金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

映画:『ミッドサマー』

2020-02-24 21:12:55 | 映画の感想
2020年の映画④:『ミッドサマー』(アリ・アスター監督)
★★★☆☆

【シネマトゥデイのあらすじ】

思いがけない事故で家族を亡くした
大学生のダニー(フローレンス・ピュー)は、
人里離れた土地で90年に1度行われる祝祭に参加するため、
恋人や友人ら5人でスウェーデンに行く。
太陽が沈まない村では色とりどりの花が咲き誇り、
明るく歌い踊る村人たちはとても親切でまるで楽園のように見えた。

*****************************

公開前からSNSでずいぶん話題になっていた作品。
ホラーらしいので、ホラー好きの友だちと。

話題作だったからか、映画館は結構な割合で席が埋まっていた。
マイナー系の映画館だから、いつも空席が目立つのに。

「明るい八つ墓村」という形容を事前に見ていたけど、
確かにそうだったよ。
明るかった。
物理的にも、精神的にも。
白夜、白い服、そして鮮やかな花々。
精神的にも明るい、ってのがまた不気味なんである。

ホラーは「音」に脅かされるという印象があるのだけど、
そういうところもほとんどない。

※以下、ネタバレ。




閉鎖的な田舎の村の風習、という民俗学的なホラー。
序盤からとにかくイヤ~な気持ち悪さが続くんだけど、
心霊系の恐怖ではなく、死体や血のグロ画像による恐怖。

友人から誘われて、彼の故郷にやってきた主人公たちは、
夏至祭に老人二人が崖から飛び降りて死ぬという儀式を
きっかけに村の異常性に気づく。
スウェーデンにも昔は姥捨て山のような風習があって、
老人を崖から突き落とした……という話は知っていたので、
「ああ、ちゃんと踏まえてるのね」
くらいの印象で、この時点では個人的にそれほど怖くはなかった。
(グロ画像は勘弁してほしかったが)

恐怖マックスだったのは、
「お肉のパイ」というセリフが出てきたとき!
恋のおまじないである陰毛の混入についてしか
言及されていなかったけど、あの流れだもの、
どうしてもそっちの方向を想像してしまう。
フジリュー版『封神演義』の伯邑考みたいな展開でしょ、
これ……。

人がじゃんじゃん殺されているのに、
殺している人たちに一切の悪意がないというのが、
不思議なムードを醸し出している。
見た後にもイヤーな感じ、胃がむかむかする感じは残っているのに、
不思議と明るい気分でもある。
この作り方も本当に底意地が悪いなと思うんだけど、
この気分の原因、最後にチャールズを殺したからだよ。
一年前からずっと別れたいと思っているのに
悪者になりたくなくてヒロインを突き離せず、
友人の論文のテーマを平気で盗み、
そうせざるを得ない状況に追い込まれたとはいえ、村の娘とセックスしちゃう。
そういう不誠実な男にヒロインが見切りをつけて、
殺す相手として自ら選び、不毛な恋愛から解放された。
そこから来る清々しさ。

自分では気づかなかったけど、いっしょに見た友だち曰く、
序盤のあれもこれも伏線だったそうなので、
もう一回見たらさらに不気味さが味わえそう。
わたしはもういいです。
でも人には見てほしい!

追記:みんなが写真を撮っていたポスター。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする