最近ニュース以外はあまりTVに興味がない私だが、唯一見逃さないようにしている番組が「所さんの目がテン」と「ブラタモリ」である。
もう一月ほど前「目がテン」で「科学の里」に建築予定の隈研吾氏設計の建物が紹介されていた。
かやぶき屋根の軒先の緩やかなカーブがすごくきれいで、この建物が出来上がるとまたいろんな化学反応が起こる事だろうと感じたことだ。
細川護熙様が熊本県知事だったころ、「くまもとアートポリス」が始まり熊本はしばらく大いに盛り上がった。
熊本に有名建築家の作品が沢山誕生して、建築を志す学生や業界関係者の来熊でもにぎわった。
海外メディアも報じて随分沸騰したが、最近は建築家を指名するという方式から離れ、プロポザール方式へと方向転還されたようだし、「推進賞」や「推進選賞」等がもうけられて、毎年多くの作品が受賞しているようだ。
中には使用する立場の人たちから大いなる不評を買った作品も沢山ある。
西日本新聞社の熊本総局長を務められた山本巌氏のブックレット「熊本反乱の系譜」に、「アートポリスの矛盾」という一文がある。
のっけから、アートポリス第一作品である「北警察署庁舎」の職員のぼやきから始まるが、他にも、二つのブロックが渡り廊下で繋がれた某公共住宅は、雨の日や寒い日などの部屋の行き来など、大いに批判を受けたこともやり玉に挙げられた。
建築家が芸術性の高い建築を目指そうとすると、往々にしてこのような結果を招く。
数十年、この建物の寿命が尽きる迄付き合わなければならなくなる。
大先生方はよく、機能よりも芸術性を優先し、「生活や習慣を建築に合わせろ」という発言をよくされる。
一方で、頭書の隈研吾氏の建物の様に、建築の力が良い影響を与えるに違いないと思われる作品がある。
熊本ではその隈氏設計の、国宝青井神社の「国宝記念館」が過日完成した。
また、熊本県立図書館では、建設費を自ら負担された、安藤忠雄氏の「こども図書館」の建設工事が進んでいる。
国宝青井神社の「国宝記念館」 熊本日々新聞から引用 こども図書館 熊本県HPより引用
いずれも隈氏・安藤氏らしいデザインが特に奇をてらう訳ではなく、それでも建築の魅力を振りまいている。
アートポリスの夫々の作品は、当時の喧騒からはなれ、今では当たり前のように街並みに溶け込んで風景の一つになっている。
魅力ある建築がかもし出す心豊かにさせる世界の醸成が、アートポリスの発案者・細川護熙元知事の想いであったと思うし、点が線となりそれぞれが影響し合う世界が出来つつあり、まだアートポリスは進化型だともいえる。