八王子市散田町在住のスポーツ好き親父の戯言!

八王子市の学童野球チーム散田ドラゴンズ元管理人(2007年3月~2016年2月)のブログです。

『弱くても勝てます 開成高校野球部のセオリー』 高橋秀実 新潮文庫

2014年03月12日 20時45分51秒 | 指導・育成のうんちく

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平成17年の東東京予選でベスト16に進んだ開成高校野球部に興味を抱いた著者が、取材に訪れて目にしたのは、グランドを使える練習は週1回で驚くほど下手な野球部の姿だった。

 

 

P14-15からの引用。

「(中略)練習を眺めていてふと気がついた。

 下手なのである。

 それも異常に。

 ゴロが来ると、そのまま股の間を抜けていく。その後ろで球拾いをしている選手の股まで抜けていき、球は壁でようやく止まる。フライが上がると選手は球の軌道をじっと見つめて構え、球が十分に近づいてから、驚いたように慌ててジャンプして後逸したりする。目測を誤っているというより、球を避けているかのよう。全体的に及び腰。走る姿も逃げ腰で、中には足がもつれそうな生徒もいる。そもそも彼らはキャッチボールでもエラーをするので、遠くで眺めている私も危なくて気を抜けないのである。」

 

 

まるでどこかのチームのようです^^;。

 

 

そんなチームが、平成19年には4回戦まで進み、強豪修徳と0対1の接戦を演じたり、著者の取材後の練習試合でも下級生相手とはいえ、関東一高と1点差の戦いを出来たのは何故か?

 

 

実は、以前の開成は当然ながら極めて弱いにもかかわらず、「所謂」セオリー通りにバントで送って1点を取りにいく野球をして、1回戦突破もほとんどなかったそうです。 そこへ、群馬県立太田高校から東京大学野球部を経て開成高校の教師になった青木監督が着任します。

 

 

青木監督は、甲子園常連校が「異常」なのであって、「普通の」(本当は普通以下ですが(^^;)高校が同じことをしていたって絶対に勝てないと言います。 そこで、自分達に必要のないことは徹底的に切り捨てます。限られた時間でとても出来ないので、ダブルプレーの練習はしない、試合で何球も遭遇しない左右の難しい球を捕る練習もしない、送球の安定している順に投手・内野・外野と決めていき、投手にはとにかくストライクをとるように指導する。 まるで少年野球のようですが、こうしてある程度の失点は覚悟しつつ、試合の形を作り、それを上回る大量得点を奪って、「ドサグサ紛れ」に強豪校を撃破することを目標とします。

 

 

こう書くといかにもバッティングは逸材揃いのように見えますが、全国屈指の進学校でそんなことがあるはずなく、一人二人を除くと素人に毛がはえたようなものです。そこで監督は、ここでも不要なものは徹底的に削ぎ落とすます。バントも、ヒットエンドランもしないので、サインもない。小手先のバッティング理論も教え。とにかくいつかは当たるという前提で、とにかくフルスイングを身に付けさせる。

 

 

そして、その結果、どう見ても下手なチームにガツーンとした当りを打たれようものなら、強豪チームといえどもうろたえる。そこに勝機も生まれるというのです。だから監督は、1対0や、2対1の試合など求めません。理想は15対0だが、負けたとしても12対15という試合をしろと言います。 これをもって弱者の兵法となるわけですが、本書のインタビュー解説をしている桑田真澄さんが言うように、思い切りボールを叩き、たくさん点を取るのが野球の原点であり、アメリカの少年野球ではとにかく強く振ることを指導するように、実は極めて合理的な指導だと言えます。

 

 

そして、 なぜそういう指導に至ったかを伺わせるエピソードが終盤に出てきます。青木監督自身は、非力で外野に打球が飛ばず、「チームに貢献するために」バントの練習に明け暮れるという全く逆の野球生活を送りました。しかし、東京大学野球部では全く通じず、選手の道を諦めマネージャーになりました。そして、「野球はチームに貢献するためにやるものじゃなく、自分が自分がという気持ちでやるものだ」という結論にいたります。のんびりして、ともすれば素直すぎる部員たちにカッカしながら、自分のような後悔をしてほしくないという愛を感じます。

 

 

私自身も学生時代非力で、その当時はバットを短く持って球に当てにいけと言われたものです。しかし、それでも良い当たりはライトにしか飛ばず、ヒットの快感を味わうこともありません でした。当ろうが当たるまいが、フルスイングしておくべきだったと今になって思います。

 

 

散ドラ諸君も時間的には限られますが、後になって後悔しないように思いきり野球をやって、ぜひとも強豪チームをぎゃふんと言わせるような戦いをしたいですね!

 

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