12月18日から熊本博物館で始まった令和三年冬季企画展「能楽伝承~熊本の能文化~」の図録を、肥後金春流中村家のご当主・中村勝様からお贈りいただいた。深く御礼を申し上げる。
この度中村家に長く所蔵されていた、貴重な能楽資料を熊本県に寄贈され昨年度「熊本県指定重要文化財」に指定された。
これらの能楽資料に加え、永青文庫・松井家・本妙寺そのた多くの機関また個人からの貴重な資料が共に展示され、またとない展覧会となった。
氏の御子息・中村一路氏は金春流のシテ方として将来を嘱望されたが現在体調を崩されている。そのご子息・大雅さんもまた精進を重ねられて父君の跡を襲われるものと期待されている。
ご先祖以来の能の中村家であるが、ご一家をあげて能一筋に精進されている。皆様のご助力を賜りたい。
氏は現・熊本史談会の創設者でもあられる。16年の歴史を紡いできたが、初代の事務局長(当時は会長職は存在しなかった)としてご苦労を成され、今日の史談会の道筋を作っていただいた。
私はご自宅にお邪魔して、この「熊本県指定重要文化財」に指定された資料の一部を拝見させていただいたことがある。
伊達政宗の「鶺鴒の花押」が押された、初代中村政長に宛てた「恐惶謹言」と記された敬意をもっての書状や、錚々たる大名衆の入門の為の血判起請文などまさに名実ともに「重要文化財」としての価値ある資料ばかりである。
今回一堂に会するこれらの史料は、又機会を改めて早々に展観できるものではない。
多くの皆様に会場へ足をお運びいただきたい。
これは熊本の宝と言えるが、能楽に関する日本の宝と言っても過言ではない。日本中の能楽愛好者の皆様にもご来場いただきたいものである。
付け足し:
熊本史談会では令和四年の一月例会に、肥後金春流中村家のご当主・中村勝様(熊本史談会・創設者)をお迎えしてお話を伺うことにしている。
日時:令和4年1月15日(土曜日)午前10時~11時30分
場所:熊本市民会館第9号室
演題:加藤清正と能
私たち熊本人でも、加藤清正が能達者であったと知る人は多くは有るまいと思う。その師たるべき人物が清正に仕えた中村政長である。加藤家改易後、その子・靭負正辰が豊前の細川忠利に召し出されることになる。
それ以来、武家であり能楽師でもある中村家が誕生した。一方では6代目・庄右衛門(恕齋)は時習館訓導や郡政の能吏として活躍し近世肥後の26年間にわたる貴重な記録資料「恕齋日録」を残し、その刊本一・二巻が歴史家の研究資料として多大なる恩恵をもたらした。
又、吉村豊雄元熊本大学教授の「幕末武家の時代相」(上下巻)はこの恕齋を主人公とした、大変読みやすい著書である。併せてお読みいただきたい。