すぐ近所を流れる健軍川は水無川である。日頃は川底は草ぼうぼうで流れはないが、いったん雨が降ると周辺の水路の水がここに集まり、ごうごうたる濁流になる。
半日もすれば溜水が残る程度で元の水無川に戻る。
今日昼過ぎ、郵便を出すために近所の郵便局へ出かけた帰り道、男の子が川を覗いているのに出会った。
グレーがかったゴイサギが独特の猫背スタイルで、せき止められた水たまりにたたずんでいる。
男の子の隣に立つと彼は私を見上げて、「ここには魚はおらんとに(居ないのに)、ご苦労なこったい(事だ)」とつぶやくと走って去った。ご尤もと思わず笑いが込み上げてきた。日頃は水無川だから水はあっても魚はいない訳で「ご苦労なこと」と相成る。
この川では時折見かけるから同じ鳥ではないかと推測されるが、あまり学習していないなーという感じ・・・
さてゴイサギは「五位鷺」だが、「五位」の位を与えられたという後醍醐天皇の逸話は有名な話である。
私の友人が語るばかばかしい話がある。「なぜ五位なのか」という話。
人間世界では四位以上と五位以下では雲泥の差がある。五位の位の人はなんとか四位下でもよいから昇官したいと運動するのだそうな。
この分かれ目は雨の日笠を被ることができるか出来ないのかというところにある。
御供の際雨が降り出しても濡れっぱなしになるのは、人目もあり屈辱的でもあるという。
ゴイサギは「雨の日は笠はいらんけん(いらないから)五位にさしたったい(したのだ)。四位になったらかえって迷惑」と誠に下らない解説をする。
男の子のつぶやきは誠にご尤もだが、いい大人の友人の話は聞くに堪えない。