東直子『とりつくしま (ちくま文庫)』
★★★☆☆
【Amazonの内容紹介】
死んだあなたに、「とりつくしま係」が問いかける。
この世に未練はありませんか。
あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ、と。
そうして母は息子のロージンバッグに、
娘は母の補聴器に、夫は妻の日記になった…。
すでに失われた人生が凝縮してフラッシュバックのように現れ、
切なさと温かさと哀しみ、そして少しのおかしみが滲み出る、
珠玉の短篇小説集。
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先輩から借りたもの。
著者のことは歌人として名を知っているのみだった。
今回初読み。
ものに宿る使者たちの物語。
「白檀」、片想いしていた既婚者の書家の、
夏だけ使われる扇子に宿る、というのが
慎ましくて切ない。
さらりと読めるけれども、かすかな余韻も。
どの話も、人の醜いところを封じているように思えたけれど
番外編は業のようなものを感じて恐ろしかった。