金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

71:アイリーン・スピネリ 『ここがわたしのおうちです』

2012-06-30 09:16:08 | 12 本の感想
アイリーン・スピネリ『ここがわたしのおうちです』(さえら書房)
★★★☆☆

父と母と妹と暮らすローズは、星や宇宙にまつわる話が大好き。
親友と仲良く遊び、暮らしていたが、父がリストラされてしまう。
そんなとき、ひとりで暮している祖父が怪我をして、
一家は祖父の家へ身を寄せることになる。
好きな家や親友と別れなければならず、意気消沈するローズだが、
引っ越し先で新しい友人と出会い、親友とのつながりを保つ手段も得て
引っ越し先を自分の居場所だと考えられるようになっていく。

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今年の小学校中学年の読書感想文コンクール課題図書。

この本を取り上げるとアクセス数がアップするのがわかっているので
先に書いておきますが……
読書感想文の役に立つことは、このブログには一切書いてありませんよ!

課題図書には「○○枠」というのが設定されてるよね~と思うんだけど、
今年の「海外文学枠」はこれ。

ほとんどがローズの日記とリスト、詩で構成されているため、
文書量が少なく、子どもにとってはテーマがやや見えにくいかも。
(リストと詩、というのがいかにもアメリカっぽい気がした)
なんでこれが課題図書に選ばれたんだろう……と思ってたんだけど、
あとがきを読んで、東日本大震災で転居を余儀なくされた人たちを
意識しているのだな、というのがわかる。
逆に言えば、あとがきを読まないと意図がつかめない。
自身の引っ越し、あるいは友だちの引っ越しで別れを経験している子にとっては、
自分自身に引き寄せて感想を書きやすい本ではないかしら。
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70:堀米薫 『チョコレートと青い空』

2012-06-29 22:51:17 | 12 本の感想
堀米薫『チョコレートと青い空 (ホップステップキッズ!)』(そうえん社)
★★★☆☆

農業を営む「ぼく」の家に、研修生のエリックさんがやってきた。
エリックさんがガーナ出身だと聞いて、
チョコレートをもらえるのではないかと期待する妹。
ところが、エリックさんは大人になるまで
チョコレートを食べたことがなかったという。
低賃金でカカオを割る仕事をしながら、
チョコレートを口にしたことがない子どもが
ガーナにはたくさんいるというのだ。
小学生の「ぼく」と幼い妹、そして反抗期真っ盛りの兄は、
エリックさんとの出会いによって変わっていく。

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今年の小学校中学年の読書感想文コンクール課題図書。

この本を取り上げるとアクセス数がアップするのがわかっているので
先に書いておきますが……
読書感想文の役に立つことは、このブログには一切書いてありませんよ!

課題図書には「○○枠」というのが設定されてるよね~と思うんだけど、
今年の「社会問題枠」はこの本。
農業の後継者問題や食糧自給率の問題、貧困と南北問題……と
さまざまな問題にそれとなく触れていて、テーマ性で言えば
今年の中学年の課題図書の中ではいちばん書きやすいのでは?
ただし、「書きやすい」というのは大人の視点で見たときの話。
すごくいい話なんだけど、小学校3・4年生にとっては、
前提となる経済や社会構造に関する知識やイメージがないので
この本を読んだだけでは、食糧自給率も貧困も格差も、
リアリティを持った問題として受け止められないのではないかしら。
自分の生活に引き付けて考えることが難しく、
大人の誘導がないと「かわいそう」とか「大変だ」とか
他人事の感想しか出てこなさそう。
5・6年生くらいになって、ようやく少し理解できるようになるのかも……
という内容。


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69:角川文庫編集部 編『きみが見つける物語 友情編』

2012-06-28 09:50:45 | 12 本の感想
阿川佐和子『きみが見つける物語 十代のための新名作 友情編』(角川文庫)
★★★★☆

【収録作品】
坂木司「秋の足音」
朱川湊人「いっぺんさん」
佐藤多佳子「サマータイム」
よしもとばなな「あったかくなんかない」
重松清「交差点」

仕事で読んだ本。
まったくの初読だったのは、「秋の足音」だけ。
こういうティーンズ向けのアンソロジーは、
中高生にとっては作家との出会いになっていいよね。

「サマータイム」は、最初に読んだときは全然心に響かなかったのだけど、
いい話だなあ。
瑞々しくて、センチメンタルで、切ない。
一冊通して再読したくなった。

「いっぺんさん」「あったかくなんかない」は、初読時と変わらず良い。

「交差点」は部分的に既読。
相手は悪くない、だけど割り切ることができないもやもやした気持ちを
きちんと描き切っているところが重松清、といった感じ。
『きよしこ』は一冊通して読んでいないので、近々読んでみたい。

初読の「秋の足音」だが……なにこのホモホモしさ。
作者は覆面作家らしく、わたしはこの本で初めて名前を知ったのだけど、
作者、女性だよね? 「女性から見た男同士」って感じだった。
果てしなく苦手。
真相も「そうでございますか」としか言いようがない。
しかし、これより前の話の内容がちょこちょこ出てきていて
それは気になる。


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68:美術手帖 編 『日本のアーティスト ガイド&マップ』

2012-06-28 09:06:14 | 12 本の感想
美術手帖『日本のアーティスト ガイド&マップ』(美術出版社)
★★★★☆

彫刻や絵画だけでなく、写真や建築、パフォーマンスまで
さまざまなアートにかかわる現代アーティストを
作品の写真とともに紹介した一冊。
Amazonの評価はえらく悪いのだけど、芸術に関して無知で
(紹介されているアーティストのうち、知ってる人は
 10人程度しかいなかった)
こだわりがないわたしにとってはおもしろかった。
カラーで、情報量も多いし。
添えられた文章は、

「この世界における現象の複雑さを、リテラル(直示的)に開示する――。
 高度情報化社会において時代がポスト・マテリアリズムへと移行し、
 私たちの属性や行為までが履歴管理(アーカイブ)化されうるような状況のなかで、
 さまざまな事象をいかにして走査(スキャン)し呈示しうるのか。」(P.58)


なんて、門外漢には一読しただけでは意味がわからないものなのだが、
「こんなのもあるよ」といった調子で
次々にいろんな作品を写真で見せてくれて、
「芸術」や「芸術家」に対する認識が変わりそう。

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67:阿川佐和子 『残るは食欲』

2012-06-25 09:34:13 | 12 本の感想
阿川佐和子『残るは食欲』(マガジンハウス)
★★★☆☆

県図書館にて。気分転換本。
最近読んでいた雑誌にこの本の広告が載っていたのを
たまたま見ていたので、手に取る。

雑誌「クロワッサン」掲載の、食にまつわるエッセイ。
読んだ後で何かが残るわけではないのだけど、
ユーモアがあって、気軽に読めるのがいい。
パンを放っておくと固くなる、という話のところで笑ってしまった。
そして、「きのこ嫌い」に親近感。
わたしもいちばん嫌いなのは「しいたけ」だ。
今「しいたけ」と打っただけでゾッとした。


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NHK大河「平清盛」レビュー25

2012-06-24 21:45:49 | NHK大河「平清盛」レビュー
【第25話の一言】

楊貴妃=信頼なんてギャグとしか思えない見立ては
通じなくて当然だと思う。

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ああ、もう……あざとい!
あざといのに、切ない!!

「宋に行く」「遣唐使を復活させる」という昔からの夢を
かなえる算段をつけた信西が
夢が実現する寸前で殺されてしまうとか、
互いを「生涯競い合っていける相手」だと認め合っている
清盛と義朝が、友情を抱きつつも、境遇の差が付きすぎて
完全に道が別れてしまうとか……
信西も義朝も清盛も、若いころの志を忘れていない、
忘れていないけれど思うようにいかない、というやるせなさ。
センチメンタルすぎる! 好き!!

前回に引き続き、しょんぼりしおしおな義朝。
病気の由良を気遣って、宋の薬が必要なら言ってくれという清盛に
「お前の手は借りない」
「恵まれたお前とは違う!」
といじけた負け犬思考全開。
正清も、痛々しい目で見ないで!!
弱い義朝にはときめくが、正清のあの目はいたたまれないよ!

危篤状態に陥った由良は、
清盛に頼んで薬を都合してもらおうとする義朝に
「平氏に頭など下げてはいけない」
「誇り高い源氏の妻のまま死なせてほしい」
と泣かせることを言う。
最期のセリフが「……と父が」という若いころのツンデレ由良の
口癖だったのは、笑うところだったのか、泣くところだったのか……


今回のメイントピックだったと思われるのが
「頼朝と清盛の邂逅」だったのだが……
あのさ……わたしの目がいつのまにか腐女子仕様になってしまったの?
これ、恋しちゃってたよね……?
初めて会ったとき、緊張しすぎでお酒こぼしちゃった☆って、
昔の少女マンガだよね?
父ちゃんに「清盛ってどんな人?」って訊いたりとかさ、
頼朝が恋する乙女みたいだったよ。
「えっ……なにこのBLムード!」
と見ながら動揺してしまった。
これまでナレーションでさんざん発揮していた頼朝の清盛オタクぶり、
その土台にはこの乙女心があったのか。

清盛が頼朝に吐いたセリフが、実はかつて若いころの義朝が
清盛に言った言葉だった、というところから
義朝が清盛の激励と友情を感じ取り、奮起する、
という展開だったのだが、清盛も義朝も記憶力よすぎだな。
あんなセリフがあったこと、わたしは完全に忘れてたよ。
清盛の「新しい世」のビジョンの中に義朝が組み込まれているのが
泣かせる
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66:松浦弥太郎 『今日もていねいに。』

2012-06-23 09:19:34 | 12 本の感想
松浦弥太郎『今日もていねいに。』(PHP研究所)
★★★☆☆

近所の本屋さんに、この人の本がまとまって置いてあるコーナーがあって、
いったい何者なんだろうと思ってたんだけど、
『暮しの手帖』の編集長なんだそうだ。

なんか……本当にこの文章の通りなら、この人、聖人君子じゃない??
著者名を隠して、一人称を「私」にしたら、多くの人は
まったく違和感なく女性の文章だと思ってしまうのではないかしら……
というくらい、女性的な文章だというのもあるんだけど、
大橋芳子『エプロンメモ』と雰囲気が似ている気がする。
押しつけがましい書き方はしていないものの、
『エプロンメモ』の「~してごらんなさい」口調と相通ずるものがある。
嫌いじゃないんだけど、わたしには高潔すぎる世界だ。

しかし、ドキッ!とさせられる言葉もいくつかあった。

「『あんなことをやりたい』と、いろいろ話す人はいますが、
一向に手がけている気配がないと評論家になってしまいます。
思って、考えて、人に喋り、何も始めないうちに結論を出してしまうようになるのです。」(p.31)


これはまさにわたしのことか……。
有言不実行になるのは嫌だから、人には言わないけれども、
結局「やるやる詐欺」であることに変わりはないのかも。

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65:松田シオン 『銀月夜』

2012-06-22 00:27:45 | 12 本の感想
松田シオン『銀月夜』(求龍堂)
★★★★☆

県図書館にて、ものすごく久しぶりに発見!

中学・高校時代は歴史モノ以外の本を読むことが少なかったため
数が少ない分インパクトが強かったのか、
読んだ詩集に関してはかなり記憶がはっきりしている。
この松田シオン『銀月夜』のセンチメンタルな世界と
浦川堤『夏の少女のまなざしで』の少女ワールドが、
高校生だった当時のわたしには、結構衝撃的だった。
覚えようとしたわけでもないのに、
いくつかは今でも暗記している。
今読むと恥ずかしくなっちゃうのもあるんだけどね。

初版は1996年。
この松田シオンさんは、著作はこれ一冊、
いったい何者なのか謎のまま。

そういえば、仕事柄、詩は読むし、技巧面で感心することは多いけれど、
詩を読んで「わああ」と叫びたくなるような経験は
久しくないなあ。
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64:石山茂利夫 『国語辞書事件簿』

2012-06-21 09:23:50 | 12 本の感想
石山茂利夫『国語辞書事件簿』(草思社)
★★★☆☆

県図書館にて。
最近、三浦しをん『舟を編む』を読んだばかりだったからね。

明治期における「いろは」派と「五十音」派の戦い、
学者の名義貸し疑惑、「改訂」に際する誇大広告、
他の辞書からの模倣……等々、
辞書作成にまつわる秘話と疑惑について書かれた本。
「すでにある辞書の文言を引用→いくつかを組み合わせて書き換える」
というのは、普通にやってることだと思ってた。
説明に困ったとき、それまでの辞書がどう表現しているか、
参考にしたり、アイディアを拝借したりすることは
よくあるんじゃないかと。
同じように、名義貸しについても、
「普通にあるよね」という感想だった。
そんなこんなで、「ええ~っ!?」という驚きはないものの、
ふだん考えたこともない舞台裏について言及しているのは
おもしろい。

「いろは」vs「五十音」なんて、気に留めたこともなかったけど、
確かにそれまでは「いろは」が広く普及していたわけで、
いきなり五十音図で勉強させられることになった当時の人々の
戸惑いは相当なものだったと思われる。


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63:蓮実香佑 『なぜ「烏」という漢字は「鳥」より一本足りないの?』

2012-06-20 09:08:41 | 12 本の感想
蓮実香佑『なぜ「烏」という漢字は「鳥」より一本足りないの?』(主婦の友社)
★★★☆☆

県図書館にて。仕事関係の調べもの。
「とりへん」と「ふるとり」、「さかなへん」、「くさかんむり」、
「きへん」、「むしへん」、「けものへん」「むじなへん」、と
6章に分けて、動物と植物を表す漢字の語源を解説。
語源だけでなく、その生き物に関する豆知識もあり。

「鮪」は日本では「まぐろ」だけど、もともと中国では「チョウザメ」のことだった、
みたいな、「ちがう魚に漢字をあてちゃった」例は
いくつか知っていたけれど、同じようなことが植物にもあったのね。
「鳩」と「鶴」の左側のパーツが、
それぞれ鳴き声から来ているとは知らなかった。

一般的にあまりなじみのない生物が多かったので、
仕事には使えなさそうだったけどおもしろかった。
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