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八丁味噌のGI(地理的表示)の騒動、日本酒GIも参考にすべきではないでしょうか。

2021-02-08 11:17:12 | 附属酒類経済研究所
                          

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週末の朝、テレビを点けたら小豆島の醤油蔵が出ていました。
曰く「昔ながらの製法で造っているし、100年以上前から使っている木桶などに菌が住んでいるので、乳酸菌を入れたりもしていない。ウチだけの醤油だよ」と。

まさにテロワールですね。先週触れた日本酒の地理的表示(日本酒GI)のことを思い出しました。
そこで醬油や味噌などの地理的表示の状況を調べたら、現在、「八丁味噌」の地理的表示について、議論(というか騒動)が起こっていることがわかりました。

日本酒GIの抱える問題とは全く別の問題ではありますが、示唆も多くあります。
騒動自体はwikipediaにも出ていますが、ここでも簡単に整理してみましょう。

「八丁味噌」は愛知県岡崎市の八帖町の発祥で、現在でもこの町の「まるや八丁味噌」「カクキュー」の2社で生産されている他、愛知県内でも同様の味噌を生産されているようです。確か宮崎あおいさんのNHK朝ドラの舞台にもなりましたね。

そんな八丁味噌、地理的表示の制度が施行された際に、この2社が登録申請を行ったのですが、同時に愛知県の味噌溜醤油工業協同組合でも同様の申請が行われたそう。

両者の相違は、地理的な範囲と、製法(愛知県の組合の製法は豆味噌ならOK)で、農水省では愛知県の組合の登録の相乗りするよう岡崎の2社に働きかけたのですが、「製法は譲れない」ということで話はつかなかったそうです。

その中で農林水産省は結局愛知県の組合からのGI申請を認め、その結果、発祥の地で伝統的な製法で作られた本家本元の八丁味噌が、国際的なGI制度の下では「八丁味噌」と名乗れず、逆に愛知県の味噌屋さんが豆味噌さえ作ればそれがGI「八丁味噌」とアピールできるというおかしな状況になっているそうです。


(県の組合のホームページにも、豆味噌にも地域性など色々ある感じのロゴが掲載されている)

これに対し、各方面から「変じゃない?」という声が上がるも、政府では閣議決定までして農水省の決定を支持しているということです(政治家絡み?かなぁ)。

ただ、上記の状況は誰が考えてもおかしいですよね。農水省でも昨年から「八丁味噌」の地理的表示登録に関する第三者委員会という委員会で議論を始めたそうです。

ホームページに12月までの議事概要が出ていましたが、これを読むと、地理的な範囲は(岡崎市以外で作られている現状も踏まえ)県全体でも問題はないものの、「製法(の制限が緩い)」ことについては何らかの対応が必要だという方向感のようです。

ワインを例にとると、広くて緩いAOC、そのAOCの中でより狭い(&製法上も厳しい)AOCを設定する、ということですね。

農水省の最初の判断の背景は、

「海外での権利保護(中国が『八丁味噌』を作りかねない)」

「岡崎以外でも『八丁味噌』を作っているという業界の現状への配慮」

などから来ていると思われますが、「伝統の保護」などの視点も必要だったということでしょう。


翻って日本酒GIの場合、これらの視点のせめぎ合いというより、そもそも別の視点が主な原動力になっている気がします。

その意味では、味噌のように揉めてはいないけれど、周回遅れの感があります。

残念だなぁ。国税庁さん、言ってくれればお手伝いするのに。




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