金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

21:日明恩 『それでも、警官は微笑う』

2007-01-31 14:38:30 | 07 本の感想
日明恩 『それでも、警官は微笑う』(講談社)
★★★★☆

メフィスト賞受賞作。
硬派で無口な武本と、おしゃべりなおぼっちゃま潮崎の
刑事コンビが追う密造拳銃。
5年前の事件を追う麻薬取締官の宮田もからむ中、
武本と潮崎が訪れた模型店で爆発が起こり、
二階から店主の遺体と宮田が発見される。
店主を殺害し爆発をしかけた男は、ある目的のもとに密造拳銃を
流す巨大組織とつながっていた……。

正直なところ、『鎮火報』の、主人公をはじめとした登場人物たちの
造型が気に障ってしかたなく、期待しないで借りてきたのだけど、
これはおもしろかった!
武本と潮崎、宮田のキャラクターも好き。
いやーそりゃぁありえないだろう……といった感じのご都合主義も
感じられるし、前半の説明的な文章には辟易させられたけど、
登場人物のおもしろさでカバーできるし、
作者が楽しんで書いている感じが伝わってきてよい
結末はちょっとほろ苦く、3人の男たちの成長物語にもなっている。
続編があるようですね。
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20:酒見賢一 『陋巷に在り〈13〉』

2007-01-31 09:31:08 | 07 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈13〉魯の巻』(新潮社)
★★★★★

その影響力を危惧した三桓家の献言によって、
孔子は大司寇の職を授けられるが、これは実権のない名誉職であった。
少正卯を討ち果たした孔子だが、斉から送り込まれた媚女集団によって
魯の国は乱れる。
孔子は定公から授けられた強権を発動し、媚女を魯国から追い、
自らもあこがれの周公旦の国である魯を去ることになる。


とうとう読み終わってしまった……!
胸にぽっかり風穴が空いてしまったような気分であります。
少ない史料に沿って話が進んでいるので、
あれよあれよというまに孔子が魯を出ることになってしまい、
やや「?」。(事実がわかっていないのでしょうがないのだけど)
孔子と伯牛の別れのシーンでは、「論語」の引用部分だけで
涙が……
願氏全滅を経て、常に受身だった願回が能動的になったのは
喜ばしいけれども、あいかわらずに対しては煮えきらず。
家に居場所がなくなり、ふつうの女として生きられないことも
予感しつつ、顔回のいない魯に残るはどうなるんでしょうか。
そして先生大好き!な子路も当然のように孔子とともに
魯を出ることになるのだけど、奥さんは??
てっきり願回の死まで描かれると思っていたので、
魯を出てからのできごとが激しく気になりますが、
願回や子路の死も、孔子の絶望も読みたくないので
ここで終わるのがちょうど良かったのだと思うことにします。

この本について誰かと語りたい!!と思うのだけど、
古代中国+ファンタジーで、人に勧めにくいのが困ったところ。
全13巻、文庫落ちしてますので興味のある方はぜひ!
(2・3巻からがおもしろいです)

コメント (2)
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19:町田康 『告白』

2007-01-30 15:51:16 | 07 本の感想
町田康『告白』(中央公論新社)
★★★☆☆

メッタ斬り!』で絶賛されていた本。
明治26年に起き、河内音頭にもうたわれた〈河内十人斬り〉をモチーフに、
自らの妻までも殺害した城戸熊太郎の生涯を描いた物語。
思考を言葉に結びつけられないことから、誤解を受け、疎外され、
無頼者に身を落とす百姓の息子・熊太郎。
幼いころからのそんな体験の積み重ねの末、信じた者に裏切られて
凶事を引き起こすまでの軌跡が詳細に描かれる。

評判はかなり良いようなのですが、な、長い……
鬱屈のたまっていく過程を、たくさんのエピソードを積み重ねることで
描いていて、あまりの長さに途中で挫折しそうになる。
最初に「森の子鬼」たちの正体が明かされるものだと
思い込んでしまったのもよくなかったのかも?
世の中が変わっていく過渡期の風景、日常の中の不正義や悪意を
描いているところはおもしろく読めたのだけど、
主人公に共感できなかったために話の展開の遅さに苛つく。
わざとだとは思うけれど、時代背景にそぐわない比喩や表現が
多かったのも気になった。

本がどうこうというよりは、歯の立たないものに手を出してしまった、
という気も。
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18:本谷有希子 『江利子と絶対』

2007-01-29 10:06:39 | 07 本の感想
本谷有希子 『江利子と絶対―本谷有希子文学大全集』(講談社)
★★☆☆☆

これも角田光代のエッセイであげられていたもの。
図書館で3ヶ月待ってようやくまわってきた。
引きこもりで奇矯な言動を繰り返す妹を姉の視点で眺めた表題作に、
頭皮に異常をかかえた中年男とストーカー女の愛を描く「生垣の女」、
小学生3人と殺人鬼の戦いを描く「暗狩」の3篇を収録。
最近あちこちでみかける作家さんだったので期待大だったのだけど……

わたしダメこれ! 絶対ダメ!

犬にホウ酸だんご食べさせるとか、猫を電子レンジに入れるとか、
虐待とか、読むのも耐えられない!
表題作は比較的おもしろく読めたけど、全体的に趣味の問題で
受け付けなかった。思い出しただけで胸が悪くなる。
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17:江國香織 『すみれの花の砂糖づけ』

2007-01-29 09:48:29 | 07 本の感想
江國香織『すみれの花の砂糖づけ』(理論社)
★★★☆☆

通勤時間が短いので、詩集。再読。

職業柄、詩を読むときにはいつも、
「反復法!」「対句!」「体言止め!」
と表現技法を全部チェックしてしまいます
反復法と対句を使えばなんとなく詩っぽくなるものですが、
この本の詩には使う必然性が感じられないものが多く、
詩としてはうーん……といったところ。
スタンスとしては銀色夏生さんのものと通じるところがあるのかも。
文学としての詩じゃない、雰囲気で読む「詞集」といった感じ。

江國さんの小説の中の一節を切り取ったような詩集なので、
江國作品が好きな人にはおすすめ。
タイトルの「すみれの花の砂糖づけ」もそうだけれど、
イメージを喚起するアイテムの選び方はすごい。
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16:小池昌代 『屋上への誘惑』

2007-01-27 18:20:17 | 07 本の感想
小池昌代『屋上への誘惑』(岩波書店)
★★★☆☆

たしか、角田光代のエッセイで紹介されていたもの。
著者は詩人。
マンションの管理人さんのこと、子どもの頃のこと、
見かけた店のこと……
日常の中のささやかな風景に視線を注いだエッセイ集。
繊細で静かな雰囲気の文章で、淡々としすぎているようにも
感じられ、読み終わるのに手間取る。
一気に読んで「あ~おもしろかった!」と思うような本ではなく、
文章も題材もどちらかというと好みではなかったのだけれど、
平易な言葉で美しい表現がなされているのがわかる。
「母の怒り」に描かれたやりとりは、
身に覚えのあるような気がして、すこし心動かされた。

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15:森博嗣 『工作少年の日々』

2007-01-21 15:50:04 | 07 本の感想
森博嗣『工作少年の日々』(集英社)
★★★☆☆

「小説すばる」で連載されていたエッセイ。
模試で「僕の小説の書き方」の一部を読んだのだけど、
駄洒落とひとりツッコミのない部分を探したんだろうなあ……
と思わず模試作成者の事情を考えてしまった。
連載時に何回か分は読んでいたので、
あらためて感想といっても特に思い浮かばないのだけど、
大学に勤務しながら年に15冊も本を出していた著者の、
時間の使い方について触れられていた部分もあって興味深い。
森ファンでなくても楽しめる内容だと思います。
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14:鈴木いづみ『ぜったい退屈』

2007-01-21 15:33:02 | 07 本の感想
鈴木いづみ『鈴木いづみセカンド・コレクション〈2〉 SF集 ぜったい退屈』(文遊社)
★★★☆☆

『三四郎はそれから門を出た』で挙げられていたもの。
以前ヴィレッジ・ヴァンガードの鈴木いづみコーナーで
いづみ語録』の表紙を見て、そのアイメイクとおっぱいに
視線釘付け!
何者だろうと思っていたのだけど、作家だったのね……。

なじみのないSFだったのと、文章が合わなかったのとで
この本自体の好み度は★2.5個というところだけど、
鈴木いづみ自身のエキセントリックな人生には興味大。

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13:鹿島茂 編著 『宮家の時代』

2007-01-20 20:14:08 | 07 本の感想
鹿島茂『宮家の時代―セピア色の皇族アルバム』(朝日新聞社)
★★★★☆

最近また、「宮様総理」東久邇宮稔彦が気になる。
闇市で店を経営してみたり、新興宗教の教祖になってみたり……
はちゃめちゃっぷりをちゃんと読んでみたい!
とにかくおもろい人だと聞いて、高校生のころ、
広岡裕児『皇族』を読んだけれど内容をまったく覚えてない。
そんなわけで、入門編としてビジュアル本をセレクト。

戦後皇籍離脱した宮家(断絶したところも含む)を、
歴史・ファッション・軍務・スポーツの視点から写真とともに
紹介した一冊。
留学中に散財しまくって明治天皇を激怒させたり、
ドイツ人女性と勝手に婚約してバレちゃったり、
ほかの宮家も相当おもしろい。
(これを読むと明治天皇は宮家のことで怒ってばかりいる)
皇室フリークでないわたしにも充分楽しめました。

えらく気の強そうな顔立ちの閑院宮直子妃、
戦後に協議離婚とあったから気になって検索かけてみたら
……スキャンダル!

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12:森博嗣 『Θは遊んでくれたよ』

2007-01-19 14:41:14 | 07 本の感想
森博嗣『Θ(シータ)は遊んでくれたよ』(講談社ノベルス)
★★★★☆

S&M→V→四季、と来て、力尽きてしまってました。
そんなわけで久々の森博嗣。

この「Gシリーズ」、前巻の『Φは壊れたね』が
S&Mシリーズの同人誌のようでへんに気恥ずかしく、
いまいち入り込めなかったのだけど、今回は楽しめました。
ラブちゃん&金子くんがなつかしい……
新シリーズからの登場人物の名前が全然覚えられないなあと
思っていたのだけど、外見描写・内面描写がほとんどないせいだ。
新キャラの印象が薄く、探偵役はチェンジしても
結局は萌絵と犀川なのね、という感じ。

「また四季かよ」とか「保呂草きらいなんだよな~」とか
やや食傷気味なところもあるのだけど、
あっと驚く展開を期待して続きも読むことにします。

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