先日の世界フィギュアスケート世界選手権で高橋大輔選手が、銀メダルの快挙を達成しました。日本開催で大変なプレッシャーがかかる中、SPは不本意な出来で3位、フリーも試合前はとても演技できないほど緊張したと言いますが、何とかそれを乗り越え、フリー1位で銀メダルを獲得しました。
管理人は、小学校の持久走大会や中学校の県大会がせいぜいなので、日本中の注目を浴びるような想像を絶するようなプレッシャーがどのようなものかも、どうやってそれを克服するのかも到底わかりません。しかし、多くの選手がこのプレッシャーに飲み込まれていったのは観てきました。スピードスケートの黒岩彰、スキージャンプの原田雅彦、柔道の田村亮子、ハンマー投げの室伏広治、野球の五輪代表など、数え上げたらキリがありません。彼らは、その後このプレッシャーを克服し、それぞれ素晴らしい成績をあげましたが、何故このプレッシャーに飲み込まれ、どうやってそれを克服したのでしょうか。
プレッシャーを克服するもっとも一般的な方法は、メンタルトレーニングです。自分自身の良いプレーやフォームを繰り返しイメージすることにより、どんな状況でもベストのプレーが出来るようにコントロールすることです。お芝居でリハーサルをしたり、挨拶する前に練習することを、もっと科学的にやっていると思えばいいでしょう。
確かにこれはこれで有効ですが、もっと根本的な問題は、一流のプレーヤーが何故それほどまでに大きなプレッシャーを受けて、それにどのように向き合うのかということだと思います。先にあげた選手は、世界レベルの大会で安定して好成績を残しながら、もっとも注目される五輪で力を発揮出来ませんでした。普段はそれぞれの競技にそれほど注目していないのに、五輪の時だけは、日本中が「金メダルは当然」といった空気に染まってしまうのです。一流選手とはいえ、普段は私たちと同じようにただ一人の人間として生活していた彼らが日本中の期待を一身に背負った重圧はどれほどでしょうか。プレッシャーの原因は、この「期待の大きさ」にあるのだと思います(たぶん)。
WBCの韓国戦で決勝点につながるエラーをした今江選手が「もう日本に戻れないと思った…」というのは本心でしょう。ファンの期待やヤジになれているはずのプロ野球選手でも、「日本の期待」を背負ってしまうとそうなるのです。私たちは普通、家族や友人の期待くらいしか受けませんし、それは「励み」になるものです。しかし、それですら、大きくなりすぎると、プレッシャーや負担になります。それが日本中になるのです。いつしか「(金)メダルを取ること」が気持ちの中心に座り、目的になってしまいます。すると、次に「(金)メダルを取れなかったらどうしよう、どうなるのか」となるのです(たぶん)。
しかし、彼らの最初の目的は「メダルをとること」ではなくて、自分が好きで始めた競技で、昨日よりも今日、今日よりも明日、少しでもベストのプレーが出来るように練習し、その結果が勝利だっただけなはずです。しかし、日本中の期待を一身に集めるという異常な状況を始めて経験すれば、それを簡単に克服することなど出来ません。かくして、彼らは一度は失敗したあと、「自分のために、自分のベストのプレーをする」という彼ら本来の目的を取り戻せたからこそ、一度は負けたプレッシャーを克服出来たのだと思います。
そのためにヒントが、以前にも書いた松井秀喜選手の口癖できる「自分がコントール出来ることだけに集中する」という言葉にあると思います。自分がコントロール出来ないことに気を取られるということは、どんどん自分を見失うということです。ファンや日本中が騒ぐのをイヤだと言っても、どうなるものでもありません。だったら、それはそれで好きにさせておいて、自分は自分の出来ることに集中しようということです。こんな悟りのような境地は大人でも難しいものですが、この言葉を知っているだけでも、日常生活その他でとっても役に立つと思いますよ!世の中自分のコントロール出来ないことだらけですから。
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