金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

105:武者小路実篤 『友情』

2007-08-30 08:21:46 | 07 本の感想
武者小路実篤『友情 (新潮文庫)
★★★★★

作家をめざす野島は、友人の妹の杉子に出会い、彼女に心奪われる。
既に文壇で名の知れた親友・大宮に励まされ、慰められながら
彼女を妻にすることを夢見るが、杉子の心は大宮に向いてしまう。
大宮は友情のためにヨーロッパへ逃れるが、
野島の求婚は杉子によって拒絶される。
失恋の痛みに苦しむ野島のもとへ、ある日大宮からの謝罪の手紙が届く。

***********************************

再々読。
はじめて読んだのは中学生のときだったでしょうか。
この本で読書感想文を書いて表彰された記憶があるのだけど、
「どこから突っ込んでいいのかわからない!!!」
と爆笑していた当時の自分がいったい何を書いたのか、謎……。
今読むと別に笑う話じゃないのだけど、
「同人誌私物化するなよ大宮!っていうか、これ小説じゃないし」
とだけは言いたい。

結末を知っているだけに、杉子の言動のいちいちに一喜一憂し
未来を妄想する野島の「恋する男」っぷりや、
「お互に偉くなろうね」と語り合う野島と大宮のやり取りが
痛々しい。
相手は、才能もあって金持ちで、見た目も性格も良い、
と来た日には、そりゃあ負けちゃうよね~。
生まれ持ってきたものの差、とか、いわゆる恋愛格差みたいなものを
考えるとやるせない。
しかし、ここまで差があると大宮の友情を疑ってしまうな~。
「尊敬? 本当に?? 格下に見てるんじゃないのかい??」
と思ってしまうわたしはひねくれてるんでしょうか。

そして、杉子のしたたかさがおもしろすぎる。
「野島さんって生理的に受け付けないのッ!」
「あなたは本当はわたしのこと好きははずよ!」
「あなたの子を産みたい!」
というのを10倍丁寧にした言葉で大宮に書き綴る杉子。
自分の写真を大宮に送りつける、美貌に自信満々な杉子。
野島が彼女を「理想化」してるっていうのは本当だわ~。
自分に都合よく、天使のように思い込んじゃってるもんね。

ラストは悲しいのだけど、あまりにも前向きで健康的で、
そこが同じ三角関係でも『こゝろ』とは大きく違うところ。
このラストだからこそ、タイトルが『友情』なのね……。

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104:朝時間.jp 『朝時間のすごしかた』

2007-08-27 15:54:47 | 07 本の感想
朝時間.jp『朝時間のすごしかた』(大和書房)
★★★☆☆

八月中旬から早朝ウォーキングをはじめたのだけど、
モチベーションをあげるために購入。
朝時間.jpという早起きのためのサイト
(わたしもお世話になっています)
の内容を一部書籍化したもの。
スッキリ朝とゆったり夜』を先に読んでしまっているので、
インパクトは薄かったのだけど、ネット上では面倒であまり見ない、
いろんな人の投稿の内容が読めたのはおもしろかったです。
「世界の朝時間」のページがカラーで、
おいしそうな朝ごはんの写真に食欲をそそられる……

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103:杉浦由美子 『腐女子化する世界』

2007-08-16 08:01:14 | 07 本の感想
杉浦由美子『腐女子化する世界―東池袋のオタク女子たち (中公新書ラクレ)』(中公新書ラクレ)
★★★☆☆

某家のインテリパパの書斎になぜか置いてあったのを、
その場で読了。
ずらりと並んだ新書の中で異彩を放っておりました。
パパ……アエラ読んで興味持っちゃった??

新書であるということを意識しすぎているのか、
「腐女子」の世界と「格差社会」の結びつけ方が
強引だなあとも思うのだけど、おもしろく読めました。
サブカル論って、真面目に受け取らずに楽しむものだって
気がする。
一般化して分析するのがすごく難しいだろうから。

腐女子の皆さんに限らず、オタクな人々の「好き!」だけに支えられた
創作活動のエネルギーには脱帽です。
以前お仕事で、同人活動をしている方を知って、
それをきっかけにいろんなサイトを見たけれど、
なんだかまぶしかった。
一部の人はプロになっていくけれど、多くの人はただ好きなだけで、
技術を磨いて、書いて、描いて、公表するんだもんなあ……。
「作ったらお金がもらえる」のが前提だと思っていて、
結果に結びつかないものを作ることが
ほとんどなくなってしまったわたし……反省。

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102:山口真美 『正面を向いた鳥の絵が描けますか?』

2007-08-13 10:53:50 | 07 本の感想
山口真美『正面を向いた鳥の絵が描けますか? (講談社+α新書)
★★★☆☆

「運命の相手と思われたが……」第2弾。

描いた絵にあらわれる視覚と脳の関係を中心に、
「顔」の重要性、視覚の発達、色彩感覚などなど、
視覚に関するさまざまな現象を紹介する一冊。
たくさんの図や写真と実験結果を挙げて説明されていて
おもしろい。

絵を描くには天性の素質だけではなく、
やはり技術を学ぶことが必要なのね。

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101:松井孝典 『われわれはどこへ行くのか?』

2007-08-13 08:48:32 | 07 本の感想
松井孝典『われわれはどこへ行くのか? (ちくまプリマー新書 (054))
★★★☆☆

いま仕事のため、新書地獄でのたうちまわっているのでございます。
うううっ……
地獄の中で希望を見出し、つかみとったが運命の相手ではなかった……
そんな本の中の一冊(※ 質の問題ではありません)。
ちくまプリマー新書は中高生向けのレーベルで、重宝しております。

さて本書は、「地球で人間圏をつくって生きているわれわれ」という
視点から、宇宙について、環境問題について、人類の未来について
語った一冊。
わかりやすく、読みやすく、イラストも可愛くてよし。
学問の世界をこれだけわかりやすく、平易な言葉で説明するのは
なかなか難しい。
その点だけでもすごい!と思えます。

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100:芥川龍之介 『蜘蛛の糸・杜子春』

2007-08-12 14:48:43 | 07 本の感想
芥川龍之介『蜘蛛の糸・杜子春』(新潮文庫)
★★★★☆

【収録作品】
蜘蛛の糸/犬と笛/蜜柑/魔術/杜子春/アグニの神/トロッコ/
仙人/猿蟹合戦/白

仕事のため購入。
「きちっと」という言葉がふさわしいような、端正な短編の数々。
これも子供向けの話が多かった。

「トロッコ」は少年時代を描きながらも、大人向け。
「子どもの頃に読んだ本では、最後の段落がカットされていた」
という話を聞いたことがあるけれど、たしかに最後の段落、
子どもには意味がわからないだろうなあ~。
しかしこの最後の段落こそが、この作品の主題なのです。
生活を背負った大人だからこそ感じられるリアリティ。

「犬と笛」「魔術」「アグニの神」「仙人」「猿蟹合戦」は初読でした。
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99:森博嗣 『λに歯がない』

2007-08-08 15:03:11 | 07 本の感想
森博嗣『λに歯がない』(講談社ノベルス)
★★★☆☆

密室状態になっていた研究所の一室で、
銃殺された4人の遺体が発見された。
被害者の身元は不明、全員歯を抜かれてポケットには
「λに歯がない」のカード。
同じ研究所に居合わせた山吹からの電話を受けて、
研究所に駆けつけた萌絵は、両親の死と向き合うことになる。

************************************

『τになるまで待って』に比べたら、きちんとトリック・動機ともに
明かされているし、多少すっきりはするのだけれど、
やっぱりこの四季や保呂草についての思わせぶりな感じが
鼻についてしかたないのでした。
そして依然として、新シリーズと銘打って
山吹や海月を出してきた必要性が感じられず……。
もう森博嗣はいいかな、という気もしてまいりました。
『四季 秋』までは文句なしにおもしろかったんだけど。

犀川と萌絵の仲がいつの間にか進展していることに
なぜかあたふたしてしまいました

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98:山田詠美『ぼくは勉強ができない』

2007-08-05 16:10:21 | 07 本の感想
山田詠美『ぼくは勉強ができない』(新潮文庫)
★★★★☆

仕事のため再々読。
最初に読んだのって高校生のときだっけ……。

勉強はできないけれど女の子にはモテる高校生・秀美の日常。
「ナチュラル系美少女が嫌い」とか、今読むといかにも山田詠美ワールドで、
一種のファンタジーだなあという感じなのだけれど、
やっぱりうまい。おもしろい。
解説で原田宗典も書いていたけど、各章のタイトルがよいよね。
番外編:眠れる分度器は名作。

多数決の論理とか世間一般の価値観との闘いが
テーマの一つだと思うのだけど、
秀美は自分を否定してきた価値観を跳ね返そうとするあまり、
持ち出した自分の価値観で誰かを否定してる。
そういうところが高校生なんでしょうか。
そして、「勉強ができるよりモテるほうがステイタス」って
普通なのでは……?
少なくともわたしの過ごしてきた学校生活ではそうだったけれど。

あとがきでも書かれていたように、これは大人が読む青春小説。
「眠れる分度器」はよく中学入試用の問題集に使われているけど、
現役小学生は、なんでパンを差し出されたひろ子が泣き出したのか、
読んでもぜーんぜんわからないようです。

コメント (2)
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