近世から近代にかけて「藪入り」という習慣があった。商家などで住み込みで働く人たちが、年に二回、一月十六日とお盆の十六日に「暇」を貰うというものである。
終戦後、日曜日が定休日と定められるに至り、次第にこの習慣は廃れていった。
古く江戸中期の俳人・太祇の句に やぶ入の寝るやひとりの親の側 とあるように、年端もいかぬ奉公人たちは、年に二度のこの日には、遠い道のりを我が家を目指して馳せ帰り、親兄弟たちとの楽しいわずかの時間を過ごした。
裏戸よりつとかけ込みて藪入す 山上荷亭
中には身寄りが無かったり、家が遠く帰郷ができない人もあり寂しい思いをした人も多かったろう。
身寄りなき藪入町を歩きけり 雪鳥
私が現役時代身を置いた設計業界も月100時間ほどの残業はざらで、そんな時期は日曜出勤も当たり前であった。
今考えるとよくやったなと思うが、「24時間働けますか」などというコマーシャルが流れるほどだったから、今日週休三日などという大企業が表われると、大いに驚かされる。
一方では近所のスーパーのように「年中無休・24時間営業」などという、消費者にとってはありがたいが、「休日は取られていますか」と少々心配になる。
「藪入り」案外どこかで生きながらえているのかもしれない。
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