人の本できちんと通して読んだのは『青が散る』くらい。

いずれも著者自身の体験がもとになっていると思われる物語で、
表現のディティールにリアリティを感じさせられる。
少年時代のまばゆさと子供の目から垣間見た大人の世界、
青年時代の鬱屈とかなしみに
郷愁めいた気持ちが湧き上がってきました。
大学受験に失敗して予備校に通うことになった主人公が、
ある絵画と出会い、別離の悲しみを体験する「星々の悲しみ」が
いちばん好き。
膨大な数の著作に、いったいどこから手をつけていいのやら……
という感じだけれど、ほかの本も読んでみたい。

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66:山田詠美 『熱血ポンちゃん膝栗毛』

2007-05-26 15:07:45 | 07 本の感想
山田詠美『熱血ポンちゃん膝栗毛』(新潮社)
★★★☆☆

発行順もわからないし(調べればわかるが)、
どれを呼んだのかも定かでないシリーズ。
2006年末に発行だから、たぶん読んでなかったはずなのだけど
村上龍の髪型についてファックスを送る話だけは
確実に読んだ記憶が……。
雑誌連載のときに読んだのかしら??
仕事のためにたまに文芸雑誌を買うので、
このシリーズに限らず、よく記憶が混乱してしまう。

いつも読み終わったあとには、
ほとんど内容を忘れてしまうのだけど
そのときそのとき楽しめる、ささやかだけど安定した
おもしろさがあって好き。

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65:赤木かん子編 『あなたのための小さな物語8 解放』

2007-05-26 14:52:31 | 07 本の感想
赤木かん子編『あなたのための小さな物語8 解放』(ポプラ社)
★★★☆☆

【収録作品】
ルーシー・モード・モンゴメリ「めいめい自分の言葉で」
ロバート・F・ヤング「ピネロピへの贈りもの」
川原泉「森には真理が落ちている」
レイ・ブラッドベリ「アンクル・エナー」

わたしは本を読むとき、文章のリズムというのに
すごくこだわってしまうので、翻訳ものは苦手なものが多い。
今回収録されてた翻訳もの3編も、読みづらさが先にたって、
物語自体を楽しむことができず……。
ヤングのはおもしろかったけど。

川原泉ってすごくよく聞く名前だけど、
ライトノベルの作家さんかなにかだと思ってた
おもしろかった。
メイプルタウン物語、子どもの頃よく見てたなあ~。

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64:高山なおみ 『日々ごはん〈8〉』

2007-05-23 22:47:13 | 07 本の感想
高山なおみ『日々ごはん〈8〉』(アノニマ・スタジオ)
★★★★☆

頭の中がぐるぐるもやもやしていたので、
仕事帰りに本屋へ駆け込んで購入
気持ちをおだやかに、前向きにさせる本って
いろいろあると思うけど、最近のわたしにとってのそれが
このシリーズ。
HPでも見られるのだけれど、やっぱり本の形で読みたい。
読むといつも、ちゃんとごはんを作って食べて、
自分のやりたいことをがんばろうと思えます。

お菓子をごはん代わりにしてしまう、という話に、
そういうこともあるよね、というようなニュアンスで
返答していたのが印象的でした。
料理に携わる人って、そういうことにうるさそうだけど。
良くないことはみんなわかっているのだから、
そういうときに否定的に強い言い方をしないのが
いいなあと思いました。

なんとなく、言葉のはしばしから、
高山さんは小説を書きたいんじゃないかな?
と思ったのだけど、どうなんでしょう。

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63:赤木かん子編『あなたのための小さな物語20 居場所』

2007-05-21 17:27:33 | 07 本の感想
赤木かん子編『あなたのための小さな物語20 居場所』(ポプラ社)
★★★☆☆

【収録作品】
橋本治「愛の矢車草」
小松重男「代金百枚」
アイザック・アシモフ「迷い犬」

幼くして父親になってしまった少年が、子供を
引き取ろうとするところからはじまる「愛の矢車草」。
主人公の卓也がいろんな意味で不気味で、
母の智恵子の恐怖がよくわかる。
そして父の文彦の大人げなさと言ったら……。
人のいやな面を容赦なく描いているのだけれど、
おもしろい。
しかし、なぜ矢車草なのだ……?
『蝶のゆくえ』でも思ったのだけれど、
橋本治のタイトルセンスはよくわかりません。

「代金百枚」は時代小説。
やっぱりな、というオチではあるのだけど、
ほのぼのユーモラスな作風で楽しめました。

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62:赤木かん子編 『あなたのための小さな物語12 結婚』

2007-05-16 21:42:59 | 07 本の感想
赤木かん子 編『あなたのための小さな物語12 結婚』(ポプラ社)
★★★☆☆

【収録作品】
赤川次郎「離婚案内申し上げます」
アンデルセン「父さんのすることにまちがいはない」
ボブ・ショウ「去りにし日々の光」
古谷三敏「たらちね女房 古今亭朝治」
ギリシャ神話「おかの上の二本の木」
北欧神話「ニオルドとスカディ」

結婚あるいは夫婦をテーマにしたアンソロジー。
一編一編が短かったせいか、インパクトが薄かったなあ。
編者の赤木さんは赤川次郎をかなり評価している様子。
「薄さ」が気にならないといえばうそになるけれど、
ちょっとほろっと来るような、うまい話がセレクトされていて、
このシリーズを読み始めたおかげで
赤川次郎に対する評価が結構かわったような気がする。
今回は神話が取り上げられているのもおもしろい。

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61:クリエーターズワールド編集部 『執筆前夜』

2007-05-16 08:54:29 | 07 本の感想
クリエーターズワールド編集部 『執筆前夜』(新風舎)
★★★☆☆

Web連載から10人の女性作家の回をセレクトして
まとめたインタビュー集。
登場作家は恩田陸、三浦しをん、角田光代、酒井順子、
加納朋子、群ようこ、中村うさぎ、野中柊、林あまり、
鷺沢萠。

好きな作家さんの舞台裏をのぞくのは楽しいのだけど、
人気作家となると、すでにエッセイやインタビューで
デビューの経緯や執筆スタイルが明かされているので
あまり新しさはなかったな~。
わりと表面的な話にとどまっていた感じ。
林あまりさんだけ名前を知らず、
「なんだなんだ、新風舎が自分のところの作家を
ねじこんできたのか?」
などと邪推しておりましたが、この方は歌人でした。
すみません……
本、読んでみたいなあと思いました。

そして、故・鷺沢萠さんのインタビューだけが、
その口調といい内容といい、
なんか異質だ……と思っていたら
そういうことだったのね。
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60:津原泰水 『ブラバン』

2007-05-10 10:11:55 | 07 本の感想
津原泰水『ブラバン』(バジリコ)
★★★★☆

披露宴でもう一度当時のメンバーで演奏してほしい。
高校時代の吹奏楽部の先輩の頼みを受け、
当時の部活仲間たちに連絡をとることになった主人公。
高校時代の回想をまじえながら、仲間たちがたどった人生と
四半世紀も前の謎が明らかにされる。

この人、昔ティーンズハートにいた作家さんですね。
(読んだことないけど、いとこが熱心に読んでいた)
本屋で平積みになっていたのを見て気になって、
借りてきました。
おもしろかった!
中年になってから高校時代の部活仲間と再会、
当時の思い出とそれぞれのたどった人生を描く……という、
もはやひとつのパターンとなったスタイルの物語だけど、
まぶしくて、ちょっとせつない。
登場人物が多すぎて覚えられないし、
その分手薄になってすっきりしないところもあるのだけど、
群像青春劇といった感じ。
体育会系じゃなくて文科系というのもちょっと新鮮。
わたしは音楽にはまったく興味がないので、
魅力半減だったかもしれないけれど、
それでも充分楽しめました。
リアルタイムでビートルズ、な世代の人には、
もっと胸に響くんじゃないかな?

先生のオチは……最初にすぐ名前チェックしてしまったので
すぐにわかっちゃった。

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59:川上弘美 『ニシノユキヒコの恋と冒険』

2007-05-06 14:42:52 | 07 本の感想
川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』(新潮社)
★★★★★

感じの良い容姿とふるまいで次々と女性遍歴を重ねる
ニシノユキヒコ。
恋のはじまりと終わりを、彼と交流のあった10人の女性たちが
語る連作短編集。

『センセイの鞄』を除き、すごく好き!と言える話のなかった
川上弘美だけれど、これは好き
ふわふわとしたうわの空の雰囲気で、ちょっと悲しくせつない。
好きなフレーズもいっぱい。

こういう男の人っているなあ。
きっと同性から見るとたいしたことがなくて、
軽んじられそうなんだけど、異性にはめっぽうもてて、
最後には憎まれずに憐れみを抱かせてしまうような。
学生時代のバイトの先輩にすごく似たタイプの人がいたので、
なんだか妙な説得力を感じてしまった。
自己憐憫の強い人がわたしは苦手で、読みながら
「自分のこと可哀想だと思ってるだろニシノ!
と思ったのだけれど、実際近くにいたら
恋しちゃうかもしれないわ~
本屋さんのポップに
「結局女はダメ男が好き!」
と書いてあったのにウケました。


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