作家・葉室麟が直木賞を受賞したのは2011年下期のことだから、もう13年も前の事になる。
映画にもなった話題作だが、私は残念ながら映画の方は見ていない。
しかし映画の出演者を確認しながら改めて作品を読み返してみると、如何にもしっとりとした情感が感じられて、2011年下期の直木賞候補の中でダントツの評価を得て受賞が決まったことに納得させられる。
「刀伊入寇・藤原隆家の闘い」は、約1000年前の時代も背景も違う戦記物だが、初出の時期を見ると「蜩ノ記」と同時並行で発表されていることに気づく。
葉室は「長徳元年(九九五)三月~」と書き始める。まだ阿古という名の少年(隆家)の登場だが、葉室の創造の世界で隆家が成長していく。
NHK大河ドラマ「光る君へ」が、頭に残っているからその対比も面白く一気に読み進んだ。
中公新書・関幸彦の「刀伊の入寇-平安時代、最大の対外危機」もAmazonから同時に送られてきたが、こちらは「後」となってしまった。
私はたまたま歴史学よりも小説を選択してしまったが、これは葉室の創造の世界を満喫したいと思ったが故である。
この二つの作品が同一人によってもたらされた訳だが、改めて小説家の力量というものを感じさせられる。
私は葉室氏の作品はこれ以外には読んだことがないが、改めて他の作品に触れてみたいと感じたことである。