六
○春御免被仰渡之事
一御土免帳、手永限御惣庄屋仕出、上地御内檢當加印を
取、御郡代衆・御郡方御奉行衆中へ當上にて相違
一御土免差紙、御郡代衆仕出にて御惣庄屋當り也
但、半紙巻目録村々御土免高ニ幾ツ何分と書記、會所
/\より仕出、御内檢苗字口印日之下、御郡代印形有
之、御免被仰渡相濟候上、御内檢より御惣庄屋へ渡す
一御郡中當御土免一紙目録、年番會所にて御郡中分継立清
長紙清書いたし、御惣庄屋連名仕出判印にて仕出、上地
御内檢・御郡代・御郡方御奉行衆中と當上にたいし、上
地御内檢加印を取御郡代へ達ス、右は春御免被仰渡候
節、會所/\より相達候手數にて候、御免被仰渡之儀は
御郡代年番會所へ御出在、上地御内檢・御惣庄屋出席・
御郡中村々庄屋・村役人共へ御郡代より直に被申渡、其
詞ニ曰
當御免御蔵納・御給知・新地方共、去御土免通ニ被仰
付之、何れも奉得其意、小百姓共へも此旨申渡候様
一村々よりハ當御土免御受状庄屋/\持参、御惣庄屋へ相
達候事
七
○御土免割しらへ方之事
一御免被仰渡相濟候得は、御内檢ハ直に手永/\之小屋へ
出在有之、糺方有之候、よつて其以前より村々田畑抜差
之儀、庄屋元にて質地・譲地・高出作等相糺し、見圖帳
二付札を用、名寄帳付送いたし、御蔵納・御給知・新地
・諸開共持合の地方夫々相しらへ、一組限清算いたし、
組一紙突合少も相違無之様にすゝめ立、村一紙に突合毛
頭於無相違ハ御土免割帳仕立、諸帳取揃會所へ差出候得
ハ、御惣庄屋手前にて御免帳の人數と竈數引合、質地、
譲地・高出作・抜差之稜々、證文扣に引合候分ハ證文扣
にて引合、高出作等ハ向合之名前抜差帳にて引合、見圖
帳付札之銘書、名寄帳之付違(送ヵ)等向合/\之引合一々相
糺、坪分之高分物成分等清算を入、或ハ諸開添畝の分ヶ
高等精々相糺、於無相違ハ御内檢へ相渡す、御内檢手前
ニても右同断相糺シ、抜差の稜々抜差帳より引合、於無
相違ハ付札付送等印形を用、名寄帳清算を入、御土免割
帳之畝高物成讀合、抜差之面々清算いたし、村一紙之置
揚等夫々の手數相濟候上、庄屋より小百姓當之手札調達
致候得は、御惣庄屋ハ御免帳と手札に割印いたし、御内
檢ハ手札の裏に苗字を書印形を用、御内檢出在して小百
姓人別へ相渡す、是迄之手數春御免割と申候
八
○青葉改の事
[付箋]「青葉改ハ畑損引之為也、畑損引は本蒔之粟畝迄ニ
て大小豆畝ハ除ル也、其為之改也」
一大小豆作付候坪々、村役人帳面野面に罷出、見圖帳に張
札いたし大小豆の畝を付記申候、尤見割等之畝數は遠見
にてハ間違有之、自然畑御損引等致時間違、小前之難
澁とも相成候ニ付、坪毎に見しらへ青葉帳仕出せ、一紙
帳三冊上地御内檢へ遣置候上、五ヶ村組之内一ヶ村見分
の鬮(くじ)を入、右鬮當り之村へ入、下ヶ名鬮を入、鬮當之下
名見分ニて相違無之候得ハ相濟、若相違之儀有之候得は
外之下名ニて引合、其下名も相違有之候得は、五ヶ村組
不残引合相成筈
九
○田畑作色付の事
一田方ハ早・中・晩田或は早大唐・中晩大唐、畑方ハ大小
豆・粟諸作・居屋敷と何れも見圖帳・名寄帳に腰札を張
り、坪々色を付記、名寄帳田畝合の所幷は田畝合の所に付
札いたし、一品限坪々算用仕上、右付札に書ならへ、組
一紙を堅惣一紙に突合清算相濟候上、村々一紙帳仕立、
手永一紙相添、御内檢加印・御郡代中印之上、毎年六月
廿五日限御郡方へ相達候事
一〇
○荒地改方之事
一洪水之節田畑當毛荒有之候分ハ、洪水損所改書附ニ加、 毛荒=けあれ
遠方いたし置候ヘハ、上地御内檢中見分にて當毛荒に被
立下候間、損所達之扣上地御内檢へ壹通可遣事
但、本行之通、享和元年迄の御仕法猶御改、左之通
一田畑當毛荒、是迄ハ上地御内檢一手の改方被仰付置候
處、以來ハ皆無同前、御郡御吟味役・御郡横目両役の内
立會被仰付候段、享和二年二月改
一田畑荒地一紙目録之儀、御郡中継立にて上地御内檢仕
出、御郡方へ達ニ成り、尤年番會所にて帳面出來之事
一荒地之儀、五ヶ年目/\改方被仰付候段、安永二年四月
御達
一極荒之内御百姓手入仕作付候分は、御惣庄屋改起ニいた
し相達候得は、五ヶ年は無免にて六ヶ年より本免上納被
仰付候事
一一
○御惣庄屋毛上見分の事
一田畑作の毛上を見ることハ、一朝一夕の見様にてハ實ニ叶
かたし、第一御惣庄屋ハ百姓の生産を能存知候て、各生
産に精を入取継候様に導き申心配無之候ヘハ、手永中の
治方實に叶不申候、就中御免方仕損等有之、不慮の難澁
引受候様之事有之、一秋の仕損より終身之難澁、且御損
米の多も大切之儀に有之候、依之初秋迄之内、手永中
村々田畑の毛上得斗見究置候儀肝要ニ候、先春の初勤農
の道を施し、人別家内/\に至迄農業出精いたし、定免
に作出候様心懸、手入肥水引等精を入候様教示いたし、
其教に化し出精いたし、又ハ不合點にて出精不致境ハ田
面にて見分、折々精粗等相糺、精敷者ハ彌勤め惰なる者
ハ督責いたし、察討褒貶の糺方仕候内ニハ、相境の田主
の名をも聞覺目印も出來申候、惣て村々の強弱、地味善
悪、無難所・災害所之境等見糺、春耕の時より根付草浚
かりほしまての間、度々見分いたし、實々の所見極加申
候、常並の年ハ左程心を用不申候とも見損無之候得と
も、旱雨風蟲の災有之候年ハ至て見にくに、先旱田ハ旱
田の見様あり、水害田ハ水害の見様あり、風災・蟲災共
各見様有之候、不覚心を用ひ候ヘハ其術を得る事難から
さる事ニ付不能委筆候、右之通心かけ手永中見極、何村
/\は土反に引合候得ハ通方之毛上又ハ分り損引にも成
不申、又ハ何村々々村高之半を過損高ニ成可申、又ハ惣
損引ニも至可申哉と胸算用いたし置、至秋村々より損引
願等いたし候節、即席に及議論候様に有之候得は、容易
なる損高ハ出し不申候、若又右之通心を不用、春以來取
構不申押移、至秋不當之損高出し候時、内舛入候上減高
申付候とも、下方より侮を入容易に除かたし、其時に
至、見落之坪抔にて内舛いたし、高割なと切起し火急に
追除候様に有之候てハ當り兼申候、是等之儀未御内檢
の手にわたし不申内、御惣庄屋の計ニおいて困窮いたす
なと申、氣受悪相成候、是境能々相考農務に心を盡し、
毛上を見極置候儀肝要ニ候事