金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

2022年 映画と読書のまとめ

2022-12-31 17:23:19 | 1年のまとめ
今年はもう、なんといっても大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が素晴らしく、
わたしの「最高に面白かった!!」もそれに尽きる!
長野・東京・千葉・埼玉・神奈川・静岡と
いろんなところへ行けたのもよかった。
 
本は319冊と、冊数だけはそこそこ。
一昨年あたりから、しばらく離れていた歴史ものの小説を
わりと読むようになって、やっぱり「好き!」と思うんだけども、
仕事柄、現代もののエンタメももっと摂取しないとな~と反省。
 
以下、2022に読んだ&見たものの中で、
印象的だったもの。
 
*****************************************
 
【一般小説】
 
高橋克彦『時宗』1~4
朝比奈あすか『翼の翼
朝比奈あすか『ななみの海』
 
初めて読む作家さんが多かった。
実は「すごく好き!」というものは、少ない。
好きとはちがうんだけど、印象的だったな~という作品が多い。
昔は「好き!」だけで選べたけれど、
最近は、「好きじゃないけど、この仕掛けはすごい」とか、
「筆力に圧倒される」という評価基準の
ウエイトが重くなってきている気がする。
読み終わった直後は★5をつけたのに、
その後、続編を読まないままになっているものもある。
逆に、ほしおさなえさんの作品は★5をつけていないのに、
3シリーズ+単巻読んでいて、たぶんかなり好きなんだろうな……。
 
【ストーリー漫画】
 
歴史もの3つはどれも「好き!!」なんだけど、
あとの2つは、好きとはちょっとちがう。
人を選ばず自身をもっておすすめできるもの、という感じ。
 
以下は大好きだけど、まだ完結しておらず、
この先どう転ぶかわからないので外したもの。
 
 
 
【コミックエッセイ】
 
 
【映像作品】
 
映画『RRR
ドラマ『アンナチュラル』
ドラマ『MIU404』
アニメ『平家物語』
 
昨年32本見た映画を、今年は8本しか見ていない。
しかも、映画で「好き」「おもしろい」と思ったものは
『RRR』だけだった。
代わりに、アマプラでドラマとアニメをいくつか見た。
上記のものが面白かった、
 
*****************************************
 
2023年は
「ネットで時間を無駄にするくらいなら、本を読むor映画を見る」
が目標。
本当に、時間を浪費してるから……。
 
ご訪問くださっているみなさま、今年もありがとうございました。
よいお年を!
 
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ドラマ:『カルテット』第1~10話

2022-12-31 17:04:23 | 2022年に見たドラマ・アニメ
なんだか不思議なドラマだったなあ。
 
松たか子を中心に、登場人物たちの「何かありそう」を
ちりばめた1話のつかみはばっちりで、
序盤はかなりわくわくした。
 
話数が進んでいくごとに「なーんだ」という拍子抜けが増えて、
「夢を追うこと」「恋愛」「謎」の3つの要素が
あまりリンクしないままにとっちらかったまま終了。
特に、有朱は何だったんだ……。
恋愛要素を除いて、
「奏者としてどう生きるか」
あるいは
「謎」
のどちらかに絞ったほうがおもしろくなっただろうに……。
と思うんだけども、キャラクターやその関係性は好きで、
この四人をもっと見ていたい、という思わせる魅力があり、
嫌いになれない。
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324-327:最近読んだ漫画(記録のみ)

2022-12-31 11:55:56 | 22 本の感想
『ご当地グルメコミックエッセイ まんぷく埼玉』
 
 
 『ご当地グルメコミックエッセイ まんぷく鎌倉・湘南』

 
大久保篤 『炎炎ノ消防隊〈1〉・〈2〉』
 
1・2巻無料のときに読んだ。
独自の設定は面白いと思ったけれど、
展開が早すぎないか?
「主人公の所属した組織に不正がある」って
割と衝撃的な展開だと思うんだけど、
組織に愛着も持てないうちにそういう話になるので
「ふーん」で終わってしまう。
主人公もたいしてショックを受けていないので、
作者さんは「意外な展開」だと思って
描いていないのかもしれないけど。
 
 
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320-323:最近読んだ本

2022-12-31 11:01:35 | 22 本の感想
上げるのを、忘れていたので追加でアップ。
 
杉浦さやか『おたのしみ歳時記』
 
色合いがすてき!
こういう生活に憧れる。

 
一田憲子『丁寧に暮らしている暇はないけれど』
 
「いや、十分丁寧だよ!!」
というツッコミは、おそらく想定内よね……。
 

 
矢作ちはる『石の辞典』
 
美しい、おしゃれな本。
個々の鉱物の紹介だけでなく、
きれいな和名や伝説として伝えられている効能など、
テーマごとに特集ページがあるのもいいね。
 
 
 
 江中みのり『小料理屋「春霞亭」 かりそめ夫婦の縁起めし』
 
恋愛よりも「試行錯誤して店を立て直す」ほうに
ウエイトを置いて、「男と女」ではなく
「人と人」の関係として描いていたのがよかった。
 
 
 
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319:アンソロジー『女城主 戦国時代小説傑作選』

2022-12-28 20:18:57 | 22 本の感想
アンソロジー『女城主 戦国時代小説傑作選』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
2017年、NHK大河ドラマのヒロインは井伊直虎!

戦国時代、男の名で家督を継ぎ、
井伊家を滅亡の危機から救った女城主・井伊直虎のほか、
民を愛し、城を守った姫君たちの気高くも美しい姿を描いた傑作短編集。
義父・真田昌幸に愛された月姫の決断(井上靖「本多忠勝の女」)、
忍城籠城に際し、領民とともに濠を掘った女城主(山本周五郎「笄堀」)、
夫・立花宗茂への葛藤を抱えながらも凛と生きた
誾千代の生涯(滝口康彦「立花誾千代」)など、
珠玉の六編を収録。
 
****************************************
 
半分は初めて名を見た作家さんだったのだけれども、
井上靖、山本周五郎、池波正太郎という
レジェンド作家の名が並んでいるだけで、
読む前から安心感がある。
「立花誾千代」だけはどうにもすっきりせず、
小説としての落ちをつけてほしいと思うのだけども、
他は安定しておもしろかった。
「本多忠勝の女」のヒロインのたおやかで透明感を持ちながらも
強い姿が印象的。
池波正太郎の作品は、ネットで調べても、
元ネタが「これかな?」程度にしかわからず、
どこまでがオリジナルなのか不明だけども、
とてもよかった。
 
【収録作品】
 
井上靖「本多忠勝の女」
岩井三四二「母の覚悟」
植松三十里「虎目の女城主」
滝口康彦「立花誾千代」
山本周五郎「笄堀」
池波正太郎「夫婦の城」
 

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318:高山なおみ『高山なおみのはなべろ読書記』

2022-12-28 20:15:57 | 22 本の感想
高山なおみ『高山なおみのはなべろ読書記』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
料理家高山なおみが、鼻とベロで味わった本の話と、
そこから生まれた料理の物語。
全24話レシピつき!
 
****************************************
 
読んだことのある本は少なかったけれど、
エッセイとして楽しんだ。
高山さん、感受性豊かで、
感じたことを文章で表すのも上手な人。
特に情景描写でそれを感じる。
 
下ネタや不潔に思える要素がたまにあって、
「それは書かないでほしかった……」と思うんだけども、
書くかどうかは著者の勝手であって、
読者が要求することではない。
マイナスに思えること以上にプラスがあれば読むし、
そうでないのなら読まなければいいだけのこと。

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317:奥山景布子『恋衣 とはずがたり』

2022-12-24 00:35:35 | 22 本の感想
奥山景布子『恋衣 とはずがたり』
★★★☆☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
鎌倉末期、後深草院の宮廷を舞台に、
愛欲と乱倫、嫉妬の渦に翻弄される女官・二条。
幼くして生き別れとなった娘・露子が、
二条の遺した日記を繙きながら、
晩年は尼となり自らの脚で諸国を遍歴するまで、
美しく、気高く、そして奔放に生きた実母の人生を辿る。
史上最も赤裸々な女流古典「とはずがたり」が
700年の時を超え、大胆によみがえる。
 
****************************************
 
わたしの「とはずがたり」との出会いは、
いがらしゆみこの「マンガ日本の古典」版。
わりと衝撃的で、
「迫られてむりやり……と言いつつ、妊娠中に他の男と関係して、
 ヒロインも結局ビッチやんけ」
という印象だったのだけども、
いくらか物のわかるようになった今思うと、
ヒロインはすごく痛々しい。
 
後深草院の光源氏ごっこに巻き込まれて、
十四歳で、初恋の相手であったであろう母の身代わりにされ、
父という後ろ盾をなくしたために、ただの召人扱いで
きさきの一人にもなれない。
院は嫉妬深いくせに、ヒロインを他の男に貸し出し、
当時、出産は命がけの行為だったのに、
ヒロインは何度も妊娠させられて、子を奪われる。
そういう事態を防ぐすべはあったのだろうけれども、
たぶん、不安定な立場だった彼女は、
男に求められることで自尊心を保っていて、
ただ都合のいい女として扱われていることに
最初は気づかなかったんだろう。
 
二条が実在したかどうかは疑われていて、
「とはずがたり」に書かれていることもフィクションでは?
と言われているのだけども、もし完全なフィクションだとしたら、
これはいわゆる、大昔の「ナマモノを扱った夢小説」。
しかし、こんな夢小説、つらすぎるよ……!!
 
この本は、タイトルにあるとおり、
「とはずがたり」をベースにしているのだけれども、
二条が最初に生んだ娘が、母の残した文章を読み進めることで、
母を知っていくという形式を取っていることと、
「蜻蛉日記」のエピソードを取り込んでいることが特徴。
「とはずがたり」という作品がたどった運命も踏まえた
展開もあり。
原作自体が愉快な話じゃないから、
これもやっぱり愉快ではないのだけれども、
一度だけ娘に会いにきた二条を、
娘が「天女さま」だと認識していたくだり、
なんとも切なく美しく、とてもよかった。
 

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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」♯48

2022-12-18 22:54:16 | 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
第48話「報いの時
 
以前からそんな気はしていたけれど、
わたしの中の大河ドラマランキング、
入れ替わっちゃった!
 
「すんごく好きだけど、粗も多い大河」
「ドハマリはしなかったけど、
 よく出来ていて安定して面白い大河」
しかなかったのが、「鎌倉殿の13人」は
両方を兼ね備えた大河だった。
 
前半に尺を取り過ぎて、
最後のほうは絶対尺足りてなかったし、
終盤は結構粗も見えていたんだけど、
こんなにもダレないまま、
最終回まで毎回楽しみだった大河は初めて。
よかったよ~!!
 
正直、最終回はハードルが上がりすぎて不安だったんだけど、
うまい着地のさせ方だったと思う。
小四郎が幸せになったら「いや、それはダメじゃない?」ってなるし、
かといってバッドエンドは後味が悪くて、可哀想だし。
家庭を、妻を、顧みなかった報いを、
のえに毒を飲まされることで受け、
幼なじみの絆と友情に寄りかかって
平六の内面に無頓着でいた報いを
裏切られることで受け、
姉の息子二人を死に追いやった報いを
毒消しを飲むのを邪魔されることで受け、
だけど同時に、「鎌倉のため」に手を汚し続けてきたのを
姉に止めてもらって
「ご苦労様でした」とねぎらわれる。
良い意味でも悪い意味での「報い」を受けた最終回。
「わかりやすい感動」を呼ぶ見せ方ではなかったから
評価は分かれそうだけど、
自ら手を汚すことのなかった政子が
初めて自ら殺した相手が弟だったというの、
わたしは愛だと思ったよ。
決して100%の清らかな愛ではなくて、
息子・頼家を殺されたことに対する恨みも混じった、
それでも弟が自分の欲だけでそうしたわけではないと
理解している姉の愛。
「(泰時が、八重さんよりも)もっと似ている人がいます、
 それはあなた」
という政子の言葉、姉が弟の本質を忘れていない証だったし、
小四郎にとっては救いだったよね。
 
最後、泰時が設置する評定衆の登場をもって
「今度こそ『鎌倉殿の13人』!」って
タイトル回収すると思ってたから、
「頼朝死後に政争で殺されたのが13人」ときて、
鎌倉殿だった頼家を除いて
「13人めはあなたです」
を回収したの、見事すぎたわ……。
 
 
【その他いろいろ】
 
・次の大河への目配せは、これまでの大河にも結構だったけど、
 冒頭で、しかも主役登場でやるとは思わなかったよ!!!
 松潤、あれだけしか出てこなかったのにピンクレ。
 
・のえ役に菊地凛子を配したのも納得の最終回。
 そうだよね、小四郎は最初からのえの表面しか見ていなかった。
 のえさん、初の前では本音をぶっちゃけてたし、
 政子の前でもいろいろ漏れ出してたのだから、
 関心を持っていたら気づかないはずがなかった。
 のえさん、別に小四郎のこと好きじゃなかったと思うけど、
 少なくとも小四郎本人のプライドを傷つけるような振る舞いを
 しないだけの気遣いはあったわけだから、
 兄の死を悼みもしない男に憎しみは募るよ。
 最後、最大の報復として平六との関係をぶっこわしたの、
 最高だったな!!
 
・朝時にじじい呼ばわりされて、
 いまだかつてないキレ方する平六に笑った。
 ドラマの作中世界では、平六もちゃんとじいさんに見えてるんだな。
 
・平六と小四郎の対決、よかった。
 平六がぶちまけた本音、納得の内容なんだけど、
 そういうありきたりな、よくある鬱屈を
 思ってても口にしないところが平六だったから、
 自分が死ぬと思ってぶちまけて、
 小さい男になっちゃうところ、よかった。
 そして、殺す殺されるのやりとりをした直後、
 「ほんとだ、しゃべれる」
 ってギャグにもっていく脚本のバランス感覚、すごいよ。
 (実際は、「三浦のほうが北条よりはるかに格上なのに」が
 不満として一番大きいと思うんだけど、
 ドラマ内では御家人同士の力の差には触れていなかったからね)
 
・「女子は皆、きのこが好き」という謎の小四郎の思い込みが、
 平六の吹き込んだ嘘によるものだと判明。
 お前だったのか!!!!
 小四郎がショック受けてるのも笑えた。
 
・自分で勝手に兄の部屋から持ってきた毒入りの酒を飲んで
 体を張ったギャグをかます時房。
 命がけの愛嬌!
 
・実際、牧の方は時政が死ぬまで側にいたはずだし、
 京で大々的に夫の法要をやってるんだけど、
 時政の側に若くて可愛い女がいたことに
 ムッとするりくさん、
 見えないところで時政の死を悲しむりくさんも、
 これはこれでよし。
 
・トウが救済されていてよかった……。
 暗殺の成功率高くなかったし、裏仕事から手を引けたのなら何より。
 
・老いてもなお黒い大江殿。
 「元気だな~!」ってドラマの中でも言われていた。
 
・胤義、どうなったかも明示されないまま
 フェードアウトするとは思わなかった……。
 平六と何かしらのやりとりがあるものだと思ってた。
 
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316:凪良ゆう『すみれ荘ファミリア』

2022-12-18 00:42:12 | 22 本の感想
凪良ゆう『すみれ荘ファミリア』
★★★☆☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
愛ゆえに、人は。

『流浪の月』『滅びの前のシャングリラ』本屋大賞受賞
&二年連続ノミネートの著者が描く、家族の物語。

すみれ荘のその後を描く「表面張力」を収録した完全版。

下宿すみれ荘の管理人を務める一悟は、
気心知れた入居者たちと慎ましやかな日々を送っていた。
そこに、芥と名乗る小説家の男が引っ越してくる。
彼は幼いころに生き別れた弟のようだが、なぜか正体を明かさない。
真っ直ぐで言葉を飾らない芥と時を過ごすうち、
周囲の人々の秘密と思わぬ一面が露わになっていく。
愛は毒か、それとも救いか。
本屋大賞受賞作家が紡ぐ家族の物語。
 
****************************************
 
最初、富士見 L 文庫から出ていたのは知っていたので、
ほっこり連作短編集だと思って読み始めてしまった。
とんでもない勘違いだった。
レーベルとミスマッチすぎる!!
 
最初の話から、なんだか嫌な感じがするなぁと思っていたのだが、
不快感はずっと続き、途中から予想を超えた恐ろしいことになっていた。
ほっこりのかけらもない、おどろおどろしい愛憎の物語であった。
 
 後日談の「表面張力」が面白かった。
これくらいの「裏の顔」なら、まだいいよ……。
 
好み度としては★3.5なんだけど、
人気の作家さんだというのも納得の筆力だった。
 

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315:アンソロジー『鎌倉燃ゆ 歴史小説傑作選』

2022-12-17 23:36:41 | 22 本の感想
アンソロジー『鎌倉燃ゆ 歴史小説傑作選』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
2022年大河ドラマの舞台は鎌倉幕府!
北条義時をはじめ、源頼朝を取り巻く鎌倉武士の
壮絶な生き様を描き切った衝撃のアンソロジー。

鎌倉幕府草創期から、二代将軍源頼家の時代に始まった
宿老ら十三人による合議制を経て、
三代将軍実朝の暗殺、承久の乱まで――。
流されるように生きてきた北条義時が
人生を賭けた大勝負に出る「水草の言い条」(谷津矢車)、
“讒訴の奸物"となった梶原景時の生き様を描く「讒訴の忠」(吉川永青)、
権謀術数うずまく幕府において、
畠山重忠が坂東武者の誇りを見せる「重忠なり」(矢野隆)など、
実力派作家七人によるアンソロジー。
 
目次
水草の言い条――谷津矢車
蝸牛――秋山香乃
曾我兄弟――滝口康彦
讒訴の忠――吉川永青
非命に斃る――髙橋直樹
重忠なり――矢野 隆
八幡宮雪の石階――安部龍太郎
解説 細谷正充
 
****************************************
 
長い間、読もう読もうと思っていたものをやっと読んだ。
熟成期間が長すぎて、期待が高まりすぎていたかもしれない。
「衝撃のアンソロジー」とあるけれど、衝撃はもちろんのこと、
「新しさ」があまり感じられなかったのは残念。
 
自分が歴史小説に求めるものが
「史実をふまえた上のオリジナリティ」
なので、特に好きな時代を扱ったものは、
どんどんハードルが上がってしまう。
 
同じ時代を扱った作品をたくさん読む
→慣れてしまう
→ちょっとやそっとのことじゃ新しさを感じなくなる……
 
という感じ。
 
長編よりも短編のほうが新しさを出すのが難しいのだろうし、
特に義時や景時は、永井路子先生がずいぶん昔に
すでに鮮やかにやってしまっているから、
苦しいのだろうとは思う。
しかし逆に言えば、ひねった描き方がされていないので、
まったくこの時代・人物を知らない人にとっては
入門編としていいかもしれない。
 
収録されている多くの作品で、
ダイジェスト的な「史実の紹介パート」が目立つのも気になった。
小説というより説明文みたいになっている。
上手い作家さんだとちゃんと「小説の地の文」になるんだけど、
これは何が違うんだろう。
情報を必要最低限にしぼっているから、
他の部分と文体に差が出ていなくて、なじんでいるのかな。
 
面白かったのは頼家を描いた「非命に斃る」。
エピソードを一通りさらいつつも 説明文になっていなかったし、
独自の味付けがされていて、小説として 完成されていた。
時房の描きかたにも、珍しい要素が入っていたし、
序盤の訴訟のエピソードを終盤で回収する構成も面白い。
 
 

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